国際海洋情報(2022年6月16日号)

1.IRENA:Global Hydrogen Trade to Meet the 1.5℃ Climate Goal

国際再生エネルギー機関(IRENA)が7月7日に発表した標記報告書の概要は以下のとおり。①現状では、世界で消費されるエネルギーの約74%は国際的な貿易によって供給されているが、地球温暖化を産業革命以前と比較して1.5℃以内に抑制するためにIRENAが作成したシナリオによれば、2050年の時点で、世界で消費される水素の量の約1/4は、国際的な貿易によって供給される。これは、現在天然ガスの全世界の総需要量の1/3が貿易に依存しているのに近い状況になる。②2050年で国際的に取引される水素のうち、55%は既存の天然ガスパイプラインを改修して輸送されるので輸送コストを大幅に削減できるが、この方法は欧州とラ米に限られる。③残りの45%の水素は海上輸送されるが、圧倒的にアンモニアとして輸送され、輸入先でも水素に再還元されずそのままアンモニアとして使用される。④水素の貿易は基本的に地域内で実施され、欧州は北アフリカと中東から輸入し、豪はアジア諸国に輸出する。⑤2050年の時点で全世界のアンモニアの生産量の約8割は、化学工業の原料または船舶・発電の燃料として使用され、水素キャリアとして使用されるのは約2割と見込まれる。

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IRENA (6/16)


2.IMB:2022年上半期の海賊等の事件数過去最低に

国際商工会議所国際海事局は、7月12日、2022年上半期に発生した海賊・武装強盗の事件数は58件となり、統計を取り始めた1994年以来最低になったと発表した。58件の内訳は、55件の海賊が乗船し、2件が襲撃未遂、1件がハイジャックであった。誘拐された船員はゼロであったものの、23人の船員が人質に取られ、5人の船員が脅迫を受けている。58件の事件のうち、12件がギニア湾で発生し、10件が海賊で2件が武装強盗であった。シンガポール海峡では、世界の全事件数の1/4を超える16件の事件が発生し、すべて賊に乗船され、6件については賊が武装していた。事件発生時の船舶の状況別では、32件が錨泊中、19件が運航中、7件が着岸中に発生した。

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IMB (6/16)


3.米下院:Clean Shipping Act 2022が提案される

7月12日、米西岸のLong Beach港とLos Angeles港をそれぞれ選挙区とする下院議員が2040年までの海運脱炭素化を達成するためのClean Shipping Act 2022を提案したところ法案の概要は以下のとおり。①気温上昇を1.5℃以内に抑制するために、船舶から排出されるCO₂のlifecycle排出量を、2024年実績比で、2027年までに20%、2030年までに45%、2035年までに80%、2040年までに100%削減する。②米国の港湾に着岸または錨泊する船舶は、2030年までに、港湾内におけるGHGと他の大気汚染物質の排出をゼロとする。

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gCaptain (6/16)


4.欧州における石炭火力発電所の緊急再稼働は気候変動政策に限定的な影響

7月13日、環境シンクタンクのEmberが、欧州における石炭火力発電所の緊急再稼働がEUの環境政策に与える影響を分析したところその概要は以下のとおり。冬を前にして、ロシアは欧州への天然ガスの供給をさらに削減する可能性が高く、こうした状況に備えて、独・蘭・仏・オーストリアは、天然ガスの備蓄を増やすために、今後6か月から18か月間、休止していた石炭火力発電所を再稼働させる可能性がある。①この結果、14GW分の石炭火力発電所が、65%の稼働率で2023年末まで稼働すると、EU全体が消費する電力の1週間分に当たる60TWh発電することとなる。②CO₂排出量でみると、2023年1年間で3000万トンのCO₂が追加で排出されることとなるが、2021年におけるEU全体の排出量の1.3%にすぎない。③以上の石炭火力発電所の再稼働はあくまで臨時のもので、上記4か国は遅くとも2030年までに石炭火力発電所を全廃するという目標は変更していない。

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Ember (6/16)


国内ニュース

1.日本郵船:アンモニア燃料タグボートの基本設計承認(AiP)を取得
原文

7月12日、日本郵船


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