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国際海洋情報(2022年10月5日号)
1.国際海底機構が深海底鉱物の試験的採取を許可
国連海底機構が環境影響評価書と環境監視管理計画を検討した結果、カナダのThe Metals Companyの子会社であるNauru Ocean Resources Incが太平洋のClarion Clipper 断裂帯から3600トンのマンガン団塊を9月末から試験採集する許可を得たと、The Metals Companyが9月7日発表した。水深200m以上の海底から鉱物を採取するのを深海底鉱物採掘と呼ぶが、深海底は銅・ニッケル・アルミニウム・マンガン・亜鉛・リチウム・コバルトなどの、携帯電話・洋上風力タービン・電気自動車のバッテリー・太陽光パネルなどの生産に不可欠な希少金属の宝庫であると言われているが、科学者や環境保護活動家は、深海底の鉱物採掘によって、いまだ十分に解明されていない深海底の豊富な生物多様性を回復不能に損傷してしまう恐れがあると警告している。昨年開催された国際自然保護連合の総会でも、圧倒的な多数の政府・NPO・市民団体は、深海底鉱物採掘による、深海底の生態系への影響が研究・解明されるまで、深海底鉱物資源開発を凍結することに賛成している。
原文
Eco Watch (10/5)
2.デンマークとベルギーがCCSで回収したCO₂の輸送・貯蔵で連携
デンマーク船主協会によれば、デンマークとベルギー両政府及びベルギーのフランドル地方は、ベルギーにおいて炭素回収貯留(CCS)技術で回収したCO₂をデンマークまで輸送し、デンマーク国内の採掘が終了した石油・ガス田に貯蔵することで合意した。また、1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書(通称:ロンドン議定書)の下で、国際的なCO₂の輸送がどのように取り扱われるべきかについても、3者で協議することとなった。デンマークでは2021年5月に、デンマーの複数の海運会社がCCSで回収されたCO₂の輸送のための専門会社であるDan-Unity CO₂を立ち上げ、世界で最初の大規模なCO₂輸送船建造の発注準備を進めている。デンマークの地質学研究所(GEUS)によれば、デンマーク国内の地下に貯蔵できるCO₂の量は220億トンで、デンマーク国内から年間に排出されるCO₂の量の400倍から700倍の貯蔵能力があるので、ベルギー以外との欧州諸国と同様の協定を締結して、EU市場で排出されるCO₂を受け入れる余裕がある。
原文
Offshore Energy (10/5)
3.ギリシャ・サイプラス・マルタが対ロシア追加制裁に反対
EU首脳は今週(10月3日)にプラハで非公式会合を持つ予定だが、その前に第8次ロシア制裁案として、露産石油に対する価格上限規制(厳密にいうと、G7において合意された上限価格を超える露産石油の海上輸送の禁止)を提案しているが、ギリシャ・キプロス・マルタが、当該制裁案が採択されれば、これらの国の海運産業が不均衡に重い影響を受けるとして反対していたが、結局ギリシャとキプロスは、反対を取り下げ、マルタだけが反対している状況。各国の大使は4日午後にも協議を実施する予定で、マルタだけではなく、ギリシャも新たな条件を提出する見込み。
原文
Euractiv (10/5)
4.WSC/ICS:欧州委員会に競争法の一括適用除外の延長を申し入れ
できるだけ多くの港湾に寄港し、多くの顧客に最も効率的なサービスを提供するため、国際コンテナ海運会社は船腹共有協定を活用しており、EUはコンソーシアムに対して、競争法の一括適用除外(CBER)を2024年4月まで認めているが、欧州委員会の競争当局は、現在CBERの再延長について検討を行っている。世界海運評議会(WSC)・国際海運会議所・アジア船主協会は、CBERの再延長を欧州委員会に対して申し入れるとともに、船腹共有協定が、交通機関からのCO₂排出削減、輸送コスト削減によってEUの貿易の競争力の強化と効率の向上に貢献しているか説明を行った。船腹共有協定は純粋に船舶の運用面に対象を絞っており、運賃等その他の面では、船社間の競争原理が維持されており、CBERが同協定に対する法的枠組みを保証することによって、航路数の拡大・顧客に対するサービスの向上・空きスペースの削減・CO₂排出量の削減に寄与することができている。
原文
WSC (10/5)