国際海洋情報(2022年5月2日号)

1.メイフラワー自律運航船:2回目の大西洋横断に挑戦

メイフラワー自律運航船MAS400は、全長15m、船体重量5トンで、プリマス大学・IBMなどが、人工知能によって、大西洋を自律運航して横断する間に、海洋研究に必要な情報を取集することを目的として、4年以上の開発期間と、100万ドル以上の開発費をかけて建造した。MASは、6台のAIによって管理されたカメラを装備して、画像をコンピューターに送り、コンピューターは100万を超える画像を分析して、海岸の地形や他の船舶などの運航の障害となりうるものについて学習する。船舶にはこのほかにも30のセンサーと15の端末機器が装備されている。MASはこれらの機器によって収集した情報の衛星通信を介して陸上の運航支援チームや研究者等にも送ることができる。MASにはあらかじめ計画された航路がプログラムされているが、気象条件・潮流などの可変条件を分析し、障害物との衝突を回避しながら、目的に向かって最適航路をAIが随時決定していく。MASは約2.5海里先の船舶や障害物を認識し、風力・太陽光・バックアップのディーゼル発電機で、必要な電力を発電し推進力を得る。同船は4月27日にプリマスを出港し、5-6ノットの速度ですでに350海里以上航行したが、米国のヴァージニア州まで約3週間かかり到着する予定。成功すれば、大西洋を自律運航した最大の船舶となる。

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The Maritime Executive (05/02)


2.北極海の海氷の減少は将来の地球全体の気温・降水量に大きく影響

Albany大学の研究者達がNature Communications誌に発表した研究によれば、北極海の海氷の減少によって、その後何十年も、北極だけでなく北大西洋の海面温度を上昇させることによってさらに、欧州・北米・西アフリカ・南米の大気循環に影響を与えて、最終的にこれらの地域の気温や降水量に大きな影響を及ぼすことが分かった。同じ研究者たちは、2019年に、北極海の気温上昇が地球の他の地域の気温上昇のペースの2倍から3倍になる北極温暖化増幅(Arctic Amplification :AA)についても研究を発表し、23世紀に北極海の海氷が完全に消えてなくなるまでAAは継続すると予測している。

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Phys.org (05/02)


3.ICS:ウクライナに残されている約500名の船員の安全退避を要請

国際海運会議所によれば、2月24日のロシアのウクライナ侵攻以来、6隻の商船がロケット弾などで攻撃され、2隻が沈没し、2名の船員が死亡したが、これまでの6週間で、陸上と海上の人道支援回廊を通じて約1500名の船員が退避に成功した。しかし、現在でも、ウクライナの港湾には、109隻の商船と500名弱の船員が取り残されており、これらの残存船員が安全に退避することが認められるべきとしている。最も多くの約25隻の船舶が取り残されているのがミコライフで、5隻がマリウポリに取り残されている。109隻の大部分はばら積み貨物船か一般貨物船で、一部石油タンカーも含まれている。取り残されている船員の国籍は27か国にわたり、フィリピンとインド人の船員が最も多い。

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Reuters (05/02)


4.McKinsey:Global Energy Perspective 2022

標記報告書の概要は以下のとおり。①COP26で、世界のCO₂排出量の89%を占める64か国が炭素中立目標を宣言したものの、2021年における世界的なエネルギー需要とCO₂排出量は対前年比5%増加となって、コロナ以前のレベルにほぼ戻った。②エネルギーの電化の促進とグリーン水素の生産増に伴い、2050年までに世界の電力需要は3倍となる。2050年までに太陽光発電が5倍、風力発電が8倍になり、世界の発電源に占める再生可能エネルギーの割合は80-90%に達する。この結果、2050年に、電力と水素・水素派生燃料がエネルギー全体に占める割合は50%となる。③電気自動車の普及に伴い、石油需要は2024年から2027年の間にピークアウトする。石炭需要は2013年にピークアウトしたのちは、2021年に一時的に増加したものの、今後も継続して減少する。天然ガスの需要は2035年までに、現状と比べて10-20%増加するものの、2035年以降の需要は、水素の普及次第で不透明。④地球の気温上昇は、化石燃料から電力への転換をさらに進めて炭素中立目標を前倒ししない限り、産業革命以前と比べて、21世紀末には1.7℃上昇する。⑤脱炭素化技術や発電などエネルギーの供給と生産に対する年間投資額は2035年までに倍増して、1.5-1.6兆ドルとなる。脱炭素化技術と発電に関する税引き前利益(EBIT)は投資増加のペースを上回って、年間5%で増加する。

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McKinsey (05/02)


Webinar情報

Webinar情報

1.CSIS;Maritime Security Dialogue;Force Design 2030 and Marine Corps Modernization Efforts
May 4
https://www.csis.org/events/maritime-security-dialogue-force-design-2030-and-marine-corps-modernization-efforts?mc_cid=097b279224&mc_eid=9242d4112d

2.Economist Impact, Shipping;achieving zero emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email

3.World Ocean Day;Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857