国際海洋情報(2022年8月15日号)
1.スウェーデンが仏を抜いて欧州最大の電力輸出国に
国際エネルギー機関が欧州各国の2022年上半期の電力の輸出入を発表したところその概要は以下のとおり。①フランスはこれまで欧州最大の電力輸出国で、2021年上半期は、21.5Twhを輸出していたが、2022年上半期は、原子力発電の構造的問題で、輸出電力が半減して16.4Twhになった一方で、電力の輸入量が2倍の18.9Twhとなり、差し引き2.5Twhの電力輸入国に転落した。②スウェーデンの主要発電源は、原子力・水力・バイオ燃料で、風力発電が増加し、石油火力発電が減少しているが、フィンランドに7Twh、デンマークに4Twh輸出したのをはじめ、合計で16Twhを輸出し、欧州最大の電力輸出国となった。③ドイツはフランスへの電力輸出量が増えたため、対前年比2倍の15.4Twhを輸出し、欧州第2位の電力輸出国となった。④ロシアが天然ガスの供給をさらに制限し、冬の電力のピークシーズンに独が仏からの支援を必要としても、仏が原子力発電の発電量を増やせない限り支援することは難しい。
原文
Euractiv (8/15)
2.米連邦地裁:オバマ政権時代の連邦管理地における石炭開発の一時停止を復活
2015年には、連邦政府がリースした土地で生産される石炭は、米国内の石炭生産の約40%を占めていたが、2016年に石炭採掘のための連邦政府管理地のリースをオバマ政権が一時停止したが、2017年にトランプ大統領が任命した内務長官がこの決定を覆し、連邦政府管理地の石炭採掘のためのリースを可能とした。バイデン政権はこの前内務長官の決定を無効としたが、リースの一時停止を完全には復活していなかった。これに対し、オバマ政権に任命されたモンタナ地方裁判所の連邦判事は、8月12日、土地管理局に対して、完全な環境影響調査が実施されるまで、リースの一時停止を復活することを命じた。国際エネルギー機関によると、世界的にはコロナの影響で石炭の需要が2年間減った後に、2021年には急回復し、2022年には最高になる可能性がある。米国採鉱事業者協会は、この判決に対して控訴すると表明している。
原文
The Hill (8/15)
3.南極の棚氷がこれまでより早く融解している可能性
南極の棚氷は南極の氷床の陸上と海洋の境界を囲むように位置し、数百メートルの厚さになることもあるが、大陸の氷床が南極海に流れださないように保護しているが、地球温暖化により大気温と海水温が上昇すると棚氷の融解速度も上昇する。カリフォルニア工科大学などの研究者達が、8月12日、Science Advancesに発表した最新の研究成果によれば、棚氷が融解してできた真水が、これまで見過ごされてきた南極大陸の沿岸を流れる細かい暖かな海流の流れをブロックすることによって、棚氷の底から氷の融解が促進されていることがモデルで解明された。もしこのモデルのとおりのことが実際に発生すれば、これまで使用されてきた地球気候モデルの予測より、20-40%早く南極の棚氷が融解していることとなり、海面上昇のペースを促進することとなる。
原文
The Hill (8/15)
4.世界資源研究所:Inflation Reduction Actの6つの利点
World Resource Instituteが、8月12日に下院で承認されたInflation Reduction Act(IRA)について6つの利点を挙げているところ、その概要は以下のとおり。①IRAによって、2780億ドル(約37兆円)の電力コスト、平均的な1家庭当たり年間220ドル(約2.9万円)の電力料金が節約できる。②燃料代と維持費の削減を図るために、IRAは電気自動車の普及を促進するための、税額控除制度や、新車は7500ドル、中古車は4000ドルの価格引き下げを実施。③IRAによる気候変動・clean energy関連の投資で、向こう10年間で新たに900万人以上の新たな雇用を創出する。④IRAによってclean energyが導入され、大気汚染が改善されることにより、2030年までに、最大で3900人のpremature deathと10万人の喘息患者を救うことができる。⑤気候変動は、その原因に関与していない、低所得者層・黒人/ラテン系の民族・先住民などの有色人種に対してより深刻な影響をもたらすが、IRAはこうした気候変動に伴う不平等と不公正を是正する。⑥IRAによってCO₂を2005年実績比で40%削減することが可能で、2030年までに同50-52%削減するというバイデン政権の目標達成可能性が高くる。
原文
World Resource Institute (8/15)
Webinar情報
1.Economist Impact:Sustainability Week:countdown to COP27
October 3-6th
https://events.economist.com/sustainability-week-countdown-to-cop/registration/?RefID=LBC_1A_Launch&utm_source=email&utm_medium=Eloqua&utm_campaign=SusWeekCOP28&utm_content=LBC_1A_Launch