国際海洋情報(2022年7月31日号)

1.国連総会:クリーンで健康で持続可能な環境を基本的な人権と認定

7月28日、国連総会は161か国の賛成で、クリーン・健康・持続可能な環境にアクセスできることは普遍的な人権であるとする決議を採択した。今回採択された決議は、昨年人権理事会で採択された決議とほぼ同様の内容で、加盟国・国際機関・企業に対して、すべての人類のために、健康な環境を保証するための努力を拡大することを求めるもの。国連事務総長は、今回の決議を歴史的な決定と評価したうえで、気候変動・生物多様性の保全・環境汚染といった3つの地球レベルでの危機に対して加盟国が共同で取り組む姿勢を示したと評価した。今回の決議によって、環境問題が社会的な弱者に対してより大きな影響を与える「環境問題の不公正」や「環境面での保護格差」などの問題が改善に向かい、社会的に脆弱な立場にある先住民などの人々に力を与える機会となることを期待するとともに、加盟国が既に約束している環境面・人権面での義務の着実な履行を加速することを期待すると述べた。

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UN (7/31)


2.米国Permian盆地で多量のメタンが石油関連施設から大気中に放出

Carbon Mapperはアリゾナ大学の研究者やNASAのジェット推進研究所と連携して、空中から最新のリモートセンシング技術を駆使して、大気中に大量に放出されているメタンやCO₂の量を計測しているが、米国のテキサス州とNew Mexico州の州境に位置する原油生産拠点のPermian 盆地で、533か所の施設から大量のメタン等が大気中に放出されていることを突き止めた。このうちの164か所以上はわずかに10社の石油関係企業に所有されている。メタンはCO₂に比べて、20年間で83倍の温室効果があるが、環境保護局はこれらの石油生産施設などから放出されているメタンガスを規制するのに失敗している。例えば、West Texas Gasの子会社が保有するMako圧縮ステーションでは、1時間に870kgのメタンを放出しているのが継続されたが、この量はガソリン輸送車7台分のガソリンを毎日燃焼した際に放出されるメタンの量と同量であるが、規制もされず不法行為ともされていない。

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AP (7/31)


3.米連邦海事委員会:外航海運改革法2022関連規則作業状況を説明

7月28日、米国連邦海事委員会(FMC)は外航海運改革法2022の実施状況について公開説明会を開催したところその概要は以下のとおり。①同法上、FMCが最も早く実施しなくてはならないのは、船舶の積載スペースに関する交渉を海運会社が正当な理由なく拒否した場合に関する規則の制定作業を開始・完了することである。②FMCは同法施行日からすぐに作業を開始し、規則案は近日中にパブコメにかけられる予定。③FMCは同法に定められている制定期限である12月までに規則を最終化する予定で、この規則を遵守しない海運会社は、FMCの聴聞を受けたうえで、同法の違反行為として罰則を受けることとなる。④同法がFMCに対して実施することを義務付けているその他の作業としては、海運会社が課する各種料金について、荷主等が不服を申し立てる(Charge Complaints)暫定的な手続規定の制定や、同法の中で、実施規則なしに直ちに発効する規定について告示することなどがあげられる。

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FMC (7/31)


4.CSIS:Infrastructure Investment and Jobs Actによる地域水素ハブの効果

表記報告書の概要は以下のとおり。①国際エネルギー機関が発表した「炭素中立シナリオ」によれば、低炭素の原料から生産された水素は、2050年までに世界の最終エネルギー消費の10%を占めることとなる。②Infrastructure Investment and Jobs Actは、新たな水素産業が直面する様々な課題を解決するため、米国内にRegional Clean Hydrogen Hubsを建設することを規定している。③同法では、水素1kgの生産のために2kg以下のCO₂しか排出しないことを、クリーンな水素とみなされるための条件とし、この条件を満たせば、化石燃料を原料とすることも許可される。④同法では、水素ハブが各地域の経済成長と投資のエンジンとなることも前提としており、地域においてより多くの労働者に水素産業で働く職業訓練を与え長期の職場を提供できる地域水素ハブに優先順位を与えることをエネルギー省に義務付けている。⑤水素ハブ計画によって、米国内で80億ドル(約1兆円)が投資され、GHGの排出削減に役立つだけでなく、世界のエネルギー産業の成長分野を米国がリードし、米国内で新たな雇用と経済的な便益をもたらす。

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CSIS (7/31)


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