国際海洋情報(2022年6月9日号)

1.世界海運評議会:EU ETSのコスト負担者を法定することに反対

コンテナ船社の業界団体である世界海運評議会(WSC)は、EU ETSの改正に関する欧州議会の最終交渉方針において、排出権を購入する経済的な負担を用船者が負うことを規定する条項を用船契約に入れることを義務付ける案について反対し、EU ETSに関するコストは、船主と用船者の間の交渉で決めるべきと表明し、今後開催される予定の欧州委員会・欧州議会・欧州理事会の3者協議において、見直されるべきであると表明した。WSCのCEOは「ゼロエミッション船舶や燃料の導入に必要なコストは、船舶の運航会社・用船者・船主のすべてが負担すべきであり、用船者に負担を義務付けることをEUの規則によって強制することは、市場原則を歪曲し、GHG削減の速度を鈍化させる。」と警告している。

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World Shipping Council (6/9)


2.EUエネルギー担当閣僚会議:環境政策のパッケージに合意

EUの27加盟国のエネルギー担当閣僚は、16時間を超える深夜の交渉を経て、2030年までの気候変動対策のパッケージについて合意したところその概要は以下のとおり。①CO₂を排出する新車の販売を2035年から禁止する。(但し、2026年に欧州委員会はハイブリッド車と炭素中立燃料を使用する自動車の扱いについて再評価)②EU ETSを2027年から交通と建物にも適用する。但し、この結果、負担が増大する低所得者対策として、2027年から2032年までに負担増をカバーするために、590億ユーロ(約8.5兆円)の基金を創設する。③排出権取引制度を強化して、2030年までに削減するCO₂の比率を61%に引き上げるとともに、同制度を海運にも拡大適用する。

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Reuters (6/9)


3.IACS:Safe Decarbonization Panelを設置

国際船級協会連合(IACS)は今週(6/27の週)、第85回理事会を開催して、海運の脱炭素化が迅速かつ安全に実施されることを担保し、新たな代替燃料など脱炭素化のための先行投資を技術的に支援するため「安全脱炭素化パネル(SDP)」を設置することを決定した。SDPは先行している脱炭素化燃料と関連技術について検討するため、アンモニア・水素・CCS・電池に関する4つのプロジェクトチームを早急に開催する予定で、さらに、IMOにおけるメチル・エチルアルコールに関する作業状況も評価したうえで、必要に応じて作業項目に加え、他の代替燃料についても順次検討を行っていく予定。以上のSDPの作業については、燃料製造事業者・技術提供事業者・船主・造船事業者・海上保険事業者と、戦略面・運用面・技術面で多層的に連携していく必要があるため、関係者間の制度的協議システムを構築していく。

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IACS (6/9)


4.記録的な海洋性熱波が地中海を襲う

6月18日に、スペインとフランスの陸上の一部で記録的な高温が観測された翌日、スペインのバレアレス諸島の沖の海上ブイで、海水温が29度を記録した。海洋はGHGによってとらわれた大気中の熱量の93%を、1970年代から吸収してきており、地球温暖化を和らげるスポンジの役割を果たしており、海水温の上昇は地球温暖化を示す重要なサインとして、近年着目されている。海洋は大気中の二酸化炭素を吸収する役割も果たしているが、1990年代からにCO₂を吸収する能力が鈍化を始めている。海水温が異常に上昇した状況が、5日以上継続すると海洋性熱波と呼ばれるが、熱波が発生すると海中の海水の垂直方向の循環が変化するため、海洋が大気熱や二酸化炭素を吸収する能力に影響を与えるとともに、海中の栄養分の循環が変化することによって、サンゴ礁の白化、有害な藻類の発生など海洋生物の生態系にも影響を与える。

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gCaptain (6/9)


国内情報

1.商船三井:トタルエナジーズ・マリン・フュエルズと商船三井がシンガポールで初となる自動車船に対するバイオディーゼル燃料供給を実施
原文

6月29日、商船三井


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