国際海洋情報(2022年8月14日号)
1.ライン川の水位低下によって水運が不能となりエネルギー危機に拍車
ライン川では、燃料・化学製品・紙製品・穀物などの重要物流ルートとなっているが、ライン川の水位は、8月12日にさらに記録を更新して低下し、最悪のエネルギー危機に苦しむ中で、水運による欧州内の重要な素材の物流がさらに制限される状況となっている。ライン川が狭く浅くなっているKaubの観測地点では、12日に水位が40cm以下となり、今後も数日間は水位の低下が続く見込みで、この水位では、この浅くなっているポイントを通過するのは、多くのバージにとって経済的ではなくなっている。独政府の水路管理庁によれば、フランクフルト西部に位置するKaubを大型船舶は通過できない状況となっている。これまでライン川の水運を利用していた荷主企業は、物流を鉄道輸送に切り替え、または喫水線の浅い浅瀬用のバージを使用して物流を維持しているが、燃料の石炭の供給をライン川の水運に頼るいくつかの石炭火力発電所では、このままライン川の物流の制限が続けば、発電所の発電量が低下することも考えられる。
原文
gCaptain (Bloomberg) (8/14)
2.韓国海洋水産部長官:HMMの民営化を表明
韓国のHMMは80万TEU以上の輸送力を持つ世界第8位のコンテナ海運会社で、7月に発表した野心的な拡大計画によれば、2026年までにコンテナ船隊の輸送能力を80万TEUから120万TEUに、VLCCを10隻から25隻に、ばら積み船隊を19隻から30隻に拡大するとしている。同社は2020年の第1四半期まで20四半期連続で経常損失を計上し続けたような状況で、2016年に破産しかけていた同社を救済するために、国営韓国産業銀行と韓国海洋事業公社が同社の株式の40%を引き受けたうえに、新株引受権と転換社債も保有し、すべての社債を株式に転換した場合、同社の株式の70%を国営金融機関が持つ状態となったため、民営化が非常に難しい状況となっていた。今週(8月8日)同社は、2022年上半期の経営成績を発表し、純利益が46.5億ドルと前年の2.9億ドルから大幅に拡大した。これを受けて、海洋水産部長官は、高収益を上げている企業を国有とする必要はなく、海運会社の経営が再び下降する前に、民営化を進めると表明した。
原文
The Maritime Executive (8/14)
3.欧州における港湾ストライキの影響で中国=欧州間の鉄道貨物輸送が増加
中国国家鉄路集団によれば、7月に欧州向けに運行したSilk Road 列車の本数は1517便となり対前年比11%の増加で、輸送コンテナ数は14.9万teuと対前年比12%の増加となった。年初からの7か月の合計で見ると、輸送コンテナ数が86.9万teuと対前年比4%の増加にとどまり、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で成長率の鈍化が続いている。一方、中国とカザフスタン国境で滞留していたコンテナの滞留は改善に向かっており、運行ダイヤの遅延も改善してきている。この結果、欧州向け鉄道コンテナの輸送所要時間も改善している一方で、諸外国におけるインフレによる購買力の低下と、中国の一部地域における発電能力の制限による生産能力の減少によって、輸送貨物量に対する輸送能力に余裕があるため、運賃は約5%低下している。半面、欧州の大港湾では港湾労働者のストライキの影響で、港湾荷役が5日から8日遅れているため、鉄道輸送に切り替える荷主が増えている。
原文
The Loadstar (8/14)
4.米Inflation Reduction Actで再生可能エネルギー発電の拡大に大きな弾み
米国の洋上/陸上風力・太陽光発電のロビー団体であるThe American Clean Power Associationによれば、8月12日に下院で承認されたInflation Reduction Actによって、再生可能発電量が3倍となり、2030年までに全米の家庭に供給する電力をすべて再生可能発電で供給することが可能となり、この結果、国民一人当たり平均で年間1000ドル(約13.3万円)の光熱費を節約し、新たに55万人の新規就業機会を創設し、合計で約100万人を雇用し、CO₂の排出量を対2005年実績比で40%削減できるとしている。特に、洋上風力発電投資に関する投資額に対する30%の税額控除制度を2025年まで延長するのをはじめ、洋上風力発電設備に米国製部品を採用した際の追加控除制度や労働者に対する技能育成制度(apprenticeship)が導入されている。さらに、先進的な工業製品に認められる30%の税額控除制度であるadvanced manufacturing production creditが洋上風力発電支援船舶を含む広範囲な米国製の再生可能エネルギー関連製品に認められる結果、製品価格を10%値引きして販売することができる。
原文
The Maritime Executive (8/14)
Webinar情報
1.Economist Impact:Sustainability Week:countdown to COP27
October 3-6th
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