国際海洋情報(2022年5月13日号)

1.Getting to Zero Coalition:代替燃料支援策として差額補填制度を提案

世界海事フォーラムのなかで、海運脱炭素化を目指すGetting to Zero Coalition(GZC)は5月9日標記提言を発表したところその概要は以下のとおり。①海運をEU排出権取引制度(ETS)に取り込むだけでは、量産可能なゼロエミッション燃料(SZEFs)と化石燃料との価格差を埋めることはできない。②SZEFに関する技術開発を進め、量産化と価格の低下を促すためには、差額補填制度(CfDs)の活用が有用である。③EU CfD計画を効率的に運用するためには、様々な好条件に恵まれたGreen Corridorsに集中投資する必要がある。④GZCは2030年までにSZEFsのシェアを5%以上にすることを提唱しているが、この目標の実現のためには、年間12億ユーロ(約1700億円)の投資が必要と概算されるが、海運分野からのEU ETSの収入は年間50-90億ユーロ(約6900億円から1.2兆円)と見込まれることから、必要投資額を十分賄うことが可能。

原文

世界海事フォーラム (5/13)


2.WMO:今後5年間の気象予想報告書を発表

英国気象庁と世界気象機関(WMO)が共同で発表した2026年までの気象予測報告書(the Global Annual to Decadal Climate Update)の概要は以下のとおり。①2026年までの年間地表面平均気温は産業革命前(1850年から1900年の間の平均気温)と比較して1.1℃から1.7℃上昇し、2016年の史上最高記録を抜く可能性が93%ある。②2022年から2026年の間の5年間の平均気温が2017年から2021年の間の平均気温を上回る可能性も93%ある。③2026年までに産業革命以前と比較して気温が1.5℃以上、上昇する年が1年でもある確率は48%だが、5年間の平均気温が1.5℃以上、上昇する確率は10%しかない。④2021年には産業革命前と比較して、1.1℃気温が上昇した。⑤2021年の初めと終わりに発生したラニーニャ現象による冷却化効果は一時的なもので、長期的な気温上昇の傾向を逆転するものではない。

原文

WMO (5/13)


3.独政府:露が天然ガスの供給を停止した際の緊急対処計画を用意

露産天然ガスは、昨年独が輸入した天然ガスの55%を占め、鉄鋼・プラスチック・自動車の生産にとってかけがえのないもので、石炭や石油のように簡単には輸入を停止することは困難で、徐々に依存率を減らしながらも2024年半ばまでは、露産天然ガスへの依存から脱局することは困難と考えられている。独に対して、露政府が一方的に天然ガスの供給を停止するか否かは見通しが立たないが、独政府の経済省は、供給が停止された際に備えて、緊急対処計画の準備を静かに進めている。具体策は慎重に検討中だが、供給が停止され、天然ガス価格が急騰した場合に備えて、エネルギー企業に対する必要な追加融資を供与して下支えし、露国営企業のロスネフチが運営しているポーランド国境に近いシュヴェットにある石油精製所などの重要施設やエネルギー企業自体を国営化することも視野に入れている。

原文

Reuters (5/13)


4.EU対露制裁案からEU籍タンカーによる露原油の輸送禁止が外れる

欧州委員会は、現在提案中の第6次対露経済制裁案において、露産原油・石油製品の輸入禁止と併せて、EU籍タンカーによる露から第3国への原油・石油製品の海上輸送の禁止も当初提案していた。これに対し、世界の石油タンカーの26%を所有するギリシャとマルタ・キプロスなどが猛反対をした結果、海上輸送の禁止規定は、最新の改訂された提案からは削除された。しかし、露産原油・石油製品を輸送するタンカーに対する保険引き受けの禁止規定はそのまま残っており、International Group of P&Iは油濁汚染補償などタンカーの保険市場の95%を握っているため、露産原油を輸送するにあたって、他に保険を引き受ける保険会社を手配することは容易でない。露産原油の禁輸については、欧州委員会はハンガリーやスロバキアなど露産原油・石油製品に深く依存している国に対しては、輸入停止の期限を2024年末まで特例的に延期することを妥協案として提示している。

原文

gCaptain (Bloomberg) (5/13)


Webinar情報

1.Ocean Decade Laboratories:An Accessible Ocean
May 10-12
https://www.oceandecade-conference.com/en/an-accessible-ocean.html

2.Reuters:Decarbonising Power:A Pathway to Sustainable Power Generation
May 12, 3pm BST
https://events.reutersevents.com/schneiderelectric/power?utm_campaign=5509-05MAY22-WK27-DB&utm_medium=email&utm_source=Eloqua

3.SEArica Conference on Blue Skills
May 23, 14:00 EST
http://www.searica.eu/2020-2024/events-2019-2024/searica-conference-on-blue-skills/individual-registration

4.Economist Impact, Shipping:Achieving Zero Emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email

5.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857