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国際海洋情報(2022年9月16日号)

1.欧州議会:交通分野における2030年までのCO₂削減比率を16%に引き上げ

9月14日、欧州議会は再生可能エネルギー指令の改正案の投票を行い、7月に議会の産業委員会で合意された案に従い、ロシアへの化石燃料依存削減の一環として、交通分野における2030年までのCO₂削減比率をこれまでの13%から16%に引き上げることに合意した。具体的には、再生可能エネルギーから製造される合成燃料の比率を2030年までに5.7%に引き上げ、海運分野については、合成燃料の比率を1.2%に引き上げる。また欧州委員会が5月に採択したロシアからのエネルギー依存から脱するための施策を示したRePowerEUに従い、再生可能エネルギーの比率を2030年までに45%に引き上げることも合意された。今後、年末までに欧州理事会との調整・合意が行われたのちに正式に法律となる。

原文

Euractiv (9/16)


2.英国新政権:シェールガス開発再開を容認へ

エネルギー価格の高騰を受けて、英国の新首相は2019年以来開発許可が停止されていたシェールガスの開発を早ければ来週(9月19日の週)にも許可する見込み。シェールガス開発許可再開のカギとなる英国地質調査(BGS)の報告書は、女王の葬儀の影響で公表が遅れているが、Guardian紙によれば、報告書では、シェールガスの生産手法であるfrackingによって誘発される地震の発生と規模を予知するのは科学的に難しく、地震防止のためにはより多くの研究をする必要があるとされ、マグニチュード3クラスの地震が発生する可能性がある新たなfrackingの場所も特定されている。現行法では、マグニチュード0.5以上の地震が発生した場合には、frackingを中止しなくてはならないが、シェールガス製造業界は、この基準を大幅に緩和するようロビー活動を行っている。2019年の保守党の選挙公約では、「frackingが安全に実施できるという確固な科学的証明がない以上シェールガスの開発を認めない。」としているが、公表予定のBGSの報告書では、確固たる証明が示されていない。

原文

The Guardian (9/16)


3.White House:15GWの浮体式洋上風力発電の整備を発表

9月15日、米White Houseは、エネルギー省・内務省・商工省・運輸省が協力して、2035年までに洋上浮体式発電の発電コストを70%削減して45ドル/MWhとし、500万戸の家庭の電力を供給できる15GW分の浮体式洋上風力発電施設を整備すると発表した。固定式洋上風力発電を併せれば、2030年までに、1000万戸の家庭に電力が可能な30GW分の洋上風力発電施設を整備し、これによって、7.7万人の雇用を創出し、民間投資を活性化する。米国東岸やメキシコ湾の沿岸は水深が浅いので、固定式の洋上風力発電施設の整備が可能だが、米国西岸とメイン湾沿岸のように水深が深いところでは、浮体式の洋上風力発電施設を整備する必要がある。世界全体で見れば、現時点で固定式の風力発電施設は50GW分既に整備されているが、浮体式洋上風力発電は0.1GWにすぎない。

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White House (9/16)


4.欧州議会:食料を原料とするバイオ燃料の規制強化に合意できず

ロシアによるウクライナ侵攻の影響で食料価格は既に急騰しており、欧州や世界の他の地域における干ばつも食糧危機を深刻化している。この結果、多くの人々が飢餓や食料不足の危機に瀕しているが、欧州議会は、再生可能エネルギー指令の改正案の審議にあたり、食料を原料とするバイオ燃料に対する支援の停止や、食糧危機が発生した時に食料を原料とするバイオ燃料を制限するなどの改正提案を否決し、食料を原料とするバイオ燃料の生産が現状とおり持続されることとなった。この結果、150万個のパンと1900万本のひまわり・菜種油に相当する食料が、自動車の燃料として使用されるとして、Oxfamや「交通と環境」といった環境NGOは、欧州議会は世界中の人々の飢餓より、バイオ燃料業界の利益を優先したと非難している。

原文

Oxfam (9/16)


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