国際海洋情報(2022年5月18日号)
1.米政府:アラスカ・メキシコ湾での石油ガス田開発のリース入札を中止
バイデン大統領は大統領に就任して直後に、連邦管轄地域における石油ガス田の開発のための新たなリース権の入札を凍結したが、トランプ政権で任命された判事によって、凍結を決定した大統領令が無効とされたため、連邦法に従い、米国内務省はメキシコ湾とアラスカ州のクック湾における新規石油ガス田開発のためのリース権の入札を実施する予定であったが、5月11日、同省は入札手続きを中止すると発表した。米国内では今週(5/16の週)ガソリン価格が史上最高となり、共和党は民主党政権によるエネルギー政策への批判を強めている中で、今回の入札の中止決定は、新規石油ガス開発の凍結を訴える左翼支持者の支持を固める一方で、共和党からの更なる批判を高める見込み。入札手続きの中止の理由としてはクック湾については、応札する企業がないこと、メキシコ湾については、リース実施をめぐって、矛盾する内容の判決が出ているためとしている。
原文
The Hill (5/18)
2.EU:露へのエネルギー依存から脱出するために8000億ユーロの投資が必要
露のウクライナ侵攻とロシアからのエネルギー供給の停止の可能性を受けて、EU諸国が露へのエネルギー依存からの脱却を図るためには、露以外の国から天然ガスの調達を図るだけでなく、再生可能発電とグリーンな燃料の供給の拡充が不可欠である。このためには、Boston Consulting Groupの報告書によれば、再生可能電力を受け入れるための送電施設の整備・容量の大きい電力(エネルギー)貯蔵施設・グリーン水素・持続可能な航空燃料の4分野に2030年までに8000億ユーロ(約109兆円)の投資が必要で、これによって、2030年において、エネルギーの1次消費量の1/10に当たる140万GW分、化石燃料からの依存から脱却することができる。EUは年末までに露からの天然ガスの輸入を2/3削減するために、5月18日に総額1950億ユーロ(約26.5兆円)の投資計画を発表する予定で、これにより2030年における再生可能エネルギーの目標シェアをこれまでの40%から45%に引き上げる。
原文
Financial Post (Bloomberg) (5/18)
3.英MCA:「洋上風力発電施設等が海運に与える影響」に関するガイダンス
英国政府による再生可能エネルギーの拡大政策によって、英国の海域における洋上風力・波力・潮力などの洋上再生可能エネルギー施設(OREIs)の数が増加している。OREIsの設置場所・大きさ・不規則な形によって、船舶の安全運航・船舶との通信・救難活動に新たな制約要因が発生し、結果として、海上の船員や沿岸住民に対する人的損害や物質的損害を発生させる恐れがある。こうした被害を予防するために、海事沿岸警備庁(MCA)はOREIsによる船舶の安全運航や救難活動に対する影響を分析し、OREIs開発事業者やOREIs周辺で船舶を運航する者のために、2012年にガイダンスを作成し、逐次改訂している。この度、建設中のOREIs周辺に暫定的に設定される「安全海域」に関する部分などが追加され、5月12日に改訂版が発表された。
原文
英国政府 (5/18)
4.北米西岸の港湾がクルーズ船のためにグリーン回廊の設置を検討へ
2021年に、米国・カナダを含む24か国が参加して、代替燃料を燃料とする船舶に対して、低・ゼロ炭素燃料を供給できる複数の港湾を結んだネットワーク(グリーン回廊)を2025年までに、世界で最低でも6航路作ることを約束したClydebank宣言が採択されたが、バンクーバーで開催された国際港湾協会の会議で、シアトル港・アラスカのジュノー市・バンクーバーのフレーザー港湾管理庁・多くの主要クルーズ船事業者が世界海事フォーラムなどと連携して、クルーズ船が主導する最初のグリーン回廊を設立するためのFirst Mover Commitmentに合意した。今後、アラスカ州・British Columbia州・ワシントン州の間で、ゼロエミッションクルーズ船の運航を加速化するためのグリーン回廊設立の可能性を調査していく。
原文
gCaptain (5/18)
Webinar情報
1.SEArica Conference on Blue Skills
May 23, 14:00 EST
http://www.searica.eu/2020-2024/events-2019-2024/searica-conference-on-blue-skills/individual-registration
2.Economist Impact, Shipping:Achieving Zero Emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email
3.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857