国際海洋情報(2022年6月15日号)

1.独議会:露の天然ガス供給削減に対応して休止中の石炭火力発電の再開を承認

独の議会両院は7月8日、露による天然ガスの供給削減に伴うエネルギー不足が発生する場合に備えて、運転を停止していた石炭火力発電所の運転を再開することを承認する緊急法案を承認した。この緊急措置とともに、各州の面積に応じて一定割合以上の風力発電施設の建設を許可することを義務づけることを含む再生可能エネルギーによる発電施設の建設拡大を各州政府に義務付けた。ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前には、独政府は2030年までに石炭火力発電所を段階的に廃止することを計画していたが、今回の措置によって、天然ガスの使用量を当面節減し、冬季が始まる前に、幅広い産業の生産維持のために必要な天然ガスの備蓄を進めることが可能となる。この議会の決定を、ドイツ工業協会も歓迎している。

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The Guardian (6/15)


2.欧州議会:天然ガスと原子力に対する投資を持続可能と認定

欧州議会は7月6日、天然ガスと原子力をEU Taxonomy上、持続可能な投資先に条件付きで2023年から認めるという欧州委員会の提案に反対する決議案を否決し、欧州委員会の原案を承認した。欧州委員会の提案は、欧州理事会の承認も得る必要があるが、欧州理事会が欧州委員会の提案を拒否するためには、27か国中20か国以上が賛成する必要があり、理事会が反対決議する可能性は極めて低い。天然ガスは化石燃料ではあるが、石炭に比べて、GHGの排出量は少ないので、旧東欧諸国は、石炭火力から転換するための暫定的な代替燃料として、持続可能なエネルギーと認めるべきと主張していた。原子力はゼロ炭素燃料だが、核燃料廃棄物の処理を巡って、独等が持続可能燃料に認定することに反対していた。ルクセンブルグとオーストリアも原子力発電には反対で、今回の決定に対して、欧州裁判所で争うと言明している。環境団体も一斉に今回の欧州議会の決定に反発している。

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Reuters (6/15)


3.IRENA:China’s route to carbon neutrality

7月8日発表された標記報告書における国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の中国政府に対する主たる提言の概要は以下のとおり。①IRENAのLong-Term Energy Scenarios Networkを活用して、各国の経験やベストプラクティスを学んで、中央政府と地方政府が2060年炭素中立を達成するための長期戦略を策定する。②エネルギーと資源の効率性の向上に優先的に取り組む。③中国の排出権取引制度を徐々に強化することにより、石炭火力発電所の段階的な撤廃を進める。④洋上風力発電などの新たな再エネ技術をはじめ、再生可能エネルギーによる発電を促進する。⑤再生可能エネルギー発電の拡大に対応するため、既存の電力インフラの更新・向上を図る。⑥最終エネルギー消費の電化を進める。

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IRENA (6/15)


4.再生可能エネルギーへの迅速な転換は国家・経済安全保障上不可欠

7月12日、シドニーで開催されたエネルギー関連の大臣級の国際会議で、豪のエネルギー大臣は、欧州のロシア産天然ガス・石油への依存とロシアの戦略について触れ、再生可能エネルギーによる強靭なclean energy supply chainsを構築することにより、外国の干渉を受けることが無くなると発言した。米のエネルギー大臣も、再生可能エネルギーへの転換は国家安全保障上の問題であり、バイデン政権は2035年までに再生可能エネルギーの拡大によって米国内の発電の炭素中立化を実現すると語った。IEAの事務局長は、ロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギー価格が高騰するとともに、供給が不足するといった重大な前例のない世界的なエネルギー危機に、世界は既に襲われているが、今年の冬は、ロシアが天然ガスの供給を政治的に利用しようとするため、北半球にとっては厳しい冬になると警告した。さらに、中国による太陽光パネルの製造の独占は、将来的に世界的に大きなリスクとなるとも指摘した。

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ABC (6/15)


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