国際海洋情報(2022年6月14日号)

1.マースク:国際海運会議所の理事会メンバーを辞退

マースクはデンマーク船主協会を代表して、国際海運会議所の理事会メンバーを過去約10年間務めてきたが、6月22日に開催されたICSの総会で、理事会メンバーをやめることを表明した。同社は、理事会メンバーから外れる理由について直接的にはコメントしていないが、同社は2040年までに海運脱炭素化を達成するために、First Moverとして活躍してきており、ICSのこれまでの海運脱炭素化に対する取り組みに不満を持ったものと考えられ、今後は同社が主導権を握るコンテナ船社の団体である世界海運評議会(WSC)の活動に専念すると表明した。

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Reuters (6/14)


2.国際エネルギー機関:今後数年間は天然ガス需要の伸びは低調に

国際エネルギー機関が7月5日に発表した「天然ガス市場報告書」の概要は以下のとおり。①ロシア政府が欧州に対する天然ガスの供給をさらに削減すると発表したため、この冬の天然ガスの供給について懸念が高まっているものの、昨今の天然ガス価格の記録的な高騰によって、需要は抑制され、一部の需要家は天然ガスから石油・石炭の使用に切り替えている。②この結果、2021年から2025年までの天然ガス需要量の増加は、これまでの予測の半分以下の140 billion cubic metersにとどまる見込み。③このような天然ガス需要の下方修正は、経済成長見通しが弱くなったことと、石油・石炭から天然ガスへの転換の見通しが下がったためであり、エネルギー効率の向上や天然ガスから再生可能エネルギーへの転換といった前向き要因は、需要下方修正の1/5以下にとどまっている。④地域的にみると、アジア・太平洋地域が2025年までの需要増の半分を占め、産業別には工業部門が需要増の60%を占める見込み。

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IEA (6/14)


3.英国政府:Energy Security Billを議会に提出

7月6日、英国政府は議会に標記法案を提出したところその概要は以下のとおり。①英国政府は2030年までに、新たなエネルギーへの転換のために民間から1000億ポンド(16.4兆円)の投資を呼び込み、48万人の新規雇用を創出するために、ジョンソン首相が10項目の計画とNet Zero Strategyを発表し、政府としてもBritish Energy Security Strategyを既に作成しているが、今回提出した法案はその中の重要政策を具体化するもの。②炭素回収利用貯蔵(CCUS)と水素に関してビジネスモデルを示し、長期の収入保証をすることによって、民間投資を呼び込む。③CO₂を輸送・貯蔵するためのネットワークを展開するために必要な経済規制と免許制度の枠組みを整備する。④2025年までに水素を利用した地域暖房の試験事業を大きな村の規模で実施し、水素が暖房に関連する脱炭素化に果たす役割に関する戦略的な決定を2026年に行うために必要なデータを収集する。

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英国政府 (6/14)


4.米連邦航空局:大型航空機が排出するGHG削減のための新規則を提案

米連邦航空局は、今後型式認証され、或いは2028年1月1日以降に生産される亜音速のジェット・ターボプロップエンジンを使用する大型航空機が排出するGHGを削減するための新規則を、6月15日に発表した。新たな規則が適用されるのは、Boeing 777-Xや787 Dreamliner、Airbus A330-neoなどが想定されている。
米国内の航空輸送から排出されるCO₂は、国内の交通機関から排出される総CO₂の10%、全米で排出される総CO₂(パンデミック以前)の約3%を占めている。新規則は2050年までに米国内の航空輸送を炭素中立化するという目的に従って作成されたUS Aviation Climate Action Planの一環として作成された。バイデン政権になってから、昨年には、Sustainable Aviation Fuels Grand Challengeも発表され、航空機の燃費効率の向上、航空機から排出される騒音と排気の減少などの研究開発に、米国政府は1億ドル(約137億円)の支援を行っている。

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FAA (6/14)


国内情報

1.日本海事協会:「代替燃料船ガイドライン(第2.0版)」を公表
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7月8日、日本海事協会


2.日本郵船:省エネ装置の最適な組み合わせで既存船のGHG排出削減へ
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7月8日、日本郵船


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