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国際海洋情報(2022年9月21日号)

1.UCL Energy Institute:LNG燃料船への投資で8500億ドルの評価損

数年前までは、新造船に占めるLNG燃料可能船の割合は10%程度に過ぎなかったが、EU・日本・韓国などの政府支援によって、最近はブームが発生し、2025年までに竣工する新造船の65%がLNGを燃料とできる船舶となる見込みであるが、New York気候週間期間中に開催されたMarine Money Conferenceにおいて、ロンドン大学UCLエネルギー研究所は、2030年までに、パリ協定の目的に整合する海運政策が国際的に採用されれば、LNG燃料船に関連して合計で8500億ドル(約122兆円)の評価損が発生するとする報告書を発表した。仮に、LNG燃料船の機関を水素や水素を原料とするアンモニアなどを燃料とする機関に置き換えれば、この評価損額を船価の15-25%である1130億ポンドから1850億ポンド(約19―30兆円)に縮減することが可能としている。報告書は上記のリスクを踏まえて、各国政府は直ちにLNG燃料船建造支援を停止し、船主や金融機関もLNG燃料船の建造を中止するとともに、各国政府は、LNG燃料船のメタンスリップの問題を検証して、代替燃料に関する将来の規制方針を緊急に明らかにすべきとしている。

原文

UCL(9/21)


2.蘭:洋上風力発電を2040年までに50GW、2050年までに70GWまでに増設

北海の沿岸9か国から構成されるNorth Seas Energy Cooperationが2050年までに合計で260GWの洋上風力発電能力を持つことを目指すことで合意したが、これを受けてオランダ政府は、9月16日、洋上風力発電能力を2040年までに50GW、2050年までに70GWまでに増設し、併せて大規模なグリーン水素の生産施設も建設するとの計画を発表した。蘭政府は、現在、同国の総消費電力の75%に相当する21GWの洋上風力発電能力を2030年までに増設することを目標としているが、2030年以降に建設される洋上風力発電施設は、海岸から何百kmも離れた北海の沖合に建設されるため、沖合に大規模なエネルギーハブを建設して、周辺の洋上風力発電施設で発電された電力をまとめたうえで、電気または水素として陸上に送ることを計画している。またこのハブを経由して、他の北海沿岸国と電力を融通しあうことで、エネルギー安全保障も向上させる。

原文

Offshore Energy (9/21)


3.IEA/IRENA:Breakthrough Agenda Report 2022を発表

標記報告書の提言の概要は以下のとおり。①可変再生可能エネルギーのシェアを引き上げるために、柔軟性を持った低炭素発電システムの試験・実用化を進める。②低炭素発電を増やしてCO₂の排出量を減らし、エネルギー安全保障を改善し、システムの柔軟性を強化するために、国境をまたぐ複数国間の新たなスーパー送電網を建設する。③石炭生産国のエネルギー転換を支援するために、財政的・技術的な支援を取りまとめる新たな国際センターを設置する。④自家用車とバンについては2035年まで、トラックについては2040年代を目標として、炭素中立ではない自動車を禁止するための詳細について合意する。⑤電気自動車への充電施設を、途上国を重点的に世界に普及させるため、整合的な国際標準に合意する。

原文

IEA (9/21)


4.国連事務総長:化石燃料産業の超過利潤に対する課税を先進国に要請

本年第2四半期の利益として、Exxon Mobilが179億ドル、Chevronが116億ドル、Shellが115億ドルなど、各社とも記録的な利益を上げたことを7月に発表しているが、国連事務総長(UNSG)は国連総会冒頭の演説で、「気候温暖化に大きな責任を持つ石油業界が記録的な収益を上げる一方で、家庭の家計が苦しくなり、地球温暖化が進んでいる。」と指摘し、先進国に対して、「石油企業の超過利潤に課税をし、その資金をもとに、気候変動の悪影響を被っている国々や、物価の上昇に苦しむ家計の支援を実施する。」ことを要請した。11月のCOP27では、先進国から途上国への資金支援が主要テーマとなる見込みで、事務総長は支援の財源を「世界共通の敵」である石油企業から徴収することを示唆した。ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギーの供給不足から、石油業界が巨大な利益を得ているEUでは、エネルギー価格の高騰に苦しむ家庭を救済するために、石油業界に対して1400億ドル(約20兆円)を課税することがすでに検討されている。

原文

AP (9/21)


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