国際海洋情報(2022年5月31日号)

1.世界的大企業の脱炭素化目標の2/3は具体的な対策を欠く

英国のシンクタンクであるEnergy and Climate Intelligence Unitとオックスフォード大学が連携して運用しているNet Zero Trackerは、世界の200か国と上場されている大企業の公開情報をもとに、各国・各企業が実施している気候変動対策を分析しているが、最新の年次報告書によれば、Forbes2000に掲載されている世界の大企業のうち、約半数しか炭素中立を宣言していないし、炭素中立を宣言している702社の約1/3しか具体的な達成方法を明らかにしていない。さらに、地球全体として2050年までの炭素中立を達成するためには、2030年までにCO₂排出量を半減する必要があるが、2030年までの中期目標を立てている企業数も驚くほど少ない。また、Forbes2000掲載企業の約40%が、自前のCO₂排出削減だけでは足らずに、まだしっかりとした基準作りが進んでいないカーボンオフセットに依存している。

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Reuters (5/31)


2.大気中のCO₂濃度最高値を更新

6月3日、米国海洋大気庁(NOAA)が発表した最新の観測結果によると、今年の5月には、大気中のCO₂濃度は、産業革命以前の濃度の約280ppmと比較して50%以上、対前年比1.8ppm上昇して421ppmとなり史上最高記録を更新した。この結果、世界中でより頻繁かつ強力な熱波・強烈な集中豪雨・大規模で降水量の大きい台風・頻繁で規模の大きい山火事・ 海洋の酸化・豪のGreat Barrier Reefをたびたび襲った 海水温の上昇が発生した。現在のCO₂の濃度は、410万年から450万年前の鮮新世と同じレベルで、当時は現在と比べて、海面ははるかに高く、現代の多くの都市所在地は海面下で、気温も産業革命以前の気温より、約14度高かった。

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Axios (5/31)


3.英国洋上風力発電:2030年までに約10万人を雇用

英国政府は、Green Industrial Revolutionとして、2030年までに洋上風力発電量を現在の5倍の50GWに引き上げることを目指しているが、洋上風力産業理事会の報告書によれば、英国では洋上風力発電分野における雇用は、直接・間接を含めて現在3.1万人だが、2030年までに9.7万人以上が雇用され、うち洋上風力発電事業の直接雇用数だけで6.1万人が見込まれる。2021年の英国における洋上風力発電事業に対する年間投資額は約100億ポンド(約1.64兆円)だったが、2030年までの年間平均投資額は170億ポンド(約2.8兆円)まで拡大する見込み。このような投資額の増加は、イングランドのCrown Estateが8GW分の、スコットランドのCrown Estateが25GW分の開発権のリースを新たに認めたことによるもので、現在計画・建設中の洋上風力発電事業の総発電量は86GWに達している。さらに、差額補填契約(CfD)の入札を従来は2年に一度行っていたのを、毎年行うことに変更したことによっても投資が促進されている。

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Offshore Wind Biz (5/31)


4.WTO閣僚会合:気候変動問題に関する貿易大臣会合が創設

世界貿易機関(WTO)は5年ぶりに貿易大臣会合を開催したが、環境問題が重要議題に浮上した。EUは6月13日、エクアドル・ケニア・NZとともに、気候変動に関する新たな貿易大臣の連合を結成し、他の諸国の参加を期待している。このほかにも、環境面で持続可能な貿易やプラスチック汚染の追跡などのテーマを議論するグループが結成された。気候変動に関する貿易大臣会合の第1回目の会合は7月に予定され、持続可能な開発やパリ協定の目的達成に必要な貿易政策の確立を目指す。化石燃料への政府補助金の総額は、再生可能エネルギー開発のための補助金総額を超えており、化石燃料への依存から脱却しなくてはいけないときに、化石燃料への政府補助を継続するのは矛盾しているとNZの貿易大臣は指摘している。

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Euractiv (5/31)