国際海洋情報(2022年5月12日号)
1.Poseidon Principles for Marine Insuranceが発足
世界海事フォーラムは、世界の海運活動が環境に与える影響の透明性を高め、海運業界全体としての脱炭素化を促進し、海運業界と社会のより良い将来を支援するため、海運企業が、気候変動の目標に従って実際に行動しているか、その行動が妥当かを評価し、行動が実際に実行されることを担保し、海運企業の行動の透明性を向上するため、今回発足した海上保険事業者のためのポセイドン原則(PPMI)だけではなく、金融機関のためのポセイドン原則・荷主と船主が参加するSea Cargo Charterの3つの組織によって、金融・保険・用船者の観点から、海運会社が責任をもって、海運の脱炭素化を実施することを担保している。PPMIのメンバーとして、新たに2社が参加したことによって、PPMIの発効要件(加盟会社数が8社以上)を満たし、4月27日、設立総会が開 催された。参加保険会社は、今年末までに、自社が保険を引き受けている海運会社のうち、ポセイドン原則に従って、海運脱炭素化を実施している会社の比率を報告するとともに、今後この比率を継続して引き上げる義務を負う。
原文
Poseidon Principles (05/21)
2.英国ウェールズで潮力発電事業を始動
ウェールズ地方政府がEUの地域支援事業から3100万ポンド(約50億円)の支援を得て、同政府は英国の北ウェールズにあるHoly島に、世界でも最大級の潮流タービンを設置するMorlais事業を、昨年12月に認可した。風力や太陽光など他の再生可能エネルギー発電に比べ、潮力発電は安定した電力供給が可能であり、同事業が完成すれば、18万戸以上の家庭に電力を供給することができる。タービン設定に伴う海洋環境への影響を見極めるため、必要なインフラの建設は段階的に実施される予定。ウェールズはかつて炭鉱地域であったが、最後の炭鉱は2008年に閉山しており、英国西岸は、世界的にも最も潮汐差の大きな海岸で、今後は潮流発電に適した地形を生かして、他にもいくつかの潮流発電事業の計画が発表されている。潮流発電所の建設のためには、大規模な堤防を用いてラグーンを造成し、潮の潮汐力を利用して、潮流発電タービンを稼働させる。
原文
The Guardian (05/21)
3.急速に進む新造船の代替燃料化:過半数が代替燃料対応可能に
Clarkson Research Serviceの統計によれば、過去2年間に発注された新造船のうち、重油燃料以外の燃料にも対応できる船舶は約30%だったが、2022年に入ってこれまでに発注された船舶の過半数に当たる63%(gtベース)に当たる船舶が代替燃料も燃料として利用できることが分かった。LNGも燃料として使用できる船舶の発注は、昨年は全体の28%にとどまっていたが、今年は59%とシェア的にも倍増以上している。その他の代替燃料船としては、過去1年間に、4隻のメタノール対応コンテナ船、多くのLPG/エタン対応LPG輸送船が発注された。バッテリーとのハイブリッド船も今年に入ってから26隻発注されている。さらに、LNGを燃料として使用できるうえに、将来的にはアンモニア・メタノール燃料にも対応できるように改造可能な船舶も本年に入ってから20隻以上発注されている。しかし、新造船の過半数がLNGにも対応できるように発注されているとはいえ、価格的に割高なLNGを実際に燃料として用いるか否かは現段階では未定である。
原文
Splash247 (05/12)
4.米司法省:Environmental Justiceを担保する専門組織を創設
環境汚染をもたらす事業は、歴史的に社会的な弱者が住む地域で実施されることが多く、社会的弱者に過大な健康上のリスクを与えてきた。バイデン大統領は就任後に、気候変動とクリーンエネルギーに対する政府の投資から得られる収入の40%をこうした環境上の不公正の問題を解決するために使うと公約していたが、司法省は専門組織の新設を含む新たな戦略を5月5日発表し、環境法と人権保護に関する規定をこうした地域に優先的に適用し、様々な負担に苦しむ地域から有害な環境上の影響を取り除くことに優先的に取り組んでいくと表明した。司法省は全国の93人の連邦検事に対して、Environmental Justice Coordinatorを任命し、担当管区内に、環境上の不公正が懸念される地域がないか調査するよう命じた。トランプ政権は、環境規制に違反した企業が、罰則の一環として、環境を浄化するための事業を支援する制度(Supplemental Environmental Projects:SEPs)を廃止したが、司法省はSEPsの制度を復活した。
原文
msn (The Hill) (05/12)
Webinar情報
1.Ocean Decade Laboratories:An Accessible Ocean
May 10-12
https://www.oceandecade-conference.com/en/an-accessible-ocean.html
2.Reuters:Decarbonising Power:A Pathway to Sustainable Power Generation
May 12, 3pm BST
https://events.reutersevents.com/schneiderelectric/power?utm_campaign=5509-05MAY22-WK27-DB&utm_medium=email&utm_source=Eloqua
3.SEArica Conference on Blue Skills
May 23, 14:00 EST
http://www.searica.eu/2020-2024/events-2019-2024/searica-conference-on-blue-skills/individual-registration
4.Economist Impact, Shipping:Achieving Zero Emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email
5.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857