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国際海洋情報(2022年10月12日号)

1.EMSA:Potential of Ammonia as Fuel in Shipping

欧州海上安全庁(EMSA)が、アンモニアの代替燃料としての使用に極めて懐疑的な標記報告書を発表したところ、その概要は以下のとおり。①アンモニアを燃料とする船舶への関心の高まりと、グリーンアンモニアを製造するための事業計画が次々と発表されていることから、アンモニアが舶用燃料として使用される可能性はある。②一方で、アンモニアの有毒性・腐食性を考慮すると、アンモニアを舶用燃料として使用するには、安全上の懸念も十分ある。従って、こうした危険性や危険性を緩和する対策についてさらなる検討が必要。③脱炭素燃料への需要がさらに高まり、既存燃料との価格差を縮小するMBMsが導入されない限り、グリーンアンモニアには経済的な競争力はないし、グリーンアンモニア生産の前提となる再生可能電力については、他の用途との取り合いになって、十分な量が確保できる保証がない。④アンモニアが海運脱炭素化を進めるための代替燃料となるためには、以上のすべての課題を解決するための迅速な行動が必要である。

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EMSA (10/12)


2.ICAO:2050年炭素中立に合意

10月7日、国際民間航空機関(ICAO)は、第41回総会において、2050年までに炭素中立を達成するためのLong-Term global Aspirational Goal (LTAG)に合意した。CO₂削減のための具体的な手段としては、革新的な航空機に関する技術開発の促進・運航管理の合理化・持続可能な航空燃料(SAF)の生産と普及など多元的な方法が考えられる。総会では、SAFに関する人材開発・訓練に関する新たな技術協力(ACT-SAF)プログラムの創設が一致して支持され、また2023年に第3回ICAO「航空と代替燃料」に関する会議を開催することが合意された。また同総会では、国際民間航空のための炭素相殺・削減制度(CORSIA)の最初の定期的な見直しを実施し、2024年以降に適用される新たなCORSIAの基準値を2019年の85%の水準とすることで合意し、2030年以降に相殺することが求められる排出量の計算に用いられる分野ごと及び個別の成長率の改訂された割合についても合意した。

原文

ICAO (10/12)


3.欧州石油メジャーが積極的に英国の洋上風力事業に進出

イングランドとウェールズの海底を所管する英国のCrown Estateはケルト海に2035年までに合計で新たに4GWの洋上風力発電施設を建設するために、海域の使用権の入札を2023年中ごろに実施すると10日発表した。今回の入札は、水深が深い海域で浮体式洋上風力発電施設を建設するためのCrown Estateにとって初めての入札となる。BPは、洋上構造物の建設ノウハウを生かして、再生可能発電分野の事業を拡大するためこの入札に参加する準備を進めているし、Shellはスコットランド沖で大規模な浮体式洋上風力発電施設を建造する権利を、今年の初めに既に取得している。石油メジャーは、最近の莫大な利益を活用して、再生可能エネルギー事業を拡大しており、昨年実施された入札では、BPとTotalが独占的に落札した。

原文

gCaptain (Bloomberg) (10/12)


4.欧州エネルギー大臣会合:天然ガス上限価格制度に合意できず

ロシアからのエネルギー供給量の大幅削減によって、EU加盟国においては、天然ガス価格が平均して対前年比約90%上昇し、これからの冬季においては、エネルギーの配給制や計画停電が実施される恐れがあるが、10月11日夕方、ロシアから欧州に石油を送る主要石油パイプラインであるDruzhbaパイプラインについてポーランド国内で漏出事故が発生し、欧州へのエネルギー供給について、さらなる不安が高まった。一方、EU各国のエネルギー担当大臣は、同日、プラハで会合を開催し、天然ガスに上限価格制度を導入することについて議論したが、上限価格制度の導入によってさらに供給量が減少することを恐れた独や蘭が反対し、両国は共同で、LNGの新たな指標価格制度の導入、天然ガス節約の高い目標の設定、ノルウェーなどロシア以外の天然ガス供給国と価格引き下げ交渉を行うことなどを内容とした対案を提案している。

原文

Reuters (10/12)