国際海洋情報(2022年5月9日号)

1.ReCAAP:2022年第1四半期は武装強盗の事件数が対前年比35%増加

アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)が2022年第1四半期(1-3月)の武装強盗報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①同期間中に発生した武装強盗数は未遂1件も含めて23件となり、対前年同期比35%となった。公海上の海賊事件はゼロだった。②事故が発生した状況は、19件が船舶航行中、4件が錨泊・接岸中だった。③事故数が増えた主たる原因はシンガポール海峡における事件が、7件から18件に急増したため。インドネシア・フィリピン・ベトナムでは逆に事件数が減った。④発生した事件のうち64%の14件では、賊は武装しておらず、船員も危害を加えられていない窃盗レベルのものであった。⑤シンガポール海峡で起こった事件18件中、14件は航行分離帯の東航レーンのNongsa/Batam島沖で集中発生している。⑤スールー海・セレベス海での誘拐事件は、2020年1月を最後に発生していない。

原文

ReCAAP (05/09)


2.英国:船舶・遠隔運航センター・港湾運用システム間のインターフェイスを強化

英国海事研究開発(MarRI-UK)は、英国の運輸省の財政支援を受けて、同国の産業界と研究組織が協力して、海事分野の試験・研究段階を終えた技術を商業化するのを支援する組織で、2020年11月に、陸上と船舶の間の連携作業を、運用・インフラ両面で自動化する技術の公募を開始し、2021年には、ロンドン港湾管理庁が主導する陸上・海上・港湾の間を水素のHighway Networkで結ぶSmart Hydrogen Highway事業を支援の対象に選定した。2022年度は、エネルギーと船舶の自律運航の視点から、船舶・遠隔運航センター・港湾運用システム・エネルギー供給インフラとの間のインターフェイスを確立して、船舶と陸上の統合を目指すShipping and Port Interfaces in New Era (SPINE)事業を支援事業として認定した。SPINE事業は、海上輸送全体のバリューチェーンの課題・Maritime 2050に掲げられた主要課題・英国海事ルートマップ中の技術開発に関する課題・Clean Maritime Plan/UK Ports and Futureに掲げられた課題などすべての政策的な課題を包括的にまとめて対処することを目的としている。

原文

MarRI-UK (05/09)


3.猛暑と石炭・電力不足にあえぐインド

インドの電力の70%は石炭火力発電所で発電されているが、165か所ある同国内の石炭火力発電所のうち、94か所では石炭の供給不足が深刻となっており、5月1日の段階で8か所の発電所が運転を停止している。一方で、同国の3月の気温は1901年以来の最高気温を記録し、先週は10都市で最高気温が45℃を超えたため、電力需要が記録的な水準まで増加し、多くの州で毎日最大7時間の停電が発生している。4月29日には、鉄道省は、石炭鉱山から発電所に石炭を運ぶ列車の数を増やすため、750便以上の旅客鉄道列車の運行を取りやめた。政府の規則では、各石炭火力発電所には24日分の発電に必要な石炭を備蓄していなければならないが、現状では石炭の備蓄量は通常の水準より25%少ない状況にある。IEAによれば、今後20年間でインドの電力需要は世界で一番拡大する見込みで、インドは発電方法の多様化を至急図る必要性に迫られている。

原文

AP (05/09)


4.MEPC 78:日本政府が最も野心的な炭素課税案を提出

日本政府は、船舶から排出されるCO₂に対して段階的に課税を強化する野心的な提案をMEPC 78で行うことを明らかにした。具体的には、2025年から船舶から排出されるCO₂1トン当たり56ドルの課税を開始し、2030年からは135ドルに、2035年からは324ドル、2040年には673ドルと、5年ごとに炭素課税額が2倍前後に強化される。日本の提案の当初課税水準は、マースクが提案している150ドルや、マーシャル諸島が提案している100ドルよりは低いが、これまでIMOに提案された案の中では最も野心的なもの。日本政府関係者は、Financial Timesに対し、今回の炭素課税の提案は、化石燃料の負担を増やして、課税収入をゼロエミ船の普及の支援に回して、競争条件の均衡化を図り、再生可能エネ技術の市場競争力を増やすことを目的とすると説明している。Trafiguraは炭素課税の適正水準は250から300ドルと評価している。

原文

The Maritime Executive (05/09)


Webinar情報

1.Economist Impact, Shipping:achieving zero emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email

2.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857