国際海洋情報(2022年6月7日号)

1.BIMCO:排出権取引に係る経済的分担に関する規定を定期用船契約に盛り込む

6月上旬に、欧州議会は海運を排出権取引制度の対象とし、EU域内の海運活動については100%のCO₂排出量を、EU とEU域外国との間の海運活動については、当面排出量の50%を取引の対象にしつつ、2027年からは100%を対象とすることが承認された。これに対応して、BIMCOは、排出権取得に関する費用に関し、船主と用船者の間で分担する方法を定期用船契約に規定するモデル条項を新たに発表した。このモデル条項では定期用船契約に従い、船舶燃料を購入・手当する当事者が、排出権を取得しそのコストを負担すると規定され、船主は船舶から排出されるCO₂の量をモニターし、用船者の負担分を計算するために必要な情報を用船者に提供する義務を負うことも定められている。用船者は毎月定められた負担分を船主に払うことや、船主の責任で用船期間中に船舶が使用できなくなった場合(off-hire)の負担金額の調整や、用船者が負担金を期限が到来しても支払わなかった場合の規定が定められている。

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Ship & Bunker (6/7)


2.欧州議会交通観光委員会:2050年までに航空燃料の85%を持続可能に

6月27日、欧州議会交通観光委員会は、航空のReFuelEU規則に関する欧州議会の交渉方針案を可決したところその概要は以下のとおり。①EUの2050年脱炭素目標を達成するために、航空輸送事業者やEU域内の空港における持続可能な航空燃料(SAF)の使用量を増加させ、航空輸送からのCO₂排出量削減を目的とする。②SAFの定義を改正し、SAFに工業生産の過程で排出されるガスや排気ガスから製造される再生炭素燃料を新たに含めるとともに、2034年まで時限的に動物由来の油脂や抽出物を含める一方で、穀物やパーム油を原料とするバイオ燃料については持続可能性が無いとして、SAFの対象から外すこととした。③また再生可能電力と水素もSAFの一部として認定し、EU域内の空港管理者に対し、航空事業者が、水素供給や電気の充電などを含む持続可能燃料が使用できるよう促進することを求めている。

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欧州議会 (6/7)


3.BP:Statistical Review of World Energy 2022

標記報告書の概要は以下のとおり。①世界の1次エネルギー消費量は2021年には対前年比5.8%増加して、コロナ以前の2019年の水準を1.3%超えた。②1次エネルギー消費量に占める化石燃料の割合は、5年前は85%だったが、昨年は82%まで低下した。③再生可能1次エネルギー(バイオ燃料を含み水力は除く)は、対前年比15%増加し、全エネルギーの中で最も高い伸びを記録した。④太陽光発電と風力発電を併せると昨年は発電量が226GW増加し、2020年に次いで過去2番目の増加となった。⑤昨年新設された全世界の太陽光発電施設の36%と風力発電施設の40%は中国国内で建設された。⑥全世界の発電量は昨年対前年比6.2%増加し、太陽光と風力を併せた発電量が、全発電量に占めるシェアは、史上初めて10%を超えて10.2%となった。⑦石炭火力発電はシェアを増やして36%となりトップの座を守る一方、天然ガスによる発電量は対前年比2.6%増加したものの、全発電量に占めるシェアは22.9%に減少した。

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BP (6/7)


4.交通と環境:海運のE燃料の利用を進めても商品の価格上昇はわずか

環境NGOの「交通と環境」が6月28日発表した船舶燃料の脱炭素化が海上輸送される商品の価格上昇に与える影響分析の概要は以下のとおり。①本分析は、FuelEU Maritimeが目標とする輸送単位当たりGHG排出量の削減目標を6%から14%に引き上げ、舶用燃料の6%を再生可能水素派生のE燃料とし、EU排出権取引制度(ETS)でカバーされるCO₂の範囲を燃焼時に排出されるもの(tank-to-wake)から、燃料生産時から燃焼まで(well-to-wake)に拡大した場合に、中国からベルギーまで平均的なコンテナ船で輸送される商品コストの上昇を計算した。②この結果、運動靴1足あたり0.003ユーロ、TV1台あたり0.03ユーロ、冷蔵庫1台当たり0.27ユーロの価格上昇しかもたらさないことが分かった。③1TEUあたりの輸送コストの上昇幅は、8.7-13.4ユーロで、現状の運賃が1TEUあたり、4200-6200ユーロであることを考えると、運賃上昇効果はわずか0.3%にすぎないことがわかる。

原文

Transport & Environment (6/7)


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