国際海洋情報(2022年6月1日号)

1.スコットランドと独最大のバイエルン州がグリーン水素で連携

6月13日、独最大の州であるバイエルン州の経済・エネルギー大臣とスコットランドの経済貿易観光大臣は、グリーン水素に関する商業的・科学的な既存の連携を拡大し、スコットランドからグリーン水素をバイエルン州に輸出することについて基本合意した。さらに、必要なインフラを含む適切な水素の物流ルートの構築、共同実証事業に対する支援などを両者が実施することが計画されている。スコットランドは北海に新たにパイプラインを建設して、グリーン水素を独のニーダーザクセン州まで輸送し、そこから現在天然ガスの輸送に使用されている独国内のパイプラインに接続することを計画している。両者は水素の生産・貯蔵・輸送・他のエネルギーへの転換などに関する研究開発を連携して進めることについても合意した。

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Offshore Energy (6/1)


2.Race to Zero:参加基準を厳格化

6月15日、世界的に気候変動に関する目標や行動を引き上げ・統一するために国連が支援するRace to Zeroは、2020年6月に英国政府の提唱でCOP 26の準備作業として立ち上げられて以降、多くの企業や地方自治体などの国以外のメンバーが世界的に増加してきた。この度、協議の結果、化石燃料に対する投融資をしないことや気候変動対策に対する非科学的なロビー活動の禁止などが参加要件として付加され、新規参加者に対しては直ちに、既存の参加者については、12か月以内に改めるべき点があれば修正することとなる。現在の基準でも、化石燃料を生産する大手企業は参加を認められていないが、事業の一部が化石燃料に関するものがある企業や、化石燃料産業に対し、金融上その他の支援を実施している参加企業が今回の基準強化の影響を受けることとなる。Race to Zeroにおいては、化石燃料から脱却する統一の期限は設けていないが、国際エネルギー機関(IEA)が2021年に作成したNet Zeroのシナリオによれば、新規石炭火力発電所の建設と新規石油・天然ガスの開発は直ちに停止、既存の火力発電所については、OECD加盟先進国は2030年まで、OECD非加盟の後進国は2040年までに、 段階的に廃止することが求められているが、Net Zeroにあっても、このような世界的・科学的な目標と整合性を持って、化石燃料からの脱却を図っていく。

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edie (6/1)


3.再生可能エネルギー証明書(RECs)に基づくGHG削減量が水増し

科学的な根拠に基づくGHG削減目標を持つ企業が、GHG排出削減量を算定するにあたって、当該企業が使用するエネルギーに関するScope 2のGHG削減については、再生可能エネルギー証書(Renewable Energy Certificates:RECs)の使用が認められているが、Nature Climate Science誌に発表された論文によれば、企業がRECsを購入することによって、実際に再生可能発電量が増えていないことが分かった。つまり、RECsに基づくGHG削減効果は大幅に水増しされていることが分かった。こうした問題のあるRECsに基づくGHG削減量を除くと、研究の対象となった企業の2015年から2019年までのScope 2のGHG排出削減のペースは、気温上昇を1.5℃以内に抑制するペースにははるかに足りず、何とか2℃以内の目標を維持できるかどうかであった。現状では、Scope 2に関するGHG削減量の42%がRECsを用いた水増しで、実際のGHG削減にはつながっていないことが判明した。GHG削減に関する評価方法を見直し、科学的根拠に基づいたGHG削減を実行する必要がある。

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Nature Climate Change (6/1)


4.パリMoU:Polar Codeの順守状況について検査キャンペーンを開始

有力なPort State Control (PSC)実施機関であるパリMoUは、6月13日から7月1日まで(前期)と、8月1日から8月19日(後期)の2つの期間にわたって、IMOのPolar Codeの順守状況について確認する検査キャンペーンを実施すると6月3日発表した。船舶はどちらかの期間に1回検査を受ければよく、PSC検査官は事前に決められた質問票に基づき、船上における情報と機器がPolar Codeの規定に合致しているか確認を行う。極海には、船舶の運航などの人間の活動の影響に脆弱な特別な生態系が存在すること。また、極海では、通常の海域で必要とされる航海上の注意事項以上の注意が必要なことを踏まえて、今回の検査キャンペーンが実施される。今回の検査キャンペーンによって、①Polar Codeの順守状況を把握し、②Polar Codeの規定を順守することの重要性や、極海において航海する船舶が直面する付加的なリスクや、極海の脆弱な環境を保護する必要性について、船舶の乗組員や船主の認識向上を図ること等を目的としている。

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Paris MoU (6/1)