国際海洋情報(2022年5月16日号)

1.国連:イエメン沖のタンカーから原油を抜き取る作業に8000万ドル必要

フーシ派とサウジに支援された政府との間で、所有権と責任をめぐって行き詰まり、フーシ派が支配するイエメンの西岸沖8kmの地点に6年間も114万バレルの石油を積んだまま放置されている船齢45年の老朽化タンカーから、油が紅海に漏出すれば、1989年のエクソン・バルディス号による油濁事故の4倍の環境被害が発生し、20万人を超える漁民が職を失い、油濁汚染の清掃費用に200億ドルかかると国連の専門家は警告している。国連は6か月以上にわたって、フーシ派と交渉した結果、国連が老朽化したタンカーから110万バレルの石油を抜き取って、他のタンカーに積み替え、老朽化タンカーの代わりに18か月以内にフーシ派のために新しいタンカーを代替として購入して与え、老朽化したタンカーは曳船されて、鉄くずとしてスクラップされることについてフーシ派が同意した。合意された内容を実施するための費用として、国連は8000万ドルの資金を集めたうえで、海が荒れる10月前までに石油の抜き取り作業を完了する必要がある。

原文

The Guardian (5/16)


2.EU:欧州屋上太陽光イニシアティブを提案へ

太陽光パネルのコストは過去10年間で80%以上低下したにもかかわらず、2020年におけるEU域内の太陽光発電のシェアはわずかに5%で、暖房に至っては太陽光のシェアは1.5%にとどまっている。こうした状況を改善するために、欧州委員会は、来週(5月16日の週)に発表される予定の露産化石燃料への依存から脱却するための対策パッケージの中で、「欧州屋上太陽光イニシアティブ」を発表し、家庭・事業所・店舗・工場における電力と暖房について、建物の屋上における太陽光パネル設置を促進する予定。具体的には、各国政府に対して、屋上に太陽光パネルを設置するために必要な許認可を得るための期間を3か月以内に短縮するよう規制改革を求め、各家庭や企業が建物の屋上に太陽光パネルを設置するための支援制度をEUからの補助金を活用して創設し、2025年までにすべての公共的な建物の屋上に太陽光パネルを設置することを義務付ける。さらに、各国政府と職業訓練機関が協力して、太陽光パネル事業分野で働く労働者の職業訓練を行い、「EU太陽光産業アライアンス」はEUの補助金と排出権取引市場の収入を原資とする「革新基金」を利用して、EU域内の太陽光パネル産業に対する投資を支援する。

原文

Reuters (5/16)


3.ロッテルダム港:2030年までに年間460万トンの水素を供給へ

2030年までに露産天然ガスからの依存から脱却することを目的としたREPowerEU戦略に従って、ロッテルダム港は、約70の企業と水素を輸出する国と共同で、2030年までに年間460万トンの水素を供給し、4600万トンのCO₂排出を削減するという水素経済に関する計画を立てて、欧州委員会のエネルギー・環境担当の副委員長に報告した。同港から供給される水素は、自動車などの交通機関の燃料として、エネルギー多消費型の産業における燃料として利用される。この計画の実現のためには、第1に、非EU諸国から輸入されるグリーン水素については、本当に再生化可能電力から生産されたことを認証する制度が必要であること。第2に、再生可能(低炭素)水素とグリーンアンモニアなどの水素派生燃料と化石燃料或いは化石燃料を原料として生産された水素・アンモニアなどとの価格差を埋める必要がある。北西欧州諸国・南米諸国・豪では再生可能エネルギーからグリーン水素を生産する事業が進められているが、これらの国からアンモニアなどの水素キャリアをロッテルダム港に輸入し、ロッテルダム港で水素に再加工して、パイプラインなどを活用して近隣諸国に供給することを目標としている。

原文

Offshore Energy (5/16)


4.RePwerEU戦略:2027年までに露への依存脱却に1950億ユーロを支出

欧州委員会は、5月18日に、2027年までに露からの化石燃料への依存から脱却するための総額1950億ユーロ(約27兆円)のRePowerEU戦略を発表する予定だが、同戦略においては、①再生可能エネルギーのより迅速な普及(2030年までの再エネ比率目標を40%から45%に引き上げ)②エネルギー消費量の大幅削減。(エネルギー消費量削減率を9%から13%以上に引き上げ)③輸入エネルギー調達先の多様化。④投資を促進するための新たな財源(EU ETS収入を財源とする革新基金)からの資金導入を同時に実現することを目的とする。この戦略が実現すれば、EU全体で1年間に、800億ユーロ分の天然ガス・120億ユーロ分の石油・17億ユーロ分の石炭の輸入を節約できる見込み。さらに2030年までに、EU域内で1000万トンのグリーン水素を生産するとともに、同量を海外から輸入する目標と、バイオエタンについても350億トン生産するという目標も含まれる可能性がある。

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BNN Bloomberg (5/16)


国内ニュース

1.商船三井:加州で自動車船対応の排ガス新処理システムの開発・導入を決定
原文

5月10日、商船三井

 


Webinar情報

1.Ocean Decade Laboratories:An Accessible Ocean
May 10-12
https://www.oceandecade-conference.com/en/an-accessible-ocean.html

2.Reuters:Decarbonising Power:A Pathway to Sustainable Power Generation
May 12, 3pm BST
https://events.reutersevents.com/schneiderelectric/power?utm_campaign=5509-05MAY22-WK27-DB&utm_medium=email&utm_source=Eloqua

3.SEArica Conference on Blue Skills
May 23, 14:00 EST
http://www.searica.eu/2020-2024/events-2019-2024/searica-conference-on-blue-skills/individual-registration

4.Economist Impact, Shipping:Achieving Zero Emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email

5.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857