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国際海洋情報(2022年8月22日号)
1.英国の電力価格が他の欧州諸国より急速に上昇している背景
英国の国家統計局によれば、昨年の7月から1年間で、同国における天然ガス価格は96%上昇し、これに伴い、同期間中に電力価格は54%上昇した。2022年の電力・ガスに関する消費者物価の上昇は約80%と予測されており、ユーロ圏の19か国の平均上昇率の40%の約2倍となっている。今年の一家庭当たり年間平均光熱費は4000ポンド(約65万円)となる見込みだが、来年春には5000ポンド(約81万円)に引き続き上昇する見込み。一方で、一般的なインフレ率でみると、ユーロ圏が8.9%である一方、英国は10%を少し超える程度で大きな違いはない。電力・ガス分野だけ突出して急激な価格上昇が進んでいる理由としては、英国の国民に安い電力を小売していた小規模な電力会社の多くは、自社の発電能力を持たずに、電力卸売市場で仕入れた電力を消費者に小売する能力しか持たなかったため、卸売市場で電力価格が急騰した結果、販売価格が逆ザヤとなって、昨年1年間で31社が倒産した結果、これまで安売りの電力会社に頼っていた多くの国民が発電能力を持つが割高な大手電力会社から電力を購入しなくてはならない状況に追い込まれたためと考えられる。
原文
CNN (8/22)
2.需要主導のコンテナ運賃の上昇は終焉するも2022年も最高益を継続更新
Sea-Intelligence社によれば、コンテナ輸送の需給関係は、2020年11月から2022年の1月まで、輸送需要量は供給量を継続的に10%上回っていたが、この需給ギャップが今年の6月には2%まで減少しており、これに伴って、コンテナ船運航ダイヤの乱れも改善され、コンテナ船運航の正常化が進んでいる。今後も需給ギャップの減少傾向は続き、運賃引き下げ圧力が強まる見込みで、例えば、通常は運賃が高含みで推移する第3四半期の運賃についても、対前期で、上海SCFIで8%下落した一方、中国コンテナ運賃指標(CCFI)は1%わずかに上昇している。欧州の港湾では、依然として港湾の混雑や港湾ストライキなどによって、港湾荷役効率が下がっているものの、米国も含め、インフレの進行と在庫の積み上げによって、輸入意欲が減少している。Drewry社のWorld Container Indexは、スポット運賃の下落によって、対前年比35%低下したが、5年平均と比べると依然として71%も高い水準にあり、海運会社の利益は2022年も最高益を更新する見込み。
原文
Splash 247 (8/22)
3.ICS:2023年からインド洋の海賊危険海域撤廃をIMOに提案
国際海運会議所(ICS)は、インド洋に設定されている海賊警戒のための高度危険海域(HRA)を来年から撤廃することを決定し、8月22日にIMOに提案した。提案は10月31日から開催されるIMOの海上安全委員会で審議される。HRAの撤廃は、約15年間にわたる地域的・国際的な関係者の海賊取り締まり対策の賜物で、2018年以来、ソマリア沖では、民間商船に対する海賊の攻撃は発生していない。今回の決定はICS/BIMCO/IMCA/ INTERCARGO/INERTANKO/OCIMFといった民間海運関係業界団体による共同決定だが、英国海上貿易運用センター(UKMTO)が設定している「自主的報告海域(VRA)」の運用は継続されるので、VRAに入域する船舶は、これまでとおり、海運業界が作ったBest Management Practice 5 (BMP5)に従い、UKMTOに報告するとともにMaritime Security Center for the Horn of Africa (MSCHOA)に登録することが求められる。
原文
ICS (8/22)
4.北極圏の丘陵地が永久凍土の解凍によってがけ崩れを起こし大量のGHGを放出
シベリアの北部の北極海に面したタイミル半島は永久凍土のツンドラに覆われた平均気温14℃の極地だが、科学者たちは衛星から観測した2010年から2017年までの風景の変化と、2018年から2021年の間の風景の変化を比較した。永久凍土がゆっくりと解凍すると、丘陵地帯の端が馬蹄形に崩れ落ちる「解凍崩壊」が発生する。2010年から2017年の間に、科学者は82か所の崩壊個所を確認したが、2018年から2021年の間には崩壊個所が1404か所に急増した。この結果、崩壊によって地中から放出されたGHGの量は当該期間中に28倍となった。通常使用されている気候変動モデルでは解凍崩壊が考慮に入れられていない。科学者たちは、今後衛星からのリモートセンシング技術も活用して、こうした丘陵の端で発生する解凍崩壊が北極圏の景観や地球温暖化に長期的に与える影響について解明する必要があるとしている。
原文
The Washington Post (8/22)
Webinar 情報
1.Economist Impact:Sustainability Week:countdown to COP27
October 3-6th
https://events.economist.com/sustainability-week-countdown-to-cop/registration/?RefID=LBC_1A_Launch&utm_source=email&utm_medium=Eloqua&utm_campaign=SusWeekCOP28&utm_content=LBC_1A_Launch