国際海洋情報(2022年6月17日号)

1.銅の供給不足が炭素中立実現の隘路に

S&P Globalの報告書によれば、エネルギー転換の進展に従って、銅に対する需要は増えるが、供給が追い付かず、新たな銅鉱山が大幅に開発されない限り、2050年までの炭素中立の達成は難しい。具体的には、電気自動車のエンジンには従来の内燃機関に比べて、2.5倍の銅が必要となり、天然ガス・石炭火力発電に比べ、発電単位当たり、太陽光発電は2倍、洋上風力発電は5倍の銅が必要となる。また再生可能電力を送電するケーブル・トランジスター・インバーターにも銅は多く使用される。この結果、銅に対する需要量は2035年までにほぼ倍増し年間5000万トンに、2050年には5300万トンに拡大するが、IEAによれば新たな銅鉱山の開発を始めてから生産開始までに16年間かかり、既存の鉱山の更なる開発とリサイクルの促進だけでは、拡大する需要に応えることは困難としている。

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CNBC (6/17)


2.欧州議会:エネルギー節約率と再エネ比率について野心的な目標を承認

欧州委員会が昨年夏に発表した2030年までのエネルギー節約率は9%だったが、同委員会は、ロシアからのエネルギー依存から早急に脱却するため、13%に引き上げることを5月に提案していたが、欧州議会のエネルギー委員会は、節約率をさらに14.5%まで引き上げ、この目標を実現するため、加盟各国に法的拘束力のあるエネルギー節約を義務付ける案を7月13日承認した。このエネルギー節約目標を達成するためには、EU域内から排出されるGHGの1/3を排出する建物・住宅についてエネルギー効率を上げるための改修を進める必要がある。また欧州のエネルギーミクスに占める再生可能エネルギーのシェアは2020年の実績で22%だが、欧州委員会はこの比率を2030年までに40%に引き上げることを昨年提案し、5月には45%に引き上げることを再提案していたが、議会もこの引き上げに同意した。再生可能エネルギーの拡大の迅速化を図るためには、開発に関する許認可手続きの簡略・迅速化を図る必要があり、このための新たな規則を欧州委員会は別途提案している。

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Reuters (6/17)


3.VLSFO-HSFO価格差拡大によりスクラバー装備船の収益が倍以上に

2020年にIMOの規制が始まって以来、船主は硫黄分0.5%以下の規制適合油(VLSFO)を使うか、1船あたり、200万から300万ドルの投資をしてスクラバーを搭載して、従来の重油燃料(HSFO)の燃料を使用するという二つの選択肢があった。二つの燃料の間の価格差は、規制開始当時は300ドルを超える高水準にあったが、コロナロックダウンによって、価格差は100ドル以下に大きく減少し、コロナ復興後の石油価格上昇に伴い、格差は徐々に拡大し、ロシアのウクライナ侵攻後は、世界的に400ドル以上に拡大し、7月に入るとシンガポールでは500ドル以上を記録した。この結果、船主は既にスクラバーに対する投資を回収しただけでなく、船種にもよるが、スクラバー装備船は非装備船と比べて、1日当たり2倍以上の収益を上げている。

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American Shipper (6/17)


4.欧州委員会:天然ガスの使用の15%節減を提案

欧州委員会は、ロシアによる天然ガスの供給の完全停止に備え、冬季の天然ガスの供給を確保するため、8月から来年の3月まで、天然ガスの使用を15%さらに節減することを7月20日加盟国に提案した。EU諸国はこの提案に基づき、9月末までに各国の緊急計画を改定しなくてはならないが、事態がさらに悪化すれば、15%の節減目標を法律的に拘束力のある目標とすることも考えられると欧州委員会は発言している。EUはこの冬のエネルギーの確保に備えて、11月までにエネルギーの備蓄率を80%までに引き上げることを目標としているが、現段階の備蓄率は65%を割り込んでいる。国際エネルギー機関も、7月18日、欧州各国が協力して、天然ガスの安定供給に取り組むべきとして、①製造業者が契約上供給されるエネルギーを節約した場合は、節約分を市場で売却できるようなプラットフォームの創設や、②暫定的に石炭・石油発電所の稼働を増やし、原子力を含む再生可能エネルギーによる発電を増やすことによって、天然ガス発電を減らすなどの5つの具体的な対策を提案している。

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Euractiv (6/17)


国内ニュース

1.川崎汽船:Emirates Global Aluminium社と脱炭素化に向けた共同研究を開始
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7月14日、川崎汽船


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