国際海洋情報(2022年6月8日号)

1.米バイデン政権:石油ガス開発のためのリース権の入札実施へ

バイデン政権は、今週(6/27の週)西部の7州で、連邦政府が管理する土地のリース権の実質的に最初となる入札を実施する予定だが、石油ガス事業者に対して新たな規則が適用される。しかし、石油業界はより多くの土地がより少ない規制の下に入札の対象となることを期待し、環境団体は、リース権入札の実施自体に反対しているので、今回の入札の実施は誰からも歓迎されていない。入札の実施を担当する内務省は、当初予定していた入札予定面積を20%縮小したうえで、石油ガス開発事業者が連邦政府に払う使用料率を12.5%から18.75%に引き上げると4月に発表している。リース権を落札してから、実際の生産開始まで平均して4年以上必要とされることから、今回の入札によって、米国内の石油生産量がすぐに増加するわけではないが、現在多くの米国民がガソリン価格の急激な上昇に苦しんでいるので、入札実施に対する国民の受け止め方は、政治的に重要な意味を持つ。

原文

The Hill (6/8)


2.欧州理事会:再エネとエネルギー効率化についてさらなる高い目標に合意

6月27日、欧州理事会は、EUのFit for 55パッケージの、エネルギー転換に関する再生可能エネルギー指令とエネルギー効率化指令の欧州委員会案に対する、欧州理事会としての対処方針案に合意したところその概要は以下のとおり。①2030年までに全エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率を現在の目標の32%から40%に引き上げる。これに伴い加盟国は現在の国家エネルギー気候変動対策計画(NECPs)を2023/2024年 に改訂し、各国の再エネ達成目標を引き上げる必要がある。②交通分野に対する個別目標については、加盟国は以下の二つの目標のうち一つを選択する必要。③2020年までに単位当たりGHG排出量を13%削減する。(交通分野全体で目標を達成すれば、例えば、海運について別の目標でも構わない。)④交通分野の最終エネルギー消費量を2030年までに29%削減する。⑤改良型のバイオ燃料が交通分野で使用される持続可能エネルギーに占める割合を、2030年までに4.4%に引き上げる。⑥各国の交通分野における最終エネルギー消費量の算定にあたって、海運分野の最終エネルギー消費量を含める。

原文

欧州理事会 (6/8)


3.代替燃料の安全性の比較:アンモニアが最も危険で実用化の前に対策が必要

ロイズ船級協会・マースク・OCIMFなど海運会社・石油メジャーなどが参加して設立された業界ベースの海運の安全性を検討する団体であるTogether in Safetyは今週(6月27日の週)、代替燃料としてのLNG・水素・アンモニア・メタノールについて、船舶運航時に安全運航能力に問題が生じた時、衝突したとき、燃料供給時など細かいケースごとに、それぞれの代替燃料が持つリスクを分析した報告書を発表した。大規模に実用化される前に改善が必要な大きなリスクが確認されたのは、アンモニアだけで、様々な理由で、燃料が漏出した際の安全対策が必要であることが指摘されている。他の代替燃料についても様々なリスクが指摘しているが、いずれも許容範囲のものと位置付けられている。

原文

Together in Safety (6/8)


4.英国気候変動委員会:2021年気候変動対策進捗状況報告書(海運部分)

標記報告書の海運に関する部分の概要は以下のとおり。①海運については、英国政府は内航海運と外航海運の英国分担分のCO₂排気量を対2019年実績比で、2035年までに28%削減することを目標としている。気候変動委員会(CCC)の分析では、パンデミックが発生する前の10年間は年間約2%のペースで排気量が減少し、パンデミックが発生した2020年には16%減少したものの、2021年には上昇に転じたものの、2019年実績に比べると依然として13%低い水準となっているが、低炭素燃料への転換や動力の電化は全く進んでいない。②CCCは英国政府に対し、国内で商業規模のclean maritime clusterを創生するとともに、2023年にIMOにおいて議論される世界ベースでの海運脱炭素化議論において英国が主導権を発揮するよう求めている。

原文

edie (6/8)


国内情報

1.川崎重工:米国の水電解装置開発会社エレクトリック・ハイドロジェン社へ出資
原文

6月23日、川崎重工


Webinar情報