国際海洋情報(2022年5月19日号)
1.WSC:欧州議会環境委員会のEU ETS改正案に対するコメント
コンテナ船社の業界団体である世界海運評議会(WSC)の標記コメントの概要は以下のとおり。①今回の改正案では、再生可能・低炭素燃料の生産から流通までのライフサイクル(well to tank)でGHG排出量を評価する視点が欠けており、先頭に立って、ゼロエミ燃料の開発に取り組もうとする者(first-mover)の投資意欲をそぎ、ライフサイクルで見れば大量のGHGを排出する燃料(LNGのこと)の生産を促進することとなる。②適用範囲の広いGHG削減対策の方が優れているという思い込みを廃することが大切で、EU域内の対策を作ったからと言って、世界的な貿易をゆがめるものではなく、また第3国からの報復措置を招く恐れもない。③海運の脱炭素化を迅速に進めるため、船舶の設計や運航について影響力を持つ船舶の所有者と運航者がEU ETSのコストを用船契約上シェアするようにすべきで、どちらかを費用負担者から除外することは、新しい機関や代替燃料に対する必要な投資を阻害する。
原文
World Shipping Council (5/19)
2.欧州議会環境委員会:EU域外との間の航空輸送もETSの対象に
現在、EU ETSは、航空輸送についてはEU域内の輸送にのみ適用され、EUとEU域外の間の輸送については、ICAOの世界的なcarbon offsetting schemeであるCORSIAが適用されているが、欧州委員会環境委員会は、EU ETS改正案を採択し、EU域外との間の航空輸送に対してもETSを適用するとともに、現在航空会社に認められている無料排出枠の早期撤廃についても合意された。この結果、国際航空輸送にはEU ETSとCORSIAの両制度が適用され、航空会社はCORSIAに支払った分を後日、EU ETSの支払額から差し引いてもらうことになる。現在ETSが既に適用されているEU域内の航空輸送については、CO₂排出量の半分以上に対して、8億ユーロ(約1080億円)に相当する無料排出枠が認められている。欧州委員会の案では、無料排出枠は2027年までに撤廃されることとなっていたが、欧州議会の案では、撤廃期限が2025年に前倒しされ、同年以降の排出枠は有料の入札制に移行することとなる。
原文
Euractiv (5/19)
3.BIMCO:船内機器のソフトウェア更新に関する業界基準発表
BIMCOは、船内の機器のソフトウェアの更新に起因して、レーダーなどの重要機器が停止し、誤作動することによって発生した事故をこれまで何件も確認してきた。今回BIMCOが国際海事通信委員会(CIRM)と協力して作成したStandard on Software Maintenance of Shipboard Equipmentの目的は、ソフトウェアの更新が安定・整合的に実施されることを担保することであり、機器にインストールされているソフトウェアの一覧性を高め、保守管理の効率性を担保し、異なるソフトウェアを保守管理するグループの間の効果的な連携を担保するものである。今回作成された基準によれば、システム管理者は船内の機器でどのソフトウェアのどのバージョンが使用されているか完全に把握するため、すべての機器が使用しているソフトウェアのバージョンを正確に表示し、さらに、あるソフトウェアの更新によって、船内のシステムに問題が発生したときに、問題を修復するために、更新前のバージョンにきちんと戻れることが要求されている。
原文
BIMCO (5/19)
4.北海沿岸諸国首脳が北海の洋上風力発電の開発協力に関し共同宣言
ロシアからのエネルギー依存脱却戦略であるREPowerEUが発表された5月18日、ドイツ・デンマーク・オランダ・ベルギーの北海沿岸国のエネルギー担当大臣は、ロシアの石油・石炭・天然ガスを含む化石燃料に代わって、洋上風力発電や再生可能なグリーン水素などの再生可能エネルギーの開発を北海で進めるために連携していくための宣言を同日発表した。宣言では、北海における洋上風力発電の総発電量を2030年までに少なくとも65GWに、2050年までに150GWまで拡大し、2050年までに炭素中立を実現するためにEU域内で必要な洋上風力発電の半分以上を発電し、これによって、陸上・洋上において大規模にグリーン水素を生産し、2030年までに約20GWのグリーン水素を生産することを目標とし、北海をGreen Power Plant of Europeとする。
原文
デンマーク政府 (5/19)
Webinar情報
1.SEArica Conference on Blue Skills
May 23, 14:00 EST
http://www.searica.eu/2020-2024/events-2019-2024/searica-conference-on-blue-skills/individual-registration
2.Economist Impact, Shipping:Achieving Zero Emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email
3.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857