国際海洋情報(2022年4月21日号)
1.米大統領:露関係船舶の入港禁止を命ずる大統領令を発出
2021年に米国に寄港したロシアの船舶数は約1800隻で、そのうち約9割はロシア産原油を輸送するためであったが、4月21日、米大統領は、ロシアによるウクライナ侵攻に対する制裁措置として、ロシア籍船舶・ロシア企業により運航されている船舶などのロシア関係船舶の同国港湾への寄港を禁止する大統領令を発表した。この大統領令はすべてのロシア産品の輸入を禁止するものではない。カナダは3月1日に既に同様の措置を取っており、英国・イタリア・ブルガリア等の欧州諸国も既に同様の措置をとっている。米国は、国際航空については、カナダや欧州諸国と歩調を合わせて、ロシアの航空機による同国上空の飛行を既に禁止しているほか、ロシア産原油の輸入も禁止している。
原文
Reuters (04/21)
2.2021年の欧州の平均気温は産業革命以前より既に2℃以上上昇
コペルニクス気候変動サービスが発表した報告書の概要は以下のとおり。①世界全体の地表の気温は、2021年には、産業革命以前と比較して1.2℃上昇したが、欧州に限って言えば、平均で2℃以上上昇した。②特に夏季は、シシリアで欧州としての最高気温である48.8℃を記録したほか、地中海沿岸は記録的な熱波に襲われた。③この結果、ギリシャでは、8000㎢以上の森林や住宅地が焼失する記録的な山火事が発生し、生態系が大きく損傷した。④ドイツでは、ゆっくり移動する低気圧とバルト海の海水の表面温度が平年より5℃以上上昇したせいで、7月中旬に集中豪雨がふり、ドイツとベルギーで大洪水が発生し、記録的な死傷者と経済損害が発生した。⑤北極海の気温は産業革命以前と比べると、世界平均の約3倍となる3℃も上昇し、シベリア東部を中心に発生した大規模な山火事によって、ボリビア1か国の排出量と同じ、1600万トンのCO₂が大気中に放出された。
原文
Euractiv (04/21)
3.中国:海外新規石炭火力発電事業への投資停止約束の履行が不透明
中国の習近平主席は、グリーンで低炭素なエネルギー転換を世界的に推進するため、海外における新規の石炭火力発電事業への投資を中止すると昨年9月に表明し、国家発展改革委員会も3月にこの方針を確認したが、ヘルシンキのCentre for Research on Energy and Clean Air (CREA)が4月22日に発表した報告書によれば、習近平主席の表明以来、中国が支援する15の事業(総発電量12.8GW)の計画が破棄されたものの、現在中国が支援している50の海外石炭火力発電事業の34%に当たる18事業(合計発電量19.2GW)について、既に途上国政府の許可と資金を手当てしているため、建設が進められる可能性があることが判明した。現在世界で建設中のすべての石炭火力発電所が完成すれば、スペインの年間排出量と同様の3億トンのCO₂が新たに排出されることとなる。中国は、過去10年間でみると、海外における石炭火力発電事業の最大の支援国で、50GW分の建設中の事業、さらに50GW分の計画中の事業を支援している。
原文
South China Morning Post (04/21)
4.ウクライナ侵攻が世界の石炭消費量を過去最高に押し上げる
ドイツやイタリアでは、運転が停止されていた石炭火力発電所の再活用が検討され、南アフリカでは欧州向けの石炭輸出が活況を呈している。米国においても石炭火力発電が再活性化し、中国でも閉鎖された石炭鉱山を再開し、新たな石炭鉱山開発を計画中であるように、多くの人がまもなくなくなると思っていた石炭火力発電が、力強く復活している。天然ガスの供給不足やコロナ復興による電力需要の増加で、昨年から石炭への需要が強まっていたが、ロシアによるウクライナ侵攻によって、世界の電力事業者が石炭の買い付けに走り、価格も記録的な水準まで高騰し、インフレの一因となっている。IEAによれば、2021年には、石炭火力発電量が対前年比9%増加し、世界で史上最高となり、2022年には、発電・製鉄などの産業用途を併せて、過去最高の80億トンが消費される予定で、この傾向は最低でも2024年まで継続する見込みで、この結果、2050年までに炭素中立を達成するために抑制することが必要なCO₂排出量より、2024年には30億トン以上多いCO₂が排出される見込み。
原文
Yahoo Finance (Bloomberg) (04/21)
Webinar情報
1.CSIS:Maritime Security Dialogue:Force Design 2030 and Marine Corps Modernization Efforts
May 4
https://www.csis.org/events/maritime-security-dialogue-force-design-2030-and-marine-corps-modernization-efforts?mc_cid=097b279224&mc_eid=9242d4112d
2.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857