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国際海洋情報(2022年9月9日号)

1.英国新政権:国内エネルギー価格に上限を設定

9月8日、英国の新首相は新たなエネルギー政策を表明したところその概要は以下のとおり。①前政権の方針では、10月から各家庭の年間光熱費の上限額が1年前の約3倍に匹敵する3500ポンド(約58万円)に引き上げられる予定であったが、今後2年間、上限額を2500ポンド(約42万円)に据え置く。②事業者や病院・学校なども光熱費上限額抑制の対象となりうるが、据え置き期間は2年ではなく半年のみ。③インフレ率は7月に10.1%を記録し、年末には13%に達すると見込まれていたが、今回の光熱費上限額の抑制によって、インフレ率を4-5%引き下げる効果が見込まれる。④光熱費上限額の抑制に必要な財政規模は1000億ポンド(約17兆円)を超すものと見込まれるが、エネルギー価格の高騰から石油ガス事業者は今後2年間で1700億ポンド(約28兆円)の利益を上げる見込みであり、野党労働党は、超過利潤を謳歌しているエネルギー産業に対して課税して財源を賄うべきと主張しているが、新首相はこれを拒否し、財源は一般会計と公債によって賄われる見込み。

原文

AP (9/9)


2.WMO:The State of the Climate in Africa 2021

9月8日発表された標記報告書の概要は以下のとおり。①厳しい干ばつや破壊的な洪水など水資源に関連した災害がアフリカ社会・経済を直撃している。②この結果、季節的な降雨のパターンが乱れ、高山地帯の氷河が無くなり、地域の水源となっている湖が縮小している。③人口の増加に伴う給水需要が高まる一方で、アフリカ諸国の4/5は2030年までに需要に応える給水能力を失うものと予測されている。生活に必要な給水を受けられないことによって、従来の居住地で生活できなくなった住民の難民化の規模が2030年までに7億人に達すると見込まれている。④アフリカ諸国は世界の2-3%のCO₂しか排出していないのに、排出割合にそぐわない気候変動の悪影響を受けている。⑤特にHorn of Africa地域では数年にわたり厳しい干ばつとそれによる飢饉によって、多くの命が失われ、地域社会の不安定化を招いている。⑥アフリカにおいては、気温と海面の上昇が世界平均より早いペースで進んでおり、沿岸地域の洪水被害の頻度と規模が拡大し、海抜が低い地域における水に含まれる塩分濃度の上昇によって、飲用水・農業用水として利用できなくなるなどの問題が発生している。

原文

WMO (9/9)


3.1.5℃の気温上昇で、気候上複数の不可逆的臨界点を超すことに

地球温暖化が進むと、氷床の面積が減少し、サンゴ礁が死滅し、熱帯雨林の劣化が進むなど、事象ごとの臨海点を超すと大規模で不可逆的な変化をもたらすこととなる。Science誌に発表された研究は、16の気候上重要な臨界点を特定したうえで、それぞれ、いつ、何度まで気温が上昇したら臨界点を超えて、どういう不可逆的な影響が出るか分析した。研究者たちは、これまでの気温上昇によって、南極大陸西部の氷床の融解について臨界点を超えて氷床自体が崩壊するなど5つの事象について、既に臨界点に近づき「安全な気候の状態」を超えていると分析している。さらに気温が産業革命以前と比較して1.5℃上昇すれば、4つの事象について臨界点を超え、6つの事象について臨界点を超える可能性があると評価している。

原文

Carbon Brief (9/9)


4.足踏みするウクライナからの穀物海上輸送の多くの問題点

海上輸送回廊は、7月に国連とトルコの仲介で設定され、国連の共同調整センター(JCC)によれば、8月1日以降、トウモロコシを主体として、約200万トンの穀物が輸送された。露のプーチン大統領は、ウクライナから輸出されている穀物が、食糧危機に瀕しているアフリカ諸国にではなく、EUやトルコに輸出されているとして、海上輸送回廊に関する合意から露が離脱することも検討すると、9月7日表明した。合意が継続されたとしても、依然として黒海には多くの機雷が浮遊し、大型船舶が寄港せず、大規模港湾が除外されているなどの理由から、10月までに最低でも600万トンの穀物を輸出するとするウクライナ政府の目標達成は難しい状況となっている。ロシアによる侵攻以前に、ウクライナの穀物海上輸送を行っていた海運会社は、自社の船舶をウクライナに配船できるほど、いまだ安全が確保されておらず、地上の戦闘状況も活発で、船員の生命の安全を確保できず、船舶が港湾に閉じ込められるリスクもあると指摘している。

原文

Reuters (9/9)


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