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国際海洋情報(2022年10月17日号)

1.仏Totalがヤマルから大量のLNGを継続的に輸入

世間的な関心は、Nord Stream 1や2などのパイプライン経由によるロシアからのLNGの欧州への輸出の減少に関心が集まっているが、ロシアから欧州へのLNGの輸出量は、1月から8月までに、対前年比15%増のペースで継続的に増加している。その大部分がロシア北極圏のヤマルからTotalがArc7船級のLNG輸送船で輸送を続けている。米国コロンビア大学の世界エネルギー政策センターによれば、9月末の時点でロシアから輸出されるLNGの40%は欧州に向けて出荷されている。英国とリトアニアだけがロシアからのLNGの輸入を完全停止している一方で、仏の輸入量は急増している。今年前半には、ロシアからのLNG最大輸入国である日本を抜いて、フランスが世界最大の輸入国となり、スペイン・オランダ・ベルギーもロシアからの輸入量を増加させている。ノルウェーの北極圏物流センターによれば、3月から5月の間、欧州全体で月間30隻のLNG輸送船をロシアから受け入れており、このペースは夏の間も衰えていない。

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High North News (10/17)


2.BIMCO:Report on the European List of Ship Recycling Facilities

BIMCOが標記報告書を10月14日発表したところその概要は以下のとおり。①EU域内の船舶解撤施設は、一般的に、ニッチなリサイクル市場に対する個別地域的な需要に対応するためか、洋上掘削リグの解撤に対応しており、大型外航船の解撤に必要な大規模施設を保有していない。②この結果、EUが適切な船舶解撤施設として承認している施設のうち、トルコ国内の解撤施設のみが大型外航船解撤の仕事に対応している。③大型船解撤事業の主要国であるインド・バングラデシュ・パキスタンの3か国の解撤所は依然として、EUの承認解撤所リストに掲載されていないが、これらの国々の多くの解撤施設において設備の改善がはかられており、船舶リサイクルに関する香港条約の基準を満たしている解撤所については、EUの承認リストに追加されるべき。④船舶解撤事業は、多くのくず鉄を製鉄業界に供給することが可能であることから、EUの循環経済に大きく貢献することが可能な戦略的に重要な業界と言える。

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BIMCO (10/17)


3.ロッテルダム港とGothenburg港がGreen Corridor結成に向け覚書締結

オランダのロッテルダム港とスウェーデンのGothenburg港は、海運脱炭素化に必要な新たな代替燃料を供給することができるGreen Corridorを両港の間で形成するため、10月13日、オランダの女王がスウェーデンを公式訪問した際に、Gothenburgで開催されていたchainPORTS サミットの場で、両国王立会いの下、覚書を締結した。両港は本年3月にMaersk Mc-Kinney Møller Center for Zero-Carbon Shippingによって立ち上げられたより大きなネットワークであるEuropean Green Corridor Networkにも両港を連結させる予定。ロッテルダム港は、最近シンガポール海事港湾庁ともGreen Corridorの形成について覚書を締結している。両港は、LNGの先のSZEFの供給体制の整備を進めており、Gothenburg港では、2015年から小規模ながらRoPaxフェリーに対してメタノール燃料を供給しており、ロッテルダム港においても2021年5月から世界で初めて、バージから船舶にメタノールを供給できる体制を整えている。

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ロッテルダム港 (10/17)


4.DNV:Energy Transition Outlook 2022

標記報告書の概要は以下のとおり。①露によるウクライナ侵攻の影響は、欧州においては、エネルギー安全保障強化の観点から、再生可能エネルギー導入の速度が加速化するものの、欧州以外では、エネルギー・食料価格の高騰に対処するため、再エネ推進の政策的優先順位は、短期的には落ちるかもしれないが、長期的には、再エネコストの低減・エネルギー電化・化石燃料価格高騰の要因は変わらず再エネ化が進む。②2050年には、世界の発電に占める再エネのシェアが83%になる結果、全体のエネルギーミックスで、化石燃料のシェアが50%を割る。③原材料価格の高騰があるものの、太陽光発電と風力発電の拡大を止めることはできず、2050年までに太陽光は20倍、風力は10倍に拡大する。④水素や水素派生のe-fuelsの使用は2030年台から徐々に拡大し、再生可能エネから製造されるグリーン水素が徐々に大勢を占めるが、CCUSを利用したブルー水素・アンモニアも重要な役割を果たす。⑤新たな化石燃料の開発は、先進国では2024年に、その他の国々でも2028年委は必要なくなる。⑥地球の温度上昇を1.5℃以内に抑制するというパリ協定の目的を達成するためには、OECD諸国においては2043年までに、中国においては2050年までに炭素中立を達成する必要がある。

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DNV (10/17)


国内ニュース

1.日本海事協会:日本郵船所有の「能代丸」におけるCBM方式を承認
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10月12日、日本海事協会