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週刊国際海洋情報(2022年10月6日号)
- 1.英国:削減目標維持のまま自主的なCO₂削減目標(NDC)をUNFCCCに提出
- 2.Clean Energy Maritime Hubs Initiativeが発足
- 3.Nord Stream 1とNord Strem 2を何者かが破壊
- 4.シンガポール:Alliance for Future Maritime Talentを結成
- 5.ノルウェー:洋上石油ガス掘削施設の警備支援をNATO諸国に要請
- 6.英国:6000万ポンドで第3次Clean Maritime Demonstration Competitionを開始
- 7.デンマークとベルギーがCCSで回収したCO₂の輸送・貯蔵で連携
- 8.WSC/ICS:欧州委員会に競争法の一括適用除外の延長を申し入れ
- 9.マースク:Gメタノール対応の17000TEU6隻を発注。合計19隻体制に
- 10.独最大の発電事業者が2030年までに褐炭火力発電を停止
- その他のニュース
1.英国:削減目標維持のまま自主的なCO₂削減目標(NDC)をUNFCCCに提出
昨年のCOP26で、約200か国がGlasgow Climate Pactに合意し、地球の気温上昇を、産業革命以前と比較して、1.5℃以内に抑制するためには、緊急に行動する必要があることを確認し、パリ協定の目的に従い、2030年までのCO₂削減目標について再検討し、2022年末までに国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)に提出することに合意した。この合意に従い、英国政府は見直しを実施し、9月23日、UNFCCC事務局に自主的なCO₂削減目標(NDC)を再提出したが、1990年の実績比で2030年までにCO₂排出量を68%削減するという目標は維持することとした。一方で、国際的なbest practiceとパリ協定のrulebookに従い、明確性・透明性・理解性を促進するための情報(ICTU)を、英国が実際に2030年までにどのようにNDCの目標を達成するかなどいくつかの重要項目について追加した。
原文
英国政府 (9/28)
2.Clean Energy Maritime Hubs Initiativeが発足
9月21日から23日にかけて、米エネルギー大臣が主催し、29か国のエネルギー担当大臣と150人以上のCEO等が参加して開催されたクリーンエネルギー大臣会合において、国際海運会議所と国際港湾協会とCEOが中心となったClean Energy Maritime Taskforceは共同で、Clean Energy Maritime Hubs Initiativeを発足させた。
イニシアティブは、海運value chainに係る港湾・海運・金融・エネルギー分野の官民の代表を集めたプラットフォームを開催する予定で、カナダとUAEの両国政府が、政府レベルではこのイニシアティブを主導し、世界が速やかにグリーン燃料と技術に転換することを促進することとなった。国際再生エネルギー機関が最近発表した報告書によれば、世界的なエネルギー転換に海運が果たす役割は重要で、2050年までに国際的に取引されるゼロ炭素燃料の50%以上は船舶で輸送される見込み。
原文
ICS (9/28)
3.Nord Stream 1とNord Strem 2を何者かが破壊
9月27日、バルト海にあるデンマーク領ボーンホルム島沖で発見された天然ガスの噴出は、露と独を結ぶNord Stream 1とNord Stream 2から漏出していることがわかったが、地震学者はガス漏出が発見される前に、爆発に伴う衝撃波が確認されたとしており、「すべての情報が、ガスの漏出は意図された攻撃によるものであることを示唆しており、欧州のエネルギーインフラに対する意図的な妨害行為は、全く受け入れることはできず、断固たる一致した制裁が下されるだろう。」と、EUの外務・安全保障政策上級代表は28日表明した。現在、この2本のパイプライン経由で欧州に天然ガスは送られていないが、今回の損傷によって、この冬には物理的に欧州に天然ガスをこの2本で送ることができなくなった。独は米国や他の欧州諸国から、Nord Stream事業について、露への天然ガスへの依存度を高めるとして、強く非難されてきたが、今回のパイプラインの損傷の程度によっては、Nord Stream事業の将来的な見通しも疑問視されることとなる。
原文
AP (9/30)
4.シンガポール:Alliance for Future Maritime Talentを結成
シンガポール海事港湾庁・シンガポール海事基金・米国船級協会などは、海事労働者が海事産業の転換に対応していくのに必要な技能を習得させ、シンガポールが海事人材育成のための国際的な競争で優位に立つために、Alliance for Future Maritime Talent (AFMT)を結成した。シンガポールでは、本年4月にMaritime Industry Transformation Tripartite Committee (MITTC)を創設して、2025年までの海運の転換を踏まえたSea Transport Industry Transportation Map 2025を作成したが、今回結成されたAFTMは初めの成果物となる。AFMTは海事産業界と労働組合と当局からなるTripartite Advisory Panel (TAP)と連携して、船員または陸上要員として今後必要となる将来的な海事技能や船員が陸上要員に円滑に転換するのに必要な技能について検討し確定していく。
原文
MPA (9/30)
5.ノルウェー:洋上石油ガス掘削施設の警備支援をNATO諸国に要請
ノルウェーの首相は、Nord Streamの破壊行為を踏まえ、同国の洋上石油ガス施設の警備支援をNATO諸国に要請し、独・仏・英から支援の回答を得たと発表した。米国大統領は、9月30日、Nord Streamについて、犯人を名指しはせずに意図的な破壊行為であると言明し、同盟国と原因究明に努めるとともに、米国の潜水士を現場に派遣すると言明した。欧州委員会委員長も、今回の破壊工作は、欧州のエネルギーインフラに対する意図的な妨害行為であると非難した。
原文
Politico (10/2)
6.英国:6000万ポンドで第3次Clean Maritime Demonstration Competitionを開始
2020年の実績では、英国の内航船は、鉄道とバスが排出したGHGの合算量より多く、国内のGHG排出量の約5%にあたるGHGを排出したが、9月29日の世界海事記念日に英国の新運輸大臣は、6000万ポンド(約97億円)の予算で、GHGを排出しない船舶・代替燃料・港湾における代替燃料供給インフラなどの実証実験を対象に、2023年4月から2025年3月までを対象期間とする第3次Clean Maritime Demonstration Competition (CMDC)の募集を 開始するとニューヨークのAtlantic Future Forumで発表した。また、同時に2022年5月に募集が開始された第2次CMDCの結果も発表され、121の英国の企業が総額1200万ポンド(約19億円)の支援を受けることが発表された。このうち、3つの事業は、COP26で24か国が、代替燃料を供給できる港湾の回廊(green shipping corridor)を創設することに合意したClydebank宣言の実現のために実施される。
原文
英国政府 (10/2)
7.デンマークとベルギーがCCSで回収したCO₂の輸送・貯蔵で連携
デンマーク船主協会によれば、デンマークとベルギー両政府及びベルギーのフランドル地方は、ベルギーにおいて炭素回収貯留(CCS)技術で回収したCO₂をデンマークまで輸送し、デンマーク国内の採掘が終了した石油・ガス田に貯蔵することで合意した。また、1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書(通称:ロンドン議定書)の下で、国際的なCO₂の輸送がどのように取り扱われるべきかについても、3者で協議することとなった。デンマークでは2021年5月に、デンマーの複数の海運会社がCCSで回収されたCO₂の輸送のための専門会社であるDan-Unity CO₂を立ち上げ、世界で最初の大規模なCO₂輸送船建造の発注準備を進めている。デンマークの地質学研究所(GEUS)によれば、デンマーク国内の地下に貯蔵できるCO₂の量は220億トンで、デンマーク国内から年間に排出されるCO₂の量の400倍から700倍の貯蔵能力があるので、ベルギー以外との欧州諸国と同様の協定を締結して、EU市場で排出されるCO₂を受け入れる余裕がある。
原文
Offshore Energy (10/5)
8.WSC/ICS:欧州委員会に競争法の一括適用除外の延長を申し入れ
できるだけ多くの港湾に寄港し、多くの顧客に最も効率的なサービスを提供するため、国際コンテナ海運会社は船腹共有協定を活用しており、EUはコンソーシアムに対して、競争法の一括適用除外(CBER)を2024年4月まで認めているが、欧州委員会の競争当局は、現在CBERの再延長について検討を行っている。世界海運評議会(WSC)・国際海運会議所・アジア船主協会は、CBERの再延長を欧州委員会に対して申し入れるとともに、船腹共有協定が、交通機関からのCO₂排出削減、輸送コスト削減によってEUの貿易の競争力の強化と効率の向上に貢献しているか説明を行った。船腹共有協定は純粋に船舶の運用面に対象を絞っており、運賃等その他の面では、船社間の競争原理が維持されており、CBERが同協定に対する法的枠組みを保証することによって、航路数の拡大・顧客に対するサービスの向上・空きスペースの削減・CO₂排出量の削減に寄与することができている。
原文
WSC (10/5)
9.マースク:Gメタノール対応の17000TEU6隻を発注。合計19隻体制に
10月5日、マースクは、新たに、グリーンメタノールを燃料として使用できる17000TEUの大型コンテナ船6隻の建造を現代重工業に発注したと発表した。マースクは2040年までに炭素中立を達成すると公約しているが、短期目標としては、コンテナ1個当たり排出されるCO₂の量を2030年までに2020年実績比で50%削減することとしている。今回の発注と併せて、これまでに同社は合計で19隻のグリーンメタノールを燃料とできるコンテナ船を既に発注している。既存燃料船と比較した場合の追加コスト(CAPEX)は、8-12%の範囲で、昨年8隻の建造を発注した時と比べて、追加コストの割合は減っている。今回発注した6隻の船舶は2025年に引き渡され、デンマーク籍船として運航される見込み。現在発注済みの19隻のコンテナ船が、従来型コンテナ船に置き換わることによって、合計で230万トンのCO₂の排出を削減することができる。
原文
Maersk (10/6)
10.独最大の発電事業者が2030年までに褐炭火力発電を停止
独最大の発電事業者であるRWEは石炭火力発電の廃止を8年先送りし、2030年までに褐炭を原料としたすべての石炭火力発電所の稼働を停止することで、政府と合意したと発表した。一方で、ロシアによる欧州エネルギー危機に対応し、天然ガス火力発電を減らすために、最も環境に悪い褐炭火力発電所の稼働を一時的に増やすこととなるが、同時に、エネルギー転換のための投資も積極化し、2030年には褐炭火力発電から撤退すると語った。この結果、本年末に解体される予定であったRWEの2か所の石炭火力発電所を2024年3月末まで稼働させることになった。また2030年以降のエネルギーの安定補給を担保するために、独政府は、合計で3.6GWの発電能力を持つRWEの褐炭火力発電所を2033年末まで、予備電源として維持するという決定を2026年までにすることができる。RWEは褐炭火力発電所の代替として、3GWの発電能力を持ち、水素も原料として使用できる天然ガス火力発電所を建設するとしている。
原文
Reuters (10/6)
その他のニュース
1.再生可能エネルギー
(ア)洋上風力発電
①北海
欧州6か国の港湾が洋上風力発電施設建設促進のために連携 原文(10/2)
②ベルギー
北海に欧州の洋上風力発電のハブとなる人工島を建設へ 原文(10/06)
2.気候変動緩和対策
(ア)金融・投資機関
①気候変動リスクの開示
UNEP:ScalingBlendedFinance 原文(10/3)
(イ)家庭におけるエネルギー節約・効率化
①住宅の断熱性の改善
英国:家庭のエネルギー効率向上のために15億ポンドを支援 原文(9/30)
3.安全保障
(ア)バルト海
①NordStreamに対する攻撃
デンマークがガス漏れ周辺海域に航行禁止区域を設定 原文(9/29)
4.海洋環境
(ア)深海底開発
①国際海底機構
国際海底機構が深海底鉱物の試験的採取を許可 原文(10/5)
5.海運政策
(ア)概況報告
①ICS
ICS:TradePolicyReview2022 原文(9/28)