国際海洋情報(2022年5月26日号)

1.中国企業が試験的に「低炭素移行債券」を発行

中国人民銀行の付属機関である銀行間市場交易商協会(MAFMII)の発表によれば、電力・鉄鋼・石油化学・民間航空など8分野の企業は、これまでの環境債(Green Bond)を補完し、脱炭素化投資の資金調達のために「低炭素移行債」を発行することが試験的にできるようになる。上海証券市場は、国営電力事業者の中国華能集団や国有鉄鋼企業をまとめる宝鋼集団などは、中国で最初の「低炭素移行債券」を既に発行したと、6月6日発表した。同債券の発行によって得られた資金は、よりCO₂排出量の少ない石炭の生産、環境技術開発、天然ガスや低炭素エネルギーの利用などに用いることができる。

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Reuters (5/26)


2.IATA:欧州議会におけるEU ETSの拡大適用承認に対し反対を表明

国際航空運送協会(IATA)がEU ETSの拡大適用に反対を表明したところその概要は以下のとおり。①IATAは欧州議会が欧州経済領域(EEA)を起点とするすべての国際航空輸送に対して、2024年からEU ETSを拡大適用することを決定したことに驚き懸念を表明する。②EU/EEAを出発する国際航空輸送については、既にCarbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation (CORSIA)が適用される一方で、現状ではEU ETSはEU域内の航空輸送にのみ適用されている。③EUが一方的に、EU域外国に向かう国際航空輸送にETSを適用することにより、本年後半に第41回ICAO総会で審議される予定のLong-Term Aspirational Goal (LTAG)の採択を困難とし、国際航空に適用される唯一の国際的な市場原理に基づく協定であるCORSIAを弱体化し、分裂させることになりかねない。④EUから出発するすべての国際航空輸送をETSの対象とすることは、EUの航空会社とEUの空港の国際航空輸送ハブとしての競争力を損なうことになる。

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IATA (5/26)


3.米大統領:太平洋航路のコンテナ海運をインフレの元凶として名指しで批判

ホワイトハウスはバイデン大統領と米国の農業団体の代表等との会話を録画した1分半のビデオメッセージを公表したところ、その概要は以下のとおり。①米国が現在直面しているインフレの大きな原因は、外航海運、特に太平洋航路を運航しているコンテナ海運会社である。②太平洋航路の運賃上昇はoutrageousで、議会は外航海運会社を厳しく取り締まる法律を制定する必要がある。③太平洋航路を運航しているのはわずかに9社であり、運賃を最大で1000%も引き上げた。バイデン大統領が名指しで、コンテナ海運会社を批判するのは、本年2月に続き2回目で、2月には、3つの海運アライアンスによる独占禁止法違反を視野に新たな監視強化を表明し、司法省に対して、連邦海事委員会(FMC)と連携して、海運分野の競争を促進するために独占禁止法を厳格に適用するよう指示するとともに、議会に対しては外航海運改革法の改正を要請した。今回のメッセージでは、議会において外航海運改革法の改正が承認され次第、早ければ来週(6/13の週)にも、法案に署名を行うと明言した。

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The Maritime Executive (5/26)


4.北極評議会:露抜きの7か国で活動を限定的に再開

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、3月3日、ロシアを除く北極評議会7か国は、北極評議会の活動をしばらく休止すると発表し、北極評議会の活動を再開するための方針について協議を続けてきた。6月8日、同7か国は共同声明を発表して、レイキャビクの閣僚会合において、8か国が承認した行動計画に含まれる事業についてロシアとの協力なしで実施できる事業について、7か国が限定的に再開すると発表した。

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High North News (5/26)