週刊国際海洋情報(2022年4月30日号)

1.FMC:コンテナ返却延滞料金の徴収をめぐりHapag-Lloydに罰金を命ずる

Hapag-Lloyd社によるコンテナ返却延滞料金の課金が不適正だとして港湾荷役会社から連邦海事委員会(FMC)に対して2021年11月に申し立てがなされ、FMCはその後調査を実施してきた。FMCの首席行政法判事は、「コンテナの返却可能な日時が指定されなかったことから、一部のコンテナの返却が不可能であった」ことを認定したうえで、同社のコンテナ返却延滞料金の課金に関する実務が不適切で、意図的に海運法41102(c)に違反したとして、排除命令に加えて、82万2220ドルの賠償金の支払いを命じた。
 
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Splash247 (04/25)


2.中国が最初の電動自律運航コンテナ船の運航を開始

中国政府は、試験運航期間を終えて、4月22日から世界で最初の電動自律運航コンテナ船の商業運航を開始したと発表した。同船の仕様は載貨重量8000dwt、コンテナ積載能力300TEU、全長117m、型幅17m、満載喫水9.8mで、直流電源で運航し、最大速度12ノット、平均速度8ノットで、青島造船所で建設された。建造契約は2019年末に締結され、建造は2020年5月に開始、2021年4月に進水し、6月から試験運航、9月からシステムの試験が始まり、2022年に最終技術検査に合格し、現在青島港と董家口の間を運航している。動力はハイブリッドfull-rotation電動推進システムで、大容量のバッテリーと直流ネットワークを利用し、人工知能によるエネルギー最適化を実現している。当該船舶は有人運航・遠隔運航・自律運航の3つの方法で運航することが可能。人工知能によって、自律的に運航ルートを決定し、自動的に衝突を回避することができる。通信手段は5G/衛星通信やその他のマルチネットワークシステムを利用することが可能。今後、この船の運航実績から得られる情報をもとに、500から800TEUのより大型のコンテナ船に技術転用が可能。
 
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The Maritime Executive (04/25)


3.英国政府:洋上風力発電の急速な整備のためにMPIsを促進

英国首相は、同国のエネルギー安全保障を改善するため、2030年までに洋上風力発電能力の整備目標をこれまでの40GWから50GWまで引き上げたが、従来のように個々の洋上風力発電を陸上の送電網と結ぶ方法では非効率的で、環境問題などの地域社会への影響を考えると洋上風力発電発展の大きな足かせとなる可能性がある。このため全体事業費を引き下げ、沿岸住民への影響も最小化するために、複数の洋上風力発電施設で発電された電力を洋上でまとめて、陸上の送電網に一括して送るMulti-Purpose Interconnectors (MPIs)の整備をビジネス・エネルギー・産業戦略省は検討しており、洋上風力発電を50GWまで拡大するためには、18GW分のMPIsの整備が必要としている。Offshore Transmission Network Reviewは、同国内の洋上風力発電能力を拡大し、陸上の送電網に統合するための障害について分析しているが、英国政府はこの分析を踏まえ、MPIsの整備をどのように促進するか検討していく。
 
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Offshore Wind Biz (04/26)


4.MEPC 78:地中海をSOx排出規制海域(ECA)に指定へ

環境団体は、船舶起因の大気汚染から人間の健康と環境を保護するため、排出規制海域(ECA)の拡充を求めてきた。欧州・北米・カリブ海ですでに指定されているECAでは、大気汚染が大幅に改善する一方で、規制に伴う経済的な混乱や規制適合燃料の供給の問題も生じていない。昨年、「汚染に対する地中海の保護に関する条約(バルセロナ条約)」の加盟国は、地中海をSOx排出規制海域(MedECA)に指定することに合意したのを受け、6月のMEPC 78に指定の提案がなされ、承認されれば、2025年1月からSOxに関するMedECAが発効する予定。今回の提案にはNOxの排出規制は含まれないが、地中海沿岸国は今後2年間でNOxの排出規制についても検討することに合意している。
 
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Safety4Sea (04/26)


5.First Mover Coalition:資金力がある企業が低炭素製品を優先購入

地球の気温上昇を産業革命以前から1.5℃以内に抑制するためには、2030年までにCO₂排出量を45%削減する必要があるとIPCCは主張しているが、こうした大幅削減を実現させるための技術は未だ経済的に実用可能な状況ではない。そこで、ケリー米大統領気候変動問題特使は、昨年のCOP 26において、世界経済フォーラムと協力して、エネルギーを大量消費し、すべて電力で置き換えることが難しい鉄鋼・トラック輸送・海運・航空・セメントなどの産業分野において、総額で6兆ドルの購買能力を持つ34の企業とともに、First Movers Coalitionを結成した。また、低炭素の鉄鋼/セメント・ゼロエミ重量運搬トラック・持続可能な航空燃料など、環境的には優れているが高価格な製品を優先購入することによって、これらの製品の市場規模を広げて、最終的にはこのような環境技術のコストダウンを図る試みを開始した。米国大統領府は複数の政府機関を束ねて、米国政府が低炭素の鉄鋼やセメントなど環境性能に優れた物品を調達するのを促進するための、Buy Clean Task Forceを結成した。
 
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World Economic Forum (04/27)


6.地球温暖化によって海洋生物の大規模な絶滅が発生する恐れ

地球温暖化によって、海水温が上昇し、海洋の低炭素化や酸性化が進んでいる。この結果、全く無酸素状況になった海洋の面積が1960年代と比べると4倍に達している。地球はペルム紀の終わりの約2.5億年前に、海洋生物の96%が絶滅する経験をしている。Science誌に発表された研究によれば、現在発生している海水の低炭素化・酸性化のメカニズムはこの時と同じで、もしCO₂の排出削減が進まず、今世紀末までに気温が産業革命以前と比べて4℃以上上昇すれば、海洋生物の大量絶滅を引き起こす可能性があると指摘している。仮に気温上昇が2℃以内に抑制できた場合でさえ、今世紀末までに約200万種類ある海洋生物のうち約4%が絶滅することが予測され、特に極圏に住む魚類や哺乳類は、他の地域に生息する生物と違って、より涼しいところに移動できないので、影響を強く受けやすい。IUCNのデータによれば、地球温暖化に加えて、過剰漁獲や海洋汚染によって、10%から15%の海洋生物がすでに絶滅の危険に瀕している。
 
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The Guardian (04/27)


7.荷主業界団体が米上下両院に外航海運改革法の早期調整を求める

外航海運改革法案は、議会上院・下院でそれぞれ承認を得ているものの、米国大統領の署名を求める前に、上下両院はそれぞれの法案の相違点について調整する必要があるが、製造業・小売・農業など約100の異なる荷主業界団体が共同で、上下両院の商業・貿易委員会に書簡を送り、速やかに調整作業を終了し法案を成立させ、連邦海事委員会の権限強化などを通じて、法案が念頭に置いている海運会社による理不尽な慣行を変えさせる必要があるとしている。同法案の根幹は、①海運会社は公共の利益に従い最低限のサービス水準を維持しなくてはならないこと。②コンテナの超過保管料・返却延滞料の課金について承認制度を導入すること。③輸出貨物の輸送予約を拒否することを禁じることなどがあげられる。
 
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The Maritime Executive (04/27)


8.IMO/MSC 105:ウクライナ侵攻関連の決議を採択

4月20日から29日まで開催されたMSC 105で採択された標記決議(MSC.495(105))の概要は以下のとおり。①国際赤十字委員会・国連人道問題調整事務所・国連難民高等弁務官事務所などの国際的な人道支援機関に対し、戦争地域から船員が安全に退去できるよう、事務局長は支援を引き続き要請すること。②船員と船舶が安全に脱出するための避難回廊の設定につき、事務局長は引き続き検討すること。③ウクライナ侵攻が国際海運や船員の福祉に与える影響について、事務局長は継続的に最新情報を加盟国に提供すること。④ロシアは、直ちに無条件でウクライナに対する侵略行為をやめ、撤兵し、商船や船員が戦闘地域から脱出することを困難とするような作戦を実施しないこと。⑤ウクライナ侵攻に伴うウクライナの船員・港湾、国際サプライチェーン、食料安全保障への悪影響に対する懸念を、加盟国は国連総会等の場において表明すること。
 
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IMO (04/28)


9.IMO/MSC 105:暫定MASSコードを2024年から貨物船にのみ適用

海上自律運航船(MASS)については、2028年からの強制力を持った規制開始の前に、2024年から強制力のない暫定的なMASSコードを適用することに合意。適用の範囲については合意されていないものの、当面貨物船に対してのみ適用され、旅客船に対する適用は更なる審議を行う予定。強制力を持ったMASSコードは独立した条約となる見込みだが、SOLASをはじめとする関係する条約の改正も同時に実施する必要がある。現在、MASSについては、自動化の程度に応じて①有人運航支援船②友人遠隔操縦船③無人遠隔操縦船④自律運航船の4段階に分類されているが、この分類を見直して、強制力を持ったコードは、自動化される特定の機能やシステムに応じて適用され、またMASS運航の形態も、通常運航・緊急運航・保守管理などに分類して適用することが検討される見込み。本件については、9月に開催されるMSC/LEG/FALの共同MASSWGとIntersessional Correspondence GroupがMSC 107に結果を報告することを目指して審議を続けていく。
 
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Lloyds Register (04/28)


10.EU緑の党:航空機燃料から芳香・硫黄成分の段階的除去を提案

欧州議会の緑の党は、欧州委員会が提案しているReFuelEU Aviation案を修正して、CO₂以外の煤・SOx/NOx・水蒸気についても排出規制すべきと主張している。2020年11月に欧州委員会事務局が作成した航空機の排気に関するCO₂以外の排気の問題点に関する作業報告書によれば、航空機が高高度で作る飛行機雲はCO₂よりはるかに強力な温暖化効果があり、さらに、SOx/NOx等の排気は、空港周辺住民の健康にも有害であることが分かっている。緑の党は、これらのCO₂以外の航空排気の問題点を改善するために航空機燃料中に含まれる芳香・硫黄分を段階的に削減し、具体的には現在航空機燃料の中に含まれる芳香成分は約20%だが、2023年6月までに8%以下に削減することを提案している。しかし、現在の技術では、航空燃料からすべての芳香成分を取り除くと、エンジンの中の密封性に問題が生じ、燃料漏れなどエンジンの機能障害を誘発する。芳香成分を含まない航空燃料を使用するためには、エンジンの高額な改修作業が必要となり現実的でないと専門家は指摘している。
 
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Euractiv (04/28)


その他のニュース

1.エネルギー転換
 (ア)石炭の取り扱い
  ①中国
   2021年の世界の石炭火力発電能力は中国の影響で微増 原文4/25
 (イ)各国のエネルギー戦略
  ①ドイツ
   独政府:石油危機時代のエネルギー保安法を改正し活用へ 原文4/25
2.気候変動
 (ア)異常気象に伴う損害
  ①UNDRR
   国連防災機関:世界防災評価2022年報告書を発表 原文4/26
 (イ)異常高温
  ①インド・パキスタン
   WMO:インド・パキスタンで最高気温が46℃に 原文4/28
3.安全保障
 (ア)ウクライナ
  ①石油ガス
   独:石油に関してはロシアへの依存脱却へ 原文4/26
4.環境問題一般
 (ア)土地利用の適正化
  ①UNCCD
   UNCCD:Global Land Outlook 2nd Editionを発表 原文4/27