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国際海洋情報(2022年9月22日号)

1.欧州エネルギー危機:ロシアによる一部徴兵によりさらに価格上昇

露大統領による軍の一部動員命令によって、欧州の天然ガス価格は1年前に比べて3倍以上の212ユーロ(約3万円)/MWhまで上昇し、石油価格も2%上昇した。英国では、政府が電力価格の上限規制を実施しているため、エネルギー価格の上昇を電力料金に十分に転嫁できずに既に20社以上の電力小売事業者が経営破綻している。独政府は、この冬にエネルギー不足で、エネルギーの配給制になるのを避けるため、できることは何でもやるとしており、同国国営の天然ガス輸入事業者のUniperに対して、追加で80億ユーロ(約1.1兆円)の資金注入を行うと表明し、これまでの同社に対する政府の支援額の合計は290億ユーロ(約4.1兆円)に達している。独政府は独国内にあるGazpromとRosneftの子会社を事実上国有化している。ロシアからウクライナを経由した欧州への天然ガスの輸送は継続しているが、一日当たり4240万㎥と低い水準にとどまっている。

原文

Reuters (9/22)


2.ICCT:EU市場におけるLNGと再生可能LNGの将来的可能性

International Council on CleanTransportationが9月14日発表した標記報告書の概要は以下のとおり。①LNGが海運の脱炭素化に資するためには、LNG燃料船が将来的にバイオまたは合成LNG(再生可能LNG)に燃料の切り替えが可能であることと、この切り替えによって、CO₂の排出が削減されるということを前提とするが、この前提が現実的か政策決定者は判断する必要がある。②2030年の時点で、再生可能LNGのコストは化石燃料のLNGより7倍の価格となり、普及のためには、政策的な価格補助が必要となる。③再生可能LNGを温暖化対策として活用するためには、舶用機関からのメタンスリップをゼロにするだけでなく、サプライチェーン上流におけるメタン漏出も大幅に削減する必要がある。④また船上のLNG燃料・貨物タンクからのメタン漏出もゼロにする必要がある。⑤政策決定者は、メタンを漏出することなく、ライフサイクルのCO₂排出量が低い、合成ディーゼルやグリーンメタノールなどの他の代替舶用燃料についても 検討する必要がある。

原文

ICCT (9/22)


3.韓国:豪から2032年までに年間100万トンのグリーンアンモニアを輸入

豪のクィーンズランド州は、水素産業戦略5か年計画(2019-2024)に基づき、韓国の韓国亜鉛・Hanwha Impact・Ark Energy・SK Gasと韓豪水素コンソーシアムを結成するための覚書を、同州の首相が参加して、9月21日締結した。同コンソーシアムは、2032年までに年間100万トン以上のグリーンアンモニアを生産し、韓国に輸出することを目標とする。計画では、韓国亜鉛の豪子会社であるArk Energyは、同州から500万ドルの助成を受けて、Bowen市の南西地域にCollinsville Green Energy Hubを建設して、3000MWの太陽光発電による電力を活用して、韓国亜鉛のためにグリーン亜鉛を生産するだけでなく、グリーン水素とグリーンアンモニアも生産する。

原文

Queensland Government (9/22)


4.WSC:ライフサイクルで排気を評価しないEU ETSはグリーン燃料に不利

コンテナ海運会社の業界団体であるWSCが標記意見表明をしているところその概要は以下のとおり。①海運の脱炭素化のためには、燃料が排出するCO₂の量をwell-to-wakeのlife cycleで評価する必要がある。②EU ETSの海運への適用に当たって、船舶の運航によって排出されるGHGだけを対象にすれば、使用する燃料が化石燃料から生産されるか再生可能エネルギーから生産されるかを問わないので、生産コストが安い化石燃料から生産されるブラウン燃料が有利となり、結果として、再生可能エネルギーから生産されたグリーン燃料の普及が妨げられることとなる。③他のEU Green Dealに関する施策においては、life cycle評価が取り入れられており、EU ETSにも取り入れることは可能である。④例えば、船舶から排出されるCO₂を測定検証するEU MRV規則を見直すことも可能だし、グリーン燃料を使用した場合は、排出権購入の価格を割り引くことも考えられる。

原文

WSC (9/22)


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