国際海洋情報(2022年4月27日号)

1.First Mover Coalition:資金力がある企業が低炭素製品を優先購入

地球の気温上昇を産業革命以前から1.5℃以内に抑制するためには、2030年までにCO₂排出量を45%削減する必要があるとIPCCは主張しているが、こうした大幅削減を実現させるための技術は未だ経済的に実用可能な状況ではない。そこで、ケリー米大統領気候変動問題特使は、昨年のCOP 26において、世界経済フォーラムと協力して、エネルギーを大量消費し、すべて電力で置き換えることが難しい鉄鋼・トラック輸送・海運・航空・セメントなどの産業分野において、総額で6兆ドルの購買能力を持つ34の企業とともに、First Movers Coalitionを結成した。また、低炭素の鉄鋼/セメント・ゼロエミ重量運搬トラック・持続可能な航空燃料など、環境的には優れているが高価格な製品を優先購入することによって、これらの製品の市場規模を広げて、最終的にはこのような環境技術のコストダウンを図る試みを開始した。米国大統領府は複数の政府機関を束ねて、米国政府が低炭素の鉄鋼やセメントなど環境性能に優れた物品を調達するのを促進するための、Buy Clean Task Forceを結成した。

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World Economic Forum (04/27)


2.地球温暖化によって海洋生物の大規模な絶滅が発生する恐れ

地球温暖化によって、海水温が上昇し、海洋の低炭素化や酸性化が進んでいる。この結果、全く無酸素状況になった海洋の面積が1960年代と比べると4倍に達している。地球はペルム紀の終わりの約2.5億年前に、海洋生物の96%が絶滅する経験をしている。Science誌に発表された研究によれば、現在発生している海水の低炭素化・酸性化のメカニズムはこの時と同じで、もしCO₂の排出削減が進まず、今世紀末までに気温が産業革命以前と比べて4℃以上上昇すれば、海洋生物の大量絶滅を引き起こす可能性があると指摘している。仮に気温上昇が2℃以内に抑制できた場合でさえ、今世紀末までに約200万種類ある海洋生物のうち約4%が絶滅することが予測され、特に極圏に住む魚類や哺乳類は、他の地域に生息する生物と違って、より涼しいところに移動できないので、影響を強く受けやすい。IUCNのデータによれば、地球温暖化に加えて、過剰漁獲や海洋汚染によって、10%から15%の海洋生物がすでに絶滅の危険に瀕している。

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The Guardian (04/27)


3.荷主業界団体が米上下両院に外航海運改革法の早期調整を求める

外航海運改革法案は、議会上院・下院でそれぞれ承認を得ているものの、米国大統領の署名を求める前に、上下両院はそれぞれの法案の相違点について調整する必要があるが、製造業・小売・農業など約100の異なる荷主業界団体が共同で、上下両院の商業・貿易委員会に書簡を送り、速やかに調整作業を終了し法案を成立させ、連邦海事委員会の権限強化などを通じて、法案が念頭に置いている海運会社による理不尽な慣行を変えさせる必要があるとしている。同法案の根幹は、①海運会社は公共の利益に従い最低限のサービス水準を維持しなくてはならないこと。②コンテナの超過保管料・返却延滞料の課金について承認制度を導入すること。③輸出貨物の輸送予約を拒否することを禁じることなどがあげられる。

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The Maritime Executive (04/27)


4.UNCCD:Global Land Outlook 2nd Editionを発表

4月27日、国連砂漠化対処条約(UNCCD)事務局が標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①人類の活動によって、地球の陸上の70%以上が人為的に変更され、土地の最大40%が劣化した。②食料の生産・加工・輸送・消費活動は、森林伐採の原因の80%を占め、人類が排出するGHGの29%を占め、陸上の生物多様性喪失の最大の原因となっている。③地球の温暖化を抑制するために必要な陸上における気候変動対策の1/3以上は、生態系を保護し再生することによって成し遂げることができる。④土地の劣化による悪影響は小規模な地域社会に最も大きな影響を及ぼすが、こうした地域社会の住民は生態系を回復し保護するすべを知っている。⑤今までとおりの人類の活動(business as usual)を2050年まで継続すれば、南米の面積に匹敵する1600万㎢の土地が劣化するが、反対に、土地の保護と回復に努めれば、2050年までに400万㎢の天然な土地を再生して、気候変動と生物多様性の喪失に対処することができる。

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Carbon Brief (04/27)


国内情報

1.川崎重工:160,000m3型 液化水素運搬船の基本設計承認を取得
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4月22日、川崎重工


Webinar情報

1.CSIS:Maritime Security Dialogue:Force Design 2030 and Marine Corps Modernization Efforts
May 4
https://www.csis.org/events/maritime-security-dialogue-force-design-2030-and-marine-corps-modernization-efforts?mc_cid=097b279224&mc_eid=9242d4112d

2.Economist Impact, Shipping:achieving zero emissions by 2050
May 24, 10am BST
https://eventscustom.economist.com/webinar/achieving-zero-emissions-by-2050/?utm_medium=Eloqua&utm_source=email

3.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857