国際海洋情報(2022年5月6日号)

1.プラスチック条約には総生産量の段階的縮減を盛り込むべき

(論説)世界の科学者が共同でScience誌に標記意見投稿をしたところその概要は以下のとおり。①3月の国連総会で、2024年までに法的拘束力を持ったプラスチック条約案文を作成することが合意されたが、条約にはプラスチック生産量の制限を盛り込むべきである。②現在世界の年間総プラスチック生産量は、4.5億トンだが、このままでは2045年までに生産量は倍増する見込みで、プラスチックのライフサイクルCO₂排出量は、全GHGの4.5%を占め、2050年までに排出されることが許容されているCO₂総量(CO₂ budget)の10-13%を消費してしまうことになる。③プラスチックのリサイクルなどあらゆる対策をとっても、プラスチック生産に伴うCO₂排出量は、2040年までに79%しか削減できず、2040年以降も年間1.7億トンのプラスチックごみが海洋を含む自然界に放出されることとなるので、プラスチックによる環境汚染を止めるためには、2040年までに新たな(virgin)プラスチックの生産を段階的に停止する必要がある。

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Science (05/06)


2.EUエネルギー大臣:ロシアの天然ガスの支払い方法について緊急協議

EU諸国はロシアのウクライナ侵攻後、同国に対し石油・天然ガス購入代金としてすでに450億ユーロ(約6.2億円)支払っているが、ロシアは4月末に、天然ガスの代金を同国の求めに応じルーブルで支払わなかったとして、ポーランドとブルガリアに対する天然ガスの供給を停止したのを受けて、5月2日、EUのエネルギー担当大臣は、ロシアの要求について緊急に討議した。ポーランドとブルガリアは既に本年中にロシアからの天然ガスの輸入を停止することを計画しており、今回の供給停止にも対応できるとしているが、露の天然ガス供給に大きく依存しているドイツなどに問題が波及するか欧州諸国は懸念している。多くのEUの企業が天然ガス使用料金を支払う期限を今月後半に迎える中で、欧州諸国は企業に対して、ロシアに対するEUの制裁措置に反しないで、天然ガスの購入を続けることができるのか至急明確にする必要があり、欧州委員会は制裁措置に違反しない支払方法に関するガイダンスを作成している。

原文

Reuters (05/06)


3.英国政府:「水素投資家のためのロードマップ」を発表

英国政府は、英国首相が発表した「炭素中立実現のための10か条」を具体化するために本年中に各種ロードマップを発表する予定だが、その一つとして、「水素投資家のためのロードマップ(HIR)」を発表し、炭素中立目標を達成するために水素経済が果たす役割を明確にし、水素の生産・輸送・貯蔵・発電/交通/暖房などへの使用などの水素のサプライチェーン全体における既存の投資機会を例示した。HIRには、①水素普及のための「炭素中立水素基金」②長期的に収益を確保するためのビジネスモデル③市場参入を容易とし、消費者を保護するための「低炭素水素の基準」が含まれる。英国では、2030年までに低炭素水素の生産を最大で10GWに引き上げ、そのうち半分以上を電力から生産されるグリーン水素とすること目標とし、90億ポンド(約1.5兆円)以上の民間投資を集めて、1.2万人の新規雇用を創出する。

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英国政府(05/06)


4.独政府:グリーン水素をインドから輸入するための連携協定を締結

2021年にインドのモディ首相は同国を世界のグリーン水素のハブにすると宣言したが、独政府は、ロシアへのエネルギー依存から脱し、豊富な再生可能エネルギーを生産することが可能なインドからグリーン水素を輸入するため、両国の政府・業界・研究機関からなる水素タスクフォースを設立することで、5月2日印政府と基本合意し、印の電力・再生可能エネルギー大臣と独の経済・気候変動大臣は連携協定に署名した。同タスクフォースは、グリーン水素の市場拡大を支援するための、具体的な共同事業についてロードマップを作成する。さらに、グリーン水素に必要な法規制・定義の確立・安全確保手続・持続可能性の基準などについて、両国政府の間で知見を共有する。独首相は4月末に、日本を訪問した際にも、日本政府に対し水素の開発について連携することを提案した。中国ともメルケル政権時代からエネルギー連携協定を締結しているが、2020年に独が水素戦略を発表してから具体的な進展はない。

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Euractiv (05/06)


国内ニュース

1.Eco Marine Power: ハンディマックスバルカー用ゼロエミッションのデザプトを公
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5月30日、Eco Marine Power


2.日本郵船:2050年のネットゼロ実現に向けた新ブランドを策定
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4月27日、日本郵船


Webinar情報

1.CSIS: Maritime Security Dialogue: Force Design 2030 and Marine Corps Modernization Efforts
May 4
https://www.csis.org/events/maritime-security-dialogue-force-design-2030-and-marine-corps-modernization-efforts?mc_cid=097b279224&mc_eid=9242d4112d

2.Economist Impact, Shipping: achieving zero emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email

3.World Ocean Day: Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857