国際海洋情報(2022年5月17日号)

1.石油・ガス業界は化石燃料に対し引き続き大規模投資を計画

The Guardian誌が標記について独自調査した結果の概要は以下のとおり。①化石燃料業界の短期的な投資拡張計画には、新たな石油ガス事業の開発も含まれており、計画が実現すれば、世界最大のCO₂排出国である中国が排出するCO₂の排出量の10倍の排出量が新たに増えることとなる。②対象となる大規模開発事業は195事業で、各事業がライフタイムに排出するCO₂の量はそれぞれ最低でも10億トンを超え、合計すると、現時点の世界の年間CO₂排出総量の18年分のCO₂を排出することとなる。195事業のうち、約60%の事業は既に操業を開始している。③パリ協定の目的を達成するためには認められない新規事業に対して、最大手の石油ガス事業者は、今世紀末まで、1日当たり、約1億ドルの投資を続ける見込み。④新規石油ガス事業の開発に関しては、中近東やロシアがやり玉にあがりやすいが、米・加・豪においても、規模においても事業数においても最大級の新規事業が計画されており、この3か国の石油ガス業界に対する政府支援は、国民一人当たりの額でみると、世界で最高レベルにある。

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The Guardian (5/17)


2.IEA:Renewable Energy Market Update (2022年5月)を発表

国際エネルギー機関(IEA)は、5月11日標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①2021年においては、コロナの影響でサプライチェーンの混乱と原材料価格が高騰したにもかかわらず、再生可能エネルギーの発電能力は、全世界でこれまで最高の295GWの増加となった。②2022年においても再生可能発電能力の拡大が続き、独全体のエネルギー需要量に匹敵する320GWの増加が見込まれる。③中でも、太陽光発電が、増設量の60%と最大のシェアを占め、風力と水力発電の拡充が続いている。④EU域内で見ると、2021年には再生可能発電能力が約30%増の36GW拡充しこれまで最高の伸びを記録した。⑤2022年と2023年における再生可能発電能力の増設は、露へのエネルギー依存度の削減に貢献しうるが、エネルギー効率化によるエネルギー消費総量の抑制も並行して実施する必要がある。

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IEA (5/17)


3.RMI:EUにとってグリーン水素を輸入することの戦略的優位性

標記報告書の概要は以下のとおり。①EU域内においても太陽光・風力・地熱などの再生可能エネルギーの生産はできるが、より迅速に価格変動の激しい輸入化石燃料への依存から脱却し、炭素中立を実現させるために、欧州域内でグリーン水素やグリーンアンモニアの普及を図るためには、より安いコストでグリーン水素を生産できる外国からグリーン水素を購入することが重要である。②鉄鋼や海運などすべてのエネルギーを電化することが困難な産業に、今後8年間で2000万トンのグリーン水素を供給すれば、これらの産業の脱炭素化を促進することができる。③天然ガスの将来性やEU域内の今後の炭素価格を考慮すれば、EU域内で化石燃料からブルーやブラウンの水素を生産するより、グリーン水素を輸入する方が経済的にも安くつくようになる。④したがって、グリーン水素を安く生産することが可能なアルジェリア・豪・ブラジル・チリなどの国々と早急に、グリーン水素供給に関する協定を締結すれば、早ければ2024年にも輸入グリーン水素の供給が可能となる。

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RMI (5/17)


4.EU ETSの見直し案について欧州議会多数派で暫定妥協が成立

欧州議会の環境委員会の多数派の間で、EU ETSの見直し案について暫定的な妥協案に合意したと、5月11日、取りまとめ責任者が明らかにしたところその概要は以下のとおり。①欧州委員会の原案よりETSの適用範囲の拡大の規模を限定し、建物と交通に関しては、2025年から企業に対してのみ適用し、個人(家庭)に対しては、一定の条件に合致した消費者に対して2029年から適用する。②排出権取引額についてはCO₂1トン当たり50ユーロ(約6700円)を上限とする。③海運については欧州委員会の原案を2年先倒しして、2024年から完全に適用する。④今回の妥協案によると、ETSの対象となる分野におけるCO₂排気量を2030年までに61%削減できる見込み。⑤環境委員会で、この妥協案について、来週(5/16の週)に採決を行い、欧州議会総会での全体採決は6月か7月に行われる見込みで、その後欧州議会の案を欧州理事会と調整することとなる。

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Reuters (5/17)


国内ニュース

1.商船三井:加州で自動車船対応の排ガス新処理システムの開発・導入を決定
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5月10日、商船三井

 


Webinar情報

1.Ocean Decade Laboratories:An Accessible Ocean
May 10-12
https://www.oceandecade-conference.com/en/an-accessible-ocean.html

2.Reuters:Decarbonising Power:A Pathway to Sustainable Power Generation
May 12, 3pm BST
https://events.reutersevents.com/schneiderelectric/power?utm_campaign=5509-05MAY22-WK27-DB&utm_medium=email&utm_source=Eloqua

3.SEArica Conference on Blue Skills
May 23, 14:00 EST
http://www.searica.eu/2020-2024/events-2019-2024/searica-conference-on-blue-skills/individual-registration

4.Economist Impact, Shipping:Achieving Zero Emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email

5.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857