国際海洋情報(2022年6月3日号)

1.天然ガスの価格高騰により石炭火力の使用が増える

Clean-dark価格とは、石炭を火力として使用した場合の、石炭価格とCO₂の排出量に見合う排出権の価格の合計コストを言い、clean-spark価格とは、天然ガスを火力として使用した時の、天然ガス価格とCO₂排出量に見合う排出権価格の合計コストを言うが、過去半年間このclean-dark価格とclean-sparkの価格差は狭まってきたものの、最近の天然ガスの価格高騰もあり、依然として、石炭火力の使用が優先されている。世界の石炭市場は供給が需要に追い付かない状況で、石炭価格は高止まりしているものの、天然ガスについても、ロシアがNord Stream 1の修理を理由に欧州への供給を大幅に削減すると発表して以来、価格が高騰していることから、2023年においても石炭が価格的には最も有利な燃料となり続け、石炭の使用量も高止まりするとRystad Energyは分析している。

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Reuters (6/3)


2.バイデン大統領が外航海運改革法に署名し成立

6月16日、バイデン大統領は議会両院で承認された「外航海運改革法」に署名し、法律として成立した。両院の提案者や農業・小売・製造業の代表者を前にして、大統領は、今回の改革法は24年ぶりの海運法の大改正であり、この法律によって、外航海運事業者が、米国の家庭・農家・酪農家・事業者に対し、優越な地位を乱用することを防止できると語った。9大海運会社が3つのコンソーシアムを結成して、世界の海運活動の大部分を支配し、特にパンデミックの期間中、運賃が最大で10倍に引き上げられ、海運会社が2021年だけでも対前年比7倍の1900億ドル(約26兆円)の利益を上げ、アメリカの消費者物価高騰の一因となったこと、さらに外国の海運会社は米国の輸出品をアジア市場に輸送することを拒否したことを大統領は2022年に入ってから繰り返し批判していた。コンテナ海運会社の業界団体である世界海運理事会は、海運会社だけを悪者にすることは、米国の物流網の根本的な問題点を明らかにし解決することを阻害しかねないと反論している。

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The Maritime Executive (6/3)


3.経産省がEUにサハリン事業を船舶保険の制裁対象から除外するように要請

6月3日、EUは対ロシア第6次制裁の一環として、ロシアからの原油の輸入を6か月以内に、その他の石油製品を8か月以内に停止するとともに、ロシア産原油・石油製品の第3国への海上輸送に対する金融・保険業務も6か月以内に停止すると発表した。一方、日本はサハリン1と2の事業から、出資持ち分に応じて、ロシア産原油を受け取り、市場で売却してきたが、日本の岸田首相は、5月8日のG7首脳会合の合意を受け、日本政府もロシアからの石油の輸入を原則として禁止すると5月9日発表した。これを受けて、日本の石油精製事業者は、4月を最後にロシア産原油・石油製品の輸入を停止しているが、一方で、6月22日、経産省は、EUに対して、日本のサハリン事業からの引き取り分について、ロシア制裁の対象から外して、これまでとおり、欧州企業が金融・保険業務の提供を継続するよう要請していることを認めた。

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S&P Global (6/3)


4.IEA:World Energy Investment Report 2022

標記報告書の概要は以下のとおり。①2022年における世界のエネルギー投資は、再生可能エネルギー発電・送電網・蓄電施設などのクリーンエネルギーへの投資を中心に、対前年比8%増の、2.4兆ドル(約324兆円)となる見込み。②具体的には、再生可能発電・送電網・エネルギー効率化の3分野で投資の伸びが大きく、クリーンエネルギーについては、西側先進国と中国における投資の伸びが大きい。③また一部の地域では、エネルギー安全保障とエネルギーの高騰から、石炭を中心に、化石燃料生産への投資も伸びる見込み。④クリーンエネルギーへの投資は、パリ協定合意後の5年間は平均して年率2%の伸びにとどまっていたが、2020年以降投資拡大のペースが加速化し、年平均12%のペースで拡大している。⑤再生可能発電・送電網・蓄電施設の3部門に対する投資が、発電部門全体への投資の8割に達している。⑥特に太陽光発電・蓄電池・電気自動車への投資は、2050年炭素中立達成に必要なペースで順調に伸びている。

原文

IEA (6/3)


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