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国際海洋情報(2022年8月21日号)
1.韓国政府:韓国造船業界向けに外国人労働者の雇用制限をさらに緩和へ
韓国造船業界は、過去3か月、中国造船業界をわずかにリードして、世界第1位の地位を守ってきたが、この地位を維持するため、韓国大手3大造船会社の社長は、8月19日、政府の産業通商資源部長官と会談して、今後の政府との協力関係について協議した。報道によれば、この場で話された課題のうち、最も重要なのは労働力不足問題で、2010年代に韓国造船業界が事業規模を縮小した際に大幅な人員削減をしたため、受注が拡大した今では、熟練労働者の不足に悩んでいる。韓国政府は最近こうした労働力不足を解消するために一定の種類の外国人労働者の受け入れ可能人数を拡大したが、造船各社はさらなる制限の緩和を要望し、長官は政府としての更なる労働力確保対策を近日中に発表すると言明した。政府支援と引き換えに、政府は造船各社に対して、1.76億ドル(約241億円)を投資して、韓国造船業界が高付加価値な船舶の分野で引き続き世界をけん引できるように、アンモニア燃料船の開発・デジタル化・自動化の分野などの先進的な分野への投資を強化するように要請した。
原文
The Maritime Executive (8/21)
2.IRAは米国における石油ガス生産の増産を通じCO₂排出量の増加を許容
本年1月に、連邦裁判所によって、総額1.92億ドル(約263億円)の湾岸の石油ガスのリースの入札が地球温暖化の懸念から停止され、バイデン政権も新規の石油ガス開発の禁止を打ち出した時には、石油ガス業界を震撼させたが、今回バイデン大統領が成立させたInflation Reduction Act (IRA)は、石油ガス業界の利益を代表するManchin民主党上院議員の協力を取り付けるため、米国内における化石燃料開発の抑制は盛り込まれなかった。この結果、IRAはclean energyの振興に力を注ぐ一方で、連邦管理の広範な陸地・海域におけるリースの競争入札の実施を政府に義務付けることによって、石油ガス業界の利益も確保した。この結果、米国における石油ガス生産量と化石燃料に伴うCO₂排出量は引き続き増加を続けることが可能となったと、業界の専門家や環境団体は考えている。つまり、民主党は化石燃料が10年以内に不要になるというような考えを捨て、石油ガス業界と共存し、IRAによって、今後10年間、石油ガスの供給と需要がともに増加することを許容したと石油ガス業界はとらえている。米国で生産される化石燃料の米国内の需要は、IRAの結果今後減少する結果、その多くは輸出され、外国で燃焼される石油ガスから2030年までに年間1.1億トンのCO₂が排出されると専門家は分析している。
原文
AP (8/21)
3.電力脱炭素化のためには炭素課税より投資に対する税額控除の方が有効
気候変動対策に懐疑的な人々は、長年にわたって、再生可能エネルギーへの移行は、家庭や事業者にとって電力料金の負担増につながると主張してきたが、経済学者によれば、Inflation Reduction Act (IRA)によって、今後10年間で全体として、2000億ドル(約27兆円)の電力料金の節約が期待される。再生可能エネルギーの発電コストが高かった時代には、税額控除を用いても、発電コストの引き下げ効果は限られており、炭素税や排出権取引制度を通じて、電力コストを上げて、省エネを促すしか方法はなかったが、過去10年間で、技術開発や国際競争によって、太陽光発電の発電コストが約8割低下するなど、再生可能エネルギーの価格が大幅に下がったため、最近の研究では、米国の電力の脱炭素化を進めるために、炭素税を課して電力料金を上げるより、再生可能エネルギーに投資する電力事業者に対して税額控除を認めるようなインセンティブが他の支援の方が、発電コストをさらに引き下げ、コスト削減分を消費者に還元するほうが有効であるとしている。
原文
Inside Climate News (8/21)
4.ウクライナの穀物輸出回廊が順調に機能し、食糧市場も安定化
7月末に締結された合意に基づいて、8月前半に、ウクライナの黒海沿岸の主要3港から21隻の船舶で輸出された食品の総量は50万トンを超えた。この量はもちろん平年の輸送量に比べれば少ないが、穀物の生産者・輸出事業者はほっとし、世界の食料市場も安定化に向かっていると8月18日、国連事務総長はコメントした。一方で、ウクライナに入港する船舶も継続しているが、今後の課題としては、いまだに残るロシアの脅威にかかわらず、平常時にウクライナの穀物輸送に従事していた大型船舶が戻ってくれば、さらに穀物の輸出を加速することができるが、このためにはこの回廊を特別な追加コストなしに安全に運航できるという確信を船主が持つことが大切である。国連事務総長は18日にオデッサを訪問するとともに、ウクライナ・トルコ両大統領と3者会談を行った。ロシアによる侵略以前は、ウクライナから毎月500-600万トンの穀物が輸出されていたが、2022-2023年のシーズンは合計で3040万トンの輸出が実行できる見込み。
原文
gCaptain (Bloomberg) (8/21)
Webinar 情報
1.Economist Impact:Sustainability Week:countdown to COP27
October 3-6th
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