国際海洋情報(2022年6月6日号)

1.世界の洋上風力発電に対する資本的支出が2030年までに2倍以上に

Rystad Energyによれば、洋上風力発電に対する世界の資本的支出(CAPEX)は、2021年実績の460億ドルから、2030年には2倍以上の1020億ドル(約13.8兆円)までに増加する予定だが、地域的にみると、欧州が150億ドルから530億ドルに、米国が33億ドルから150億ドルに増加する一方で、中国はこれまで積極的な投資を続けてきたが、2021年に、全量固定価格買取制度が終了する一方で、規模の経済により発電量当たりの投資コストが低下するため、CAPEXは250億ドルから77億ドルに減少する見込みで、欧州の優位性が高まる見込み。こうした投資の結果、発電量でみると、全世界で洋上風力発電量は2030年までに265GWに達する見込み。CAPEXの内訳で見ると、過半数がタービンと基礎の製造と設置に投資される見込み。

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Rystad Energy (6/6)


2.欧州議会:気候変動対策に関する3つの重要法案を採択

6月22日、欧州議会総会は2030年までにGHGの排出量を55%削減するための3つの基本法案を採択したところその概要は以下のとおり。①排出権取引制度(ETS)の範囲を建物と陸上交通に拡大するが、住宅については2029年まで適用しない。②2030年までのGHG削減目標を61%から63%に引き上げる。③炭素国境調整措置(CBAM)の段階的な導入のタイミングを早めるとともに、ETSの無料排出枠を2027年から2032年までに段階的に廃止する。④CBAMの対象範囲を有機化学物質・プラスチック・水素・アンモニアに拡大し、間接的な排気も含める。⑤CBAMから得られた収入と同額を、後発発展途上国におけるエネルギー転換支援のために支出する。⑥エネルギー転換に伴って、影響を受ける人々を救済するために、社会気候基金を創設する。⑦自動車燃料費や暖房燃料費の高騰対策として、エネルギー課税を減額するなど、直接的な家計支援対策を時限的に実施する。⑧建物のエネルギー効率向上のための改修・再生可能エネルギー・公共交通機関利用促進・car-pooling/sharing・自転車の活用などに対し、助成・無利子融資などで支援する。

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欧州議会 (6/6)


3.バイデン政権:絶滅危惧種に関する生息域の定義をオバマ時代に戻す

連邦政府が保護する対象となる絶滅危惧地の生息地の範囲を、トランプ政権は、「現時点で当該生物が生息する可能性がある範囲」に限定し、オバマ政権時代に認められていた「将来的に当該生物が生息可能な地域」を除外したが、6月23日、米国魚類野生生物局はトランプ政権下で行われた生息地の範囲の限定的な解釈は1973年の絶滅危惧種法(Endangered Spices Act:ESA)の目的に反するとして、オバマ政権時代の広い範囲に戻すと発表した。バイデン政権は、議会において民主党が過半数をかろうじて維持している状況にかんがみ、環境問題、特にESAに関しては、立法措置ではなく、トランプ政権時代の規制緩和をオバマ政権時代の環境保護の立場に立った規制に行政的に戻す手法を多用している。バイデン政権は、6月の初旬にESAの保護対象を実験動物に拡大する新たな規則を提案している。

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The Hill (6/6)


4.ICS Shaping the Future of Shipping:Clean Energy Maritime Hubの設立で合意

国際海運会議所(ICS)主催の6月23日ロンドンで開催された2022 Shaping the Future of Shippingには、エネルギー企業・船主・港湾管理者・金融機関・技術開発企業などの企業から100人以上のCEOが参加し、さらに国際的な開発金融機関と、各国政府のエネルギー担当大臣が出席し、以下の事項について合意した。①海運のための将来の代替燃料の問題に取り組む官民連携の業界横断的なプラットフォームであるClean Energy Marine Hubを創設。②2030年までにゼロエミッション船舶の運航を実現するため、世界単一の市場原理に戻づく措置(Market Based Measures:MBMs)を早急に導入するとともに、業界横断的なbest practicesの共有が必要。③世界29か国のエネルギー担当大臣が出席して9月に開催される予定のClean Energy閣僚会合の開催に合わせてClean Energy Maritime Hubを創設するためのtaskforceを立ち上げる。

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ICS (6/6)


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