国際海洋情報(2022年8月7日号)

1.IMOのCarbon Intensity Indexの基準を満たすために半数のコンテナ船が減速運航に

コンテナ船を71隻保有するギリシャの大手船主のDanaos社のCEOは、現在世界で運航しているコンテナ船の約半分の6000隻しか、来年の1月から施行されるCarbon Intensity Index (CII)の基準を満たすことができず、残りの船舶については、IMOの規制を満たすために減速運航せざるを得ず、海運会社は、現在のサービスを維持するためにより多くのコンテナ船を投入する必要があり、現在下降気味のコンテナ船の用船価格は再び上昇する見込みであると語った。マースクのCEOも、バイオ燃料の供給量不足と高価格を考慮すると、同社がCII規制を遵守するためには、コンテナ船の減速運航が不可避であり、現状のサービス水準を維持するためには、現在の約700隻の総隻数をさらに、5%から15%以上増加する必要があると語っている。

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gCaptain (8/7)


2.中=台関係の緊張にも海運会社は冷静に対応

ペロシ下院民主党院内総務の台湾訪問を受けて、8月3日から台湾周辺において、中国の軍事演習が始まり、中国政府は台湾周辺に6か所の航海・飛行禁止区域を設定し、軍事演習は7日まで続くとしている。これを受けて、台湾政府の交通通信省は、台湾に寄港する船舶に対して、中国軍が実弾演習を実施している海域を避けて運航するように勧告している。特に、台湾最大のコンテナ港である高尾港・台北港・基隆港・Suao港・台南(安平)港・花蓮港に寄港する船舶については、航海禁止区域を迂回するように勧告している。台湾海峡は東アジア諸国と欧米を結ぶ主要ルートにあたるため、両国間の緊張がさらに高まれば、世界のサプライチェーンにさらに悪影響を与えることも懸念されるが、海運・港湾関係者は平静を保っている。陽明海運の会長は、「船舶は航空機のように決まった空路を飛行するわけではないので、船舶が航海禁止区域を回避さえすれば、大きな影響はない。」と語っている。

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The Loadstar (8/7)


3.欧州における山火事で既に過去2番目の広さの面積が消失

10を超える欧州諸国で今年に入ってからこれまでに、山火事によって、2006年以来2番目に広く、ルクセンブルグの面積の2倍以上となる60万ヘクタールが消失し、多くの住民が避難し、多くの住宅が消失した。地中海地方の山火事のシーズンは6月から9月までなので、イタリア・スペイン・フランスなどでは、現在でも依然として山火事の重大な危険に直面している。気候変動によって、高温で乾燥した状況が続き、山火事がより早く拡大し、より長く継続し、火の勢いもより強くなっている。高い気温によって、植物が乾燥し、これらの枯れた植物が燃料の代わりになるが、こうした枯れた植物を事前に処理する労働力が不足していることも、山火事の発生を助長している。7月初旬に、仏とポルトガルで発生した山火事は非常に規模が大きく、地中海沿岸で発生する大規模な最近の山火事は、消火することが困難な規模となっている。

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Euractiv (8/7)


4.米国上院Inflation Reduction Actが気候変動・エネルギー政策に与える影響

プリンストン大学が表記影響について暫定的に影響をまとめたところその概要は以下のとおり。①Inflation Reduction Act(IRA)が実施されれば、現在の政策が継続された場合と比較して、2030年までに最大10億トンのCO₂の削減が可能。②2030年までに2005年実績比でCO₂排出量を半分にするという政府目標の達成に必要なCO₂の削減量の2/3をIRAによって削減可能。③具体的には2030年までに、発電の脱炭素化によって最大3.6億トン、電気自動車の普及によって最大2.8億トン、工業分野のエネルギー効率化・炭素回収装置の導入によって最大1.3億トンのCO₂削減が可能となる。④さらに、税制・財政上の支援によって建物のエネルギーの電化/エネルギー効率を向上させ、メタン排出課税や補助金によって石油・ガス事業から発生するメタンの排出量を削減し、森林と農地を保全することによって炭素を隔離することなどを合わせて、最大で2.1億トンのCO₂の排出削減が可能となる。

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REPEAT (8/7)


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