国際海洋情報(2022年5月30日号)

1.McKinsey:The net-zero transition:What it would cost, what it could bring

標記報告書の概要は以下のとおり。①2021年から2050年までに、炭素中立に移行するために必要な経費は、エネルギー・土地利用に関する物理的な経費だけで、約275兆ドル(36900兆円)で、年間投資額に直すと平均で9.2兆ドル(約1232兆円)となり、現状投の資額と比べて、最大で3.5兆ドル(約469兆円)の追加投資が必要となる。②全てのコストを含んだ電力の単位当たりの発電コストは、2020年から2040年にかけて約25%上昇し、その後、減少に向かうが、2050年時点でも対2020年比で約20%割高となる。③エネルギー転換によって全世界で約2億人の新規雇用が生まれる一方で、約1.85億人の失業者が発生する。④化石燃料に依存している途上国ほどエネルギー転換のコストは高く、サブサハラ諸国やインドは、先進国と比べて1.5倍の投資が必要となる。⑤エネルギー転換のコストを消費者が負担することとなれば、消費者は短期的には現在より割高な電力料金を支払う必要があり、低所得層への影響が大きい。

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McKinsey & Company


2.ICS:MEPC 78の結果に強い不満を表明

ICS事務局長のコメントの概要は以下のとおり。①研究開発基金(IMRF)に関する海運業界の提案を否決したことにより、2050年までに海運脱炭素化を達成するために必要な、脱炭素技術開発を直ちに開始する機会をIMOは失った。②多くのIMO加盟国がICSの提案に賛同したにもかかわらず、短視眼的な政治的な動きによって、ICSの提案が事実上葬り去られた。③この結果、海運脱炭素化に必要な投資に対する金融リスクは高止まりし、早急に脱炭素燃料への切り替えを進める努力に水が差された。④反対者は、IMRFは効果の薄い市場原理に基づいた対策(MBMs)であると批判したが、意図的な誤解であり、IMRFはMBMsとして提案されたものではなく、ICSは炭素課税の様なMBMsを支持するものの、MBMsはIMRFに比べて、はるかに政治的に複雑で、合意までに長い年月がかかるものである。加盟国が合意さえすれば、こうしたMBMsとは峻別して、IMRFは来年からでも、政府の財政負担なしに、海運業界から研究開発に必要な資金を徴収できた。

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ICS (5/30)


3.Clean Arctic Alliance:IMOが迅速な気候変動対策を取るのに失敗

Clean Arctic Allianceが10日、MEPC 78の結果についてコメントを発表したところその概要は以下のとおり。①IPCCの報告書を受けて、多くの国がIMOのGHG削減目標を引き上げて、パリ協定の目標を達成するため、2050年までの海運の炭素中立の実現、さらには、2030年までのGHGの半減に賛成を表明したにもかかわらず、迅速な進展がなかったのは残念。②同様に、北極海におけBlack Carbon(BC)の排出規制についても、何ら進展がなかったのは残念。③地中海全体についてSOxに関する排出規制海域(MedECA)に指定し、地中海を航行する船舶が硫黄分0.1%以下の燃料を使用することが合意されたのは前進。この措置により、SOxだけではなくBCの排出も大幅に削減されることとなる。④また、スクラバー排水による環境へのリスクと影響を評価するためのガイドラインが承認されたのも、重油燃料の延命を助長するスクラバーの使用禁止に向けての正しい方向と評価。

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Clean Arctic Alliance (5/30)


4.ロングビーチ港がGreen Shipping Corridorに参加

地球温暖化に迅速に対応するために世界の40都市の市長が結成したC 40 Citiesが本年1月に発表したGreen Shipping Corridor (GSC)構想に従い、ロングビーチ港は、上海―ロサンゼルスGCS協定に署名した。上海港・LB港は、海運会社・荷主などの関係者とともに、2022年末までに、成果物・最終目標・中間目標・各参加者の役割などを含むGSC実施計画を策定する予定。LB港は既にWorld Ports Climate Action Planなどのパリ協定の目標を実現するための国際的な取り組みに参加しているが、GSCはこれらの既存の国際的な取り組みを踏まえる一方で、同港が取り組んでいるClean Air Action Planを補完するものとなる。LB港は、2030年までにターミナル運営の脱炭素化、2035年までに同港に出入りするトラックの脱炭素化を図る目標を立てている。GSCは、2030年までに低炭素・超低炭素・脱炭素燃料を燃料として使用できる船舶を段階的に導入し、最終的には、世界で最初の太平洋航路を運航するゼロエミッションコンテナ船の就航を目標とする。

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Port of Long Beach (5/30)


国内ニュース

1.商船三井:バイオ燃料を使用したばら積み貨物船の試験航行を実施
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6月10日、商船三井