国際海洋情報(2022年4月20日号)
1.米国FMC:海運11社から「輸出戦略」について聞き取り
米国連邦海事委員会(FMC)のVessel Operating Common Carrier (VOCC)監査プログラムは、海運11社からの1次ヒアリングを4月22日に終了し、どの海運会社が「輸出戦略」を持ち、この戦略がどの程度有効に機能しているかをチェックして、輸出戦略を持っていない海運会社に対しては、輸出戦略を立てるように要請した。ヒアリングにおいては、最近の各海運会社による米国の農産物などの輸出輸送実績を聴取して、FMCが最近の市場動向を把握するとともに、各海運会社に改善を求める余地がないか判断するための情報を収集した。VOCC監査チームの調査は継続するが、1次ヒアリングで得た情報は、FMC本委員会に報告される見込み。コンテナ輸送スペースの確保など米国の輸出荷主が直面している課題を解決するために、FMC委員長は様々な監査権限を行使する予定で、海運会社の輸出戦略の検証はあくまでその一歩にすぎない。
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FMC (04/20)
2.全世界のコンテナ船の1/5が全世界の港湾で滞船
海事人口知能会社のWindwardによると、4月12日現在で、全世界のコンテナ船の1/5の1826隻が全世界の港湾で滞船しており、そのうちの1/4以上の506隻が中国の港湾で混雑に巻き込まれており、海運会社はコンテナ船の定時運航に苦慮している。多くのコンテナ船が現在上海港を回避して、中国の他の港湾に回航しているため、寧波・象山港などの他の港湾の混雑が悪化する一方で、海運会社は欠航便を増やして対応している。3月中旬までは、コンテナ船の定時運航率が2年ぶりに回復したが、3月末から上海港のロックダウンの影響で、定時運航率はまた悪化傾向に戻った。4月19日現在で、中国の港湾の外で滞船しているコンテナ船の数は、506隻で、2月が260隻だったのでおおよそ倍増している。
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The Maritime Executive (04/20)
3.FuelEU Maritime:LNG燃料の許容はIPCC報告書と矛盾
「交通と環境」の海事分野の責任者の分析は以下のとおり。①IPCCの報告書では、海運脱炭素化の手段として、天然ガス(LNG)の利用が不適切であると明記。一方で、欧州委員会が提案中のFuelEU Maritimeでは、排気単位当たりのCO₂許容値を、最も安価なfuel mixを用いて満たすことを認めているので、2030年までにLNGとバイオディーゼルが船舶燃料全体に占めるシェアが約1/4となる。②IPCC報告書では、海運代替燃料として、グリーンアンモニアなどの水素派生燃料を推奨し、欧州議会の環境委員会や独政府は、水素派生燃料を一定比率以上使用することを義務付けることを検討・提案しているにかかわらず、FuelEU Maritimeでは水素派生燃料の利用を明確に否定している。③最後に、欧州委員会の提案では、海運脱炭素化に関し、2030年までの中間目標を設定しないばかりか、2050年までの削減目標を75%に設定している。④露のウクライナ侵攻を踏まえて、化石燃料への依存から脱却するために、欧州委員会が最近発表したRePowerEUに従えば、海運分野においても2030年までに燃料の6%以上をグリーン水素の原料としたe燃料に代替し、海運からのGHG削減目標を5年前倒しにし、LNGの燃料としての使用を停止する必要がある。
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Euractiv (04/20)
4.UNESCO:途上国の世界遺産のサンゴ礁の保全を緊急支援
UNESCOの世界遺産に指定されている世界のサンゴ礁は、合計でフランスの国土にほぼ等しい50万㎢以上の広さを有し、生物多様性を維持し、海水中のCO₂を吸収し、嵐や浸食から海岸線を保護している。100以上の原住民族の集落が、日々の食料を得るために直接サンゴ礁に依存している。一方で、従来の科学者の予想を超える速度でサンゴ礁の白化が進んでおり、特に今年は海水が冷却されるラニーニャ現象が発生しているにもかかわらず、大規模なサンゴ礁の白化が進行している。CO₂の排出が現状のペースで進んだ場合、今世紀末にはすべてのサンゴ礁が死滅する可能性がある。海水の温暖化に加えて、サンゴ礁は各海域の海洋汚染・過剰漁獲・生息地の破壊といった地域的なリスクにさらされており、こうしたリスクを減らし、サンゴ礁が生き残る可能性を増やすため、UNESCOはGlobal Fund for Coral Reefsと連携して、世界遺産のサンゴ礁の抵抗力を強化するために緊急支援を行うとパラオで開催されたOur Ocean Conferenceで表明した。世界遺産に指定された29のサンゴ礁のうち、途上国に存在する19のサンゴ礁について、海洋保護区の持続可能な管理の強化などを支援する。
原文
UNESCO (04/20)
Webinar情報
1.CSIS:Maritime Security Dialogue:Force Design 2030 and Marine Corps Modernization Efforts
May 4
https://www.csis.org/events/maritime-security-dialogue-force-design-2030-and-marine-corps-modernization-efforts?mc_cid=097b279224&mc_eid=9242d4112d
2.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857