国際海洋情報(2022年5月25日号)

1.欧州議会で排出権取引制度の改革案などが否決

数か月にわたる妥協の積み重ねを経て、6月8日、欧州議会総会で採決されたEUの排出権取引制度の改正案について、改正案が骨抜きになるのを阻止する観点から左派が反対に回ったため、極右政党の反対と併せて、改正案が否決され、環境委員会に再審議のため差し戻された。この結果、EUの気候変動対策のパッケージであるFit for 55の重要な部分を占めるETSの見直し等の成立が遅れる見込みとなった。保守連合は気候変動対策の大幅な強化から企業を守ろうとし、liberalやcenter-rightの議員も、欧州の産業界に過度な負担を課すのを恐れて、5月に環境委員会が承認した野心的な案を支持するのをやめた。

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Politico (5/25)


2.農薬・肥料のプラスチックコーティングによる土壌・食物汚染の実態

国際環境法センター(CIEL)が発表した標記報告書の概要は以下のとおり。①世の中にはあまり知られていないが、農業部門は多くのマイクロプラスチックを意図的に使用している最も大きな事業部門の一つである。②プラスチックによってコーティングされた肥料や殺虫剤の使用による環境への意図的なマイクロプラスチックの散布は、マイクロプラスチックによる農業土壌汚染のもっとも直接的でかつ抑制可能な原因である。③肥料や殺虫剤にプラスチックコーティングすることによって、その効果を長続きさせ、持続可能で気候変動にも強い農業を実現するための切り札として、使用量が増加している。④農薬・肥料をプラスチックのカプセルに入れて、土壌や作物に散布することにより、農薬による健康面・環境上のリスクを悪化させている。

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CIEL (5/25)


3.FMC:荷主支援とサプライチェーンの効率改善のため新たな3施策を発表

6月8日、米国連邦海事委員会(FMC)は、米国の荷主への支援を強化し、海運会社等に法規制を遵守させる体制を改善し、サプライチェーン上の問題の救済を重点化するために新たに以下の3施策を実施すると発表した。①米国の海上貿易を支えるネットワークと施設に関する長年にわたる制度的な問題点と欠点を克服するため、FMCに対し、サプライチェーンのどこに問題があるのか特定し、円滑な海上貿易を妨げる問題点を改善するための手順を提案する権限を付与する「国際外航海運サプライチェーンプログラム」を新設する。②輸出に関する問題に迅速に対応するためのExport Rapid Response Teamを再導入する。③海運会社・ターミナル運営会社・港湾管理者は、社内にFMCの規則が順守されているか管理する、上級役員直属のFMC Compliance Officerを任命する。

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FMC (5/25)


4.IMO:Just in Time Arrivalによって燃費とCO₂を最大14%削減することが可能

IMOとノルウェー政府の共同事業であるGreen Voyage 2050’s Global Industry Alliance to Support Low Carbon Shipping (Low Carbon GIA)は、6月7日、Just in Time Arrival (JIT)/ Emission Reduction Potential in Global Container Shippingと題する報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①本年後半に発効するIMOによる海運GHG排出削減短期対策としてのCarbon Intensity Indicator (CII)の格付けを良くするために、船舶エネルギー効率管理計画(SEEMP)とともに、JITを採用することは有効な手段である。②本調査は、Marine Traffic and Energy and Environmental Research Associates (EERA)が、パンデミック以前の2019年における世界のコンテナ船のAIS運航情報をもとに、JITによる運航最適化による燃費・排気削減効果を検証した。③JITを全行程に適用した場合に14.2%、到着24時間前から適用した場合に5.9%、到着12時間前から適用した場合に4.2%、それぞれ燃費を節約できることが判明した。

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IMO (5/25)