国際海洋情報(2022年8月11日号)
1.ウクライナから穀物を海上輸送するための課題
世界的な食糧不足問題を回避するために、ウクライナから出港するために保護された回廊が設定されたが、これまでに輸出された約37万トンの穀物の大部分が家畜のえさとなるトウモロコシである。現在同国の港湾には、約300万トンの穀物が滞貨しており、9月中旬までにまずはこの滞貨を一掃する必要がある。ウクライナ政府によれば、昨年収穫された穀物2000万トンと今年収穫される2000万トンの併せて4000万トンを輸出する必要があるが、現在開港されている3港湾の積み出し能力は合計で、月間300万トンのみである。ロシア軍とウクライナ軍が敷設した機雷は、ウクライナ沿岸から黒海沿いのルーマニア・ブルガリア・トルコの海域にまで拡散しており、各国の海軍が機雷処理をしているが、完全処理まではまだ長い期間を要する。イスタンブールに拠点を置くJoint Coordination Centreは、ウクライナから穀物を海上輸送するためにとるべき手続きを8月8日発表した結果、ウクライナから出港する航海については、1航海あたり、5000万ドルの保険が提供されるようになったが、ウクライナに入港する船舶に関する保険については、保険料が依然として高止まりしている。
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Reuters (8/11)
2.欧州委員会:Consortiaに対する競争法一括適用除外規定に対する意見照会を開始
7月に、Global Shippers Forum(GSF)を含む荷主・フォワーダー等の団体が、欧州委員会の競争政策担当コミッショナーに共同書簡を送り、2024年4月まで有効なConsortia Block Exemption Regulation (CBER)について、即時に再検討を進めるよう要求したのを受けて、欧州委員会は定期船のサプライチェーンの利害関係者に対して、CBERの機能について意見を求める質問書を発送した。欧州委員会は今後、2020年に更新された後のCBERの影響について評価を行い、2024年にCBERを延長するか否か、延長するとして単純延長か、見直しを加えたうえで延長するかを決定する。利害関係者は、10月3日までに意見の提出を求められている。GSFの事務局長は、競争法の一括適用除外をしなくても、船舶共有協定を認める方法はあるはずと語っている。欧州のフォワーダー等の団体であるClecatの事務局長も、無条件の適用除外ではなく、明確な一定の条件を定めたうえで、限定的に適用除外を認めるべきであるとしている。
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The Loadstar (8/11)
3.10の機関投資家が世界の化石燃料埋蔵量の半分を支配
石炭と石油・天然ガスの埋蔵量を多く保有する企業をそれぞれ100社ずつランキングしたCarbon Underground 200 リストに掲載された200社で、世界の化石燃料の確認埋蔵量の98%を保有しており、埋蔵されている化石燃料をすべて燃やしたとすると、気温上昇を産業革命前と比較して1.5度以内に抑制するために排出が許容されるCO₂総量の3倍にあたる674Gトンを排出することとなる。カナダのWaterloo大学の研究者が、当該200社の株主を調査したところ、パリ協定の当事国でもあるインド政府・サウジアラビア政府を含むわずか10の機関投資家が200社の株式の49.5%を保有し、化石燃料業界に大きな影響力を持っていることが判明した。多くの化石燃料埋蔵量を保有する企業を、当該保有化石燃料が燃焼時に排出するCO₂の量でランクすると、石油・天然ガスでは、Saudi Aramcoが107Gトン、ロシアのGazpromが38Gトン、以下Rosneftという順番になり、石炭ではインドのCoal Indiaがトップで100Gトンとなっている。
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Euronews (8/11)
4.欧州の歴史的な干ばつの影響で河川水運がマヒ状態に
ドイツ・オランダ・スイスを結ぶライン川は今週(8/8の週)後半から、水位が下がって、いくつかの重要ポイントで船舶の運航が不可能となり、ディーゼルと石炭の河川物流に大きな影響が出る見込みで、中欧から黒海をつなぐドナウ川も同様の状況となり、穀物などの河川物流が大きく阻害される見込み。水運以外でも、仏ではローヌ川とガロンヌ川の水温が上がりすぎて、原子炉を十分に冷却できなくなり、イタリアのポー川の水位が低下して、稲作とアサリの収穫に影響が出ている。ロシアのウクライナ侵攻によりただでさえ、食料とエネルギーの供給が不足している中で、EUは河川水運の自然災害に対する耐久性を早急に高める必要がある。欧州大陸の水運はEUの住民一人当たり年間1トン以上の貨物を輸送し、河川水運だけで800億ドル(約10.6兆円)の地域経済効果をもたらしている。今回の干ばつによる水運の麻痺は、2018年にライン川の水運が止まったときに発生した50億ユーロ(約6850億円)以上の損害を地域経済に与えると予測されている。
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AJOT (8/11)
国内ニュース
1.日本郵船:アンモニア燃料タグボートの改造工事契約を締結
原文
8月9日、日本郵船
Webinar情報
1.Economist Impact:Sustainability Week:countdown to COP27
October 3-6th
https://events.economist.com/sustainability-week-countdown-to-cop/registration/?RefID=LBC_1A_Launch&utm_source=email&utm_medium=Eloqua&utm_campaign=SusWeekCOP28&utm_content=LBC_1A_Launch