国際海洋情報(2022年6月2日号)

1.COP 27準備会合:先進国による後進国に対する補償について物別れ

昨年のCOP 26においては、先進国が本年中に後進国に対する補償制度を立ち上げることを前提に、小島嶼国と後進国はCO₂排出の削減を優先的に進めることに合意したが、独で2週間にわたって開催されたCOP 27の準備会合においては、後進国において気候変動によってもたらされる損害について、先進国が補償する制度について、loss and damageとしてCOP 27の議題にすることさえ、米国とEU諸国の反対により合意できなかった。気候変動によって、途上国は先進国より大きな被害を受ける一方で、先進国より資金力が弱く、そもそも気候変動は、先進国が経済成長の過程でCO₂を排出したことによって発生しており、米国とEU諸国は途上国に対して保証するのは当然と途上国は考える一方で、米国とEU諸国は、ひとたび過去のCO₂の排出に関する責任を認めれば、今後何十年・何百年も責任を負うことになるのではないかと懸念し反対している。先進国から途上国への補償については、COP 27の正規の議題にはならないものの、途上国が主張を続けるのは確実な見通し。

原文

BBC (6/2)


2.欧州熱波:仏とスペインで5月は今世紀最高気温を記録

5月は、スペインと仏では、過去100年間で最高の気温を記録し、いくつかの場所では、平年より約10℃高い気温が続いている。さらに先週(6月6日の週)から、イベリア半島と仏で季節外れの異常な高温が始まり、日に日に気温が上昇し、15日には南スペインで43℃、16日には仏のプロヴァンスでも40℃を超えた。この熱波は、今週末(18日、19日)徐々に北部フランスから、ベネルクス・独・ポーランドへと移動していく見込み。米国南部もここ数日、記録的な高温を記録しているが、来週(6月20日の週)は、ジョージア・アラバマ・フロリダなどで史上最高気温を記録する可能性がある。

原文

The Guardian (6/2)


3.ESG投資に関する異なる情報公開基準の統一化の必要性

ESG投資の名のもとに3兆ドル(約405兆円)が投資されているが、見せかけにすぎないgreenwashingを防止するために、これらの投資に関する情報公開基準を、現在、欧州委員会・米国の証券取引委員会・国際持続可能性基準委員会(ISSB)の3者が別々に作成し、意見照会をかけている状況にある。投資家や企業から見れば、企業間の比較を容易とし、規制機関への報告コストを削減するために、世界的に統一された強制力を持った情報公開基準が作成されることが望ましいが、3規制機関の規制作成の速さや政策目的が異なるため、複数の基準が企業に適用され、企業の負担が高まるのではないかという懸念が起こっている。約7000の世界の企業が参加するWe Mean Business coalitionは3規制機関に対して、規制案を本年年末までに最終化する前に、基準で使用される用語や概念の統一化を図るように要請している。

原文

Reuters (6/2)


4.欧州議会委員会が原子力・天然ガスを持続可能な投資に分類することに反対

欧州議会の環境委員会と経済委員会は、原子力と天然ガスに対する投資をEU Taxonomy上、持続可能な投資に分類するという欧州委員会の案に対して反対する決議を6月14日採択した。今後は、7月初旬に予定される欧州議会本会議における投票によって、原子力と天然ガスの位置づけが決まることになる。欧州委員会は、欧州委員会の原案でも、すべての原子力や天然ガスに対する投資を持続可能な投資と認めるのではなく、厳格な条件に合致したものだけ、持続可能な投資と認められると釈明している。原子力については、仏などの積極推進国が、炭素中立目標の達成には、CO₂を排出しない原子力発電が不可欠とする一方、使用済み核燃料の処分などの問題点を挙げて、独などが反対している。

原文

The Business Times (6/2)