国際海洋情報の内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、二次使用の際は国際海洋情報からの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

国際海洋情報(2022年9月23日号)

1.米LA/LB港における船舶からの排ガス増加とzero-emissionへの取組み

米国のロングビーチ(LB)港とロサンゼルス(LA)港は、両港合わせて、米国の輸入コンテナの40%を取り扱っているが、米国肺病協会の調査によれば、2021年の9か月間で、LA/LB港の貨物取扱量が20%増えたことに伴い、増加した船舶からの排気量は580万台の自家用車と10万台のディーゼルトラックから排出された排気量と同等であったことが判明している。今後は環境問題に配慮したzero-emission成長を図っていく必要があり、以下の対策に取り組んでいくとLB市長は語った。第一に、大気汚染の最大の原因になっている港湾物流を担う大型ディーゼルトラックについては、本年4月から、荷主は1回あたり、10ドルから20ドルの新たな課金を支払い、その収入でClean Truck基金を創設し、zero-emissionトラックの導入を支援する。このような車両の電化は、充電施設の整備と並行して行われる。第二に、港湾物流をより効率的かつクリーンに実施するため、来年から港湾ターミナルへの鉄道の引き込み線の整備を進める。

原文

gCaptain (Bloomberg) (9/23)


2.UMAS:Climate Action in Shipping/ Progress towards Shipping’s 2030 Breakthrough

UMASとUN Climate Change High Level Championsが共同で発表した標記報告書の概要は以下のとおり。①Scalable Zero Emission Fuels (SZEF)が外航海運の燃料として使用されるシェアを5%にするという目標の達成のためにはさらなる行動が必要。②SZEF開発の技術面では、世界で203件以上の海運脱炭素化試験/実証事業が、現在、実施・計画中だが、SZEF生産の決定・投資・供給インフラの整備が必要。②金融面では、28の船舶金融事業者からなるPoseidon PrincipleやClydebank Declarationなどのイニシアティブが進んでいるが、SZEF供給インフラのための更なる財源が必要なほか、SZEFと化石燃料との価格差を補う固定価格買取制度(CFD)などの財政措置が必要。③船舶から排出されるCO₂削減のための市場原理に基づく対策(MBMs)については、IMOにおける更なる議論の進捗が必要。

原文

UMAS (9/23)


3.T&E:EU ETSの適用範囲を5000GT以上ではなく400GT以上とすべきと提言

標記要請文書の概要は以下のとおり。①EU MRV/ETS/FuelEU Maritimeが適用される船舶を5000GT以上ではなく、400GT以上とすること。②欧州理事会は、総トン数が400GT以上5000GT以上の新造船をMRVとETSの適用対象とするか否かの決断を先送りしようとしているが、将来的な規制方針が明らかになるまでは、海運会社や金融機関は、投資の判断ができず、既に平均船齢が39年と老朽化している400-5000GTの船舶の更新を妨げることとなる。③小型船・フェリー・オフショア作業船をEU ETSの適用除外とすることは、化石燃料への事実上の補助であり、環境汚染を継続することとなる。5000GT以下の船舶を対象外とすれば、海運会社が船舶を改造して4999GTとして、引き続き化石燃料の使用を続け、5000GT以上の船舶との公正な競争を妨げることとなる。④海運会社は経営上の必要性から保有船舶の燃費性能を把握しており、400GT以上の小型船を適用対象としても欧州議会が懸念しているように過度の事務的な負担を船社に与えることはない。⑤欧州委員会の適用除外案に従えば、CO₂の排出量が2580万トン増加し、さらに400GT以上の小型船は大型外航船に比べて沿岸に近いところを航行するため、船舶の排気が沿岸住民の健康に与える影響も大きく、400GT以上の小型船を適用対象にすれば住民の健康改善に大きく寄与する。

原文

Transport & Environment (9/23)


4.英国新政権:新たな「成長計画」の中で環境政策が後退

英国の新財務大臣は、23日午後、緊急予算措置とともに減税と規制緩和を含んだ「成長計画」を発表する予定。さらに、イングランド内に新たに地域主導型の38の「投資ゾーン」を創設し、「自由貿易港」と同様に、企業の新規誘致・事業拡大のために、期間限定の減税など、地域ごとの特例インセンティブを設けられるようにする。さらに、投資ゾーンの建設に当たっては、開発事業者に課せられる環境影響調査要件の緩和など、既存の規制の緩和も実施する。スコットランド・ウェールズなどの自治政府と協議のうえ、英国全土で同様の政策を展開していく予定。投資ゾーン以外でも、道路・鉄道・発電所の建設などの国家的な重要インフラ整備事業についても、生物多様性の確保を含む、環境影響調査の簡素化を図る。この結果、洋上風力発電や原子力発電所の建設が促進される見込み。事業開発によって、排水中のリン酸塩や硝酸塩の濃度を上げないという「栄養素中立」の原則についても規制緩和される見込み。

原文

Edie (9/23)


Webinar 情報