国際海洋情報(2022年6月10日号)

1.世界の大手海運会社の中で脱炭素・炭素半減宣言をしているのは35%のみ

Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shippingが6月30日に発表した分析の概要は以下のとおり。①世界の大手海運会社94社中、2050年までの脱炭素化またはIMOの目標(対2008年実績比で2050年までにCO₂排出を半減)の実施を明確に宣言しているのは33社(35%)にとどまっている。②これを世界52か国の収入が上位100社と比較すると、自動車会社では66%、石油・ガス会社は56%、運輸・観光会社の45%が、CO₂削減目標を表明しているところから、海運会社は見劣りがする。③エネルギー転換のためには情報の公開が重要で、船主や船舶の運航会社は、監督官庁に対してだけではなく、顧客(荷主)・投資家・保険事業者・消費者・従業員の期待に応えて、CO₂削減目標と具体的な対策を開示する必要がある。④監督官庁も、海運事業者に対して、各事業者の活動が気候変動に与える影響について、第3者機関の認証を得た情報の開示義務を強化する必要がある。⑤このような情報公開義務は、国際的な統一基準に従って課されるべきで、複数の様式で報告を求めることによって、海運事業者の負担を増すべきでない。

原文

Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping (6/10)


2.ウクライナ・マリウポリ港に停泊中の外国籍商船2隻が接収される

マウウポリは5月にロシアによって占領されたが、自称「ドネツク人民共和国」の外務省は、同港に停泊中の2隻の船舶を管理する2つの海運会社に対して、2隻の商船を補償なしに接収して国有化したと6月30日通告した。1隻はイベリア籍のばら積み船で、2月21日に鉄鋼製品を積載するために同港に入港したが、3月20日にロケット砲で攻撃され、船橋が大きく損傷していた。19人の乗組員はロシア軍に拉致され、ドネツクに強制連行されたが、1か月後に開放された。もう1隻はパナマ籍船が接収された。IMOによれば、80隻を超える外国の商船が、ウクライナの港湾に依然として足止めされているが、その一部はロシア軍の支配下の港に停泊している。ウクライナ外務省によれば、ドネツクのロシア占領軍は、マウリポリで接収した船舶で、国有船隊を形成すると宣言している。

原文

Reuters (6/10)


3.北極海の気温が地球の平均気温の4倍以上の速度で上昇

米国の研究者等がGeophysical Research Lettersに発表した最新の論文によれば、北極海の温暖化増幅(Arctic amplification)の指標は、1986年と1999年に急上昇しているが、国連の政府間気候変動パネルの評価報告書が使用しているCMIP6という39の気候変動モデルのうち、4つのモデルのみ1986年の指標の急上昇を説明できたが、1999年の指標の急上昇を説明できるモデルはない。この結果、第1回目の急上昇は北極圏の大気中のCO₂や他の大気汚染物質の濃度が高まったことで説明できるが、2回目の急上昇の原因は明確でなく、おそらく、北極圏に流入する大気と海水の温度が上昇し、海氷の融解と海水の蒸発の循環サイクルが変化したものと考えられる。北極圏の気温の上昇により、北極圏と熱帯の間の気温の差が小さくなれば、北極圏の温暖化増幅の指標の増加は落ち着くものと考えられる。

原文

Phys.org (6/10)


4.ESPO/FEPORT:ターミナル・バースごとの 陸上電源設置基準の適用を要求

陸上電源供給(OPS)施設の整備は、着岸中の船舶から排出されるGHGの削減のために有効であり、欧州港湾協会(ESPO)と欧州民間港湾ターミナル連合(FEPORT)は意欲的なOPSの整備が、GHGの削減のみならず、着岸中の船舶からNOx/SOx/微細粒子などの有害物質が排出されるのを削減するために必要であると認識している。欧州委員会が提案している代替燃料インフラ規則(AFIR)の9条によれば、港湾単位で、一定の水準以上のコンテナ船または旅客船の寄港があれば、港湾全体にOPSを整備しなくてはいけないことになっているが、OPSを重点的に整備するのと比べて、大幅な過剰投資が必要となり、排気の減少に対する投資効率の低下を招く。従って、両団体は、港湾単位ではなく、バースやターミナル毎に、一定基準を超えた場所にOPSを整備することを提案する。この提案によって、GHGを含む有害物質の排出を抑制しながら、経済的にも環境的にも効率的な投資が可能となる。

原文

ESPO (6/10)


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