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国際海洋情報(2022年9月1日号)

1.GMF:Maritime Green Corridorの定義・事業評価・計画作成などについて提案

Global Maritime Forum (GMF)は、海運の脱炭素化のために、これまでThe Next WaveやClydebank宣言などの活動に取り組んできたが、Getting to Zero CoalitionのメンバーをはじめとするMaritime Green Corridor (MGC)の開設に興味を持つ事業者・政府などと協力して、MGCを定義・始動・管理することにつき検討し、いくつかの事項について勧告する文書を発表した。①定義の部分では、GreenとCorridorの定義について別々に検討するとともに、②MGC設立のためにまず行うべき活動として、MGCを構成する港湾に関する準備状況やシステム全体について評価する方法について検討し、③MGCの管理については、港湾・政府関係者のリーダーシップの果たす役割、MGC完成までのロードマップの作成、MGC完成後のgovernanceの問題について、具体的な検討を行っている。

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Global Maritime Forum (9/1)


2.ソロモン諸島:USCGの巡視船の寄港を拒否

米国沿岸警備隊(USCG)ホノルル第14管区報道官は、8月25日、ソロモン諸島のガダルカナル島に、定期的な燃料と物資の補給のために寄港しようとしたグアムを母港とする巡視船の寄港がソロモン諸島政府から認められなかったと発表した。この結果、同巡視船は、代わりにPNGに寄港地を変更することを余儀なくされた。巡視船は、ソロモン諸島とPNGのEEZ内で、違法漁業の監視に当たっていた。この事件を受けて、米国務省はソロモン諸島政府に対し、今後、寄港が許可されることを期待すると申し入れた。英国の巡視船も同様に寄港を拒否されたと報道されている。米国は1993年に同国の首都ホニアラにあった大使館を閉鎖したが、同国は2019年に台湾と断交して、中国と外交関係を樹立し、本年3月には、同国と中国との安全保障協定の案がリークされ、中国の軍艦の寄港と、警察部隊の派遣を許可することが報じられた。

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Stars and Stripes (9/1)


3.バルト海EU諸国が洋上風力発電の発電量を2030年までに7倍にすることに合意

欧州委員会は、ロシアへの天然ガスの依存度を年末までに2/3削減し、2030年までにゼロにすることを決定し、それに伴いEU諸国の全エネルギー必要量に占める再生可能エネルギーの割合を現在の40%から、2030年までに45%に拡大することを、3月に表明している。バルト海に面するEU諸国は、現在デンマークとドイツの沖合を中心として、2.8GW分の洋上風力発電施設を保有するが、ロシアがEU諸国に対し、天然ガスの供給を停止・削減したのを受けて、バルト海に面するEU8か国は、2030年までに洋上風力発電能力を現在の7倍で2000万戸の家庭に電力を供給できる20GWに拡大することについて、8月30日合意した。デンマーク政府は、バルト海のボーンホルム島沖に設置されている洋上風力発電施設の発電能力を2GWから3GWに拡大したうえで、独に電力を供給するため、独の送電網に接続すると8月29日発表した。

原文

Euractiv (9/1)


4.EU:既存の航空燃料と脱炭素燃料の価格が2050年までに逆転の見込み

McKinsey等が最近発表した研究成果によれば、既存の航空機燃料であるケロシンの価格は、欧州委員会による化石燃料に対する課税強化によって、2050年までに現在の価格の6倍程度の300ドル(約4.2万円)/MWhまで上昇する一方で、e-fuelのコストは、現在は450ドル/MWhだが、2050年までには250ドル/MWhまで下落し、液体水素も現在300ドル/MWhだが、2050年までに約50ドル/MWhまで急落する見込みで、既存の化石燃料の価格優位性が失われる見込み。こうした状況を受けて、サウジアラビアやUAEといった産油国は、大規模な太陽光発電施設を建設して、グリーン水素とそれから製造されるグリーンアンモニアなどの合成燃料の生産に力を入れるようとしている。欧州が必要とするこうしたグリーンな燃料については、現在は生産コストが安い中東諸国から輸入するのがコスト的に有利だが、2030年までには欧州域内で生産されるグリーン燃料の価格の低下により、中東諸国からの輸入燃料との価格差を解消できる見込み。

原文

Euractiv (9/1)


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