国際海洋情報(2022年8月6日号)
1.ウクライナ政府:黒海沿岸の全港湾の再開を望む
8月5日、イスタンブールのJoint Control Centre (JCC)の計画に従って、3隻のばら積み船からなる初めての商船隊が、約5.7万トンの穀物・とうもろこしを積載して、オデッサ港とチョルノモルスク港を、ウクライナの水先人に先導されて、港の入り口に敷設された機雷敷設海域を無事通過して、黒海をイスタンブールに向けて航行し、イスタンブールでJCCの検査を受けたのちに、英国等の最終目的地に向かう予定。一方、反対にロシアのウクライナ侵攻後はじめて、チョルノモルスク港に入港するために2隻のばら積み船がボスポラス海峡を通過して北上している。国連担当者によると、月間最大500万トンの穀物を輸出することを最終目標としているが、ウクライナのインフラ担当大臣は、昨年収穫した2000万トンの穀類に加えて、本年収穫する新しい穀物の輸出も開始したいとしている。現在のJCCの合意では、オデッサ港・チョルノモルスク港・Yuzhnny港の3港から積み出される穀物と食料品だけが対象となっているが、ウクライナ政府は対象港湾と貨物の範囲の拡大を望んでいる。
原文
The Maritime Executive (8/6)
2.欧州の熱波で欧州アルプスの氷河が記録的な減少
観測者は夏に溶ける氷の量と、冬季に振った雪の量の差から、どれだけの氷河が融解したかを割り出しているが、欧州アルプスでは、昨年の冬は比較的積雪量が少なかったうえに、この夏はすでに2回の熱波に襲われ、ツェルマットのふもとの村で7月に30℃の気温を観測した結果、60年前に観測を開始してから最も速いペースで氷河が融解していることが分かった。アルプス山脈では、通常の夏であれば3000-3500mの標高で氷点下となるが、今年の夏は熱波の影響で5184mまで氷点下になる標高が上がっている。世界各地の山岳における氷河の大部分が気候変動の影響で減少しているが、欧州アルプスでは、世界の気温上昇速度の2倍のペースである10年に0.3℃のペースで気温が上昇しており、欧州アルプスの氷河は他の地域の氷河と比べて規模が小さいこともあり、気候変動の影響を受けやすい。
原文
Reuters (8/6)
3.サハリン2事業:NYKのLNG輸送船が新運営会社の下で通常運航
ロシア政府は6月30日に、サハリン2事業について、現在の運営会社であるサハリンエネルギー社の権利義務を新たな運営管理会社に引き継がせる大統領令を発表し、同政府はこれを受けて、8月2日政令を発出し、3日以内に新たな運営会社を設立すると発表した。サハリンエネルギー社に定期用船されている日本郵船のLNG輸送船Grand Aniva号は、8月5日予定とおりユジノサハリンスク港に入港しLNGを積載する予定で、新運営体制になって初めて、LNGの輸送を行う船舶となる見込み。日本のエネルギー経済研究所のシニアアナリストによれば、今回の運営主体の変更によって、日本へのLNG輸送は当面影響がないとしている。日本は年間7432万トンのLNGを海外から輸入し、ロシアは第5位の輸入先となるが、サハリン2で生産される年間960万トンのLNGの過半数が日本に輸出されている。サハリン2事業には、日本の三井物産が12.5%、三菱商事が10%それぞれ出資しているが、既存の出資者は新たに設置された運営会社に持ち分を引き渡すことを承認する申請書を1か月以内にロシア政府に提出しなくてはならない。
原文
S&P Global (8/6)
4.ロッテルダム港とシンガポール港がGreen & Digital回廊の創設で連携
シンガポール港とロッテルダム港は、アジアー欧州間の航路をつなぐ世界で最大級の燃油供給港湾であるが、8月2日、シンガポール海事港湾庁とロッテルダム港湾局は、2027年までに、両港の間で、最初の持続可能な船舶の運航を実現するために、世界で最長のGreen & Digital回廊を設置することで覚書を取り交わした。大部分の外航海運の船舶は燃料として、舶用ガスオイルか、低硫黄の燃油を現在使用しているが、バイオガスを含むバイオ燃油なども最近急激に供給可能となってきており、さらに長期的には合成メタン・水素・水素を原料としたアンモニアやメタノールなどの代替燃料についても研究開発段階に入っている。これらの代替燃料は、それぞれ、コスト・安定供給能力・安全性・低エネルギー密度による貯蔵スペースの確保などの課題があるが、両港湾当局は、荷主・燃料供給事業者などと連携して、問題の解決を図っていく。
原文
ロッテルダム港 (8/6)
Webinar情報
1.Economist Impact: Sustainability Week: countdown to COP27
October 3-6th
https://events.economist.com/sustainability-week-countdown-to-cop/registration/?RefID=LBC_1A_Launch&utm_source=email&utm_medium=Eloqua&utm_campaign=SusWeekCOP28&utm_content=LBC_1A_Launch