国際海洋情報(2022年4月15日号)

1.輸送に伴う水素の漏出によりメタンより強い地球温暖化効果

英国政府の委嘱した研究によれば、水素が大気中に漏出した場合の地球温暖化効果は、100年間でみれば、CO₂に比べて、6倍から16倍高く、20年間ではさらに33倍になり、水素は必ずしも気候中立のグリーンなエネルギーではないとしている。その原因としては第1に、水素自体はGHGではないが、水素が大気中に放出されると、比較的短期間で消滅するはずの大気中のメタンの存在可能期間を引き延ばすこと。第2に水素は対流圏で反応して、GHG効果を持つオゾンを作ること。第3に、成層圏で、水素はGHG効果のある水蒸気となることによるものと考えられる。天然ガスの輸送時に、0.5-3%のメタンが漏出するとされているが、水素の粒子は、メタンの粒子よりさらに小さいので、水素の輸送中に13%以上の水素が漏出するという他の英国の研究もある。

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Euractiv (04/15)


2.世界銀行:How can shipping implement carbon pricing ?

世界銀行(WB)が標記報告書を発表したところ、その概要は以下のとおり。①市場原理に基づく措置(MBM)は、海運会社に既存の燃料から低・ゼロ炭素燃料へ転換する経済的なインセンティブを与えるだけでなく、途上国における気候変動対策を支援するなど、他の気候変動対策に利用できる十分な収入を上げることが可能となる。②WBの試算では、海運活動を対象としたMBMにより、2050年までに1-3.7兆ドル(年間では400-600億ドル)の収入を上げることが可能である。③開発途上国は、先進国以上にMBM導入に伴う経済的悪影響を受けやすい一方で、海運脱炭素化のために必要な投資を行う余力が少ないので、MBMによる財政収入を途上国に分配することは、炭素中立社会への公平な転換を促すこととなる。④MBMによる収入の使途としては、第一に脱炭素代替燃料や当該燃料を使用できる船舶の技術開発や代替燃料の生産設備の整備に、第二に、こうした代替燃料や陸上電力を船舶に供給するための港湾インフラの整備に、さらには、気候変動に伴う港湾の防災機能の強化など幅広い目的に利用することが可能。

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世界銀行(04/15)


3.仏:最初の洋上風力発電タービンを設置

Saint Nazaire洋上風力発電所は、仏西岸沖合12kmに位置し、本年中に運転が開始されれば、150万人が住むロワール・大西洋地域の家庭の20%に480MWの電力を供給する予定。欧州の洋上風力発電は、英国・デンマーク・ドイツによって現在寡占されているが、仏は、2030年までに再生可能エネルギーの発電シェアを1/3にまで引き上げることを目標としている。仏政府は2012年に本事業を許可していたが、地元住民の反対や訴訟によって、最初のタービン取り付け作業に入るのに約10年間かかった。この10年間に、再生可能エネルギーの価格は大幅に上昇し、洋上風力用タービンも大型化し、今回設置される6MWのタービンの倍の規模のタービンが実用化しているが、事業申請内容を変更せずに、今になっては小規模 で経済性の低いタービンをそのまま取り付けることとなる。

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gCaptain (Bloomberg) (04/15)


4.COP 27:海運代替燃料に関する船員の教育・訓練について報告

Maritime Just Transition Task ForceはCOP26で、国際海運会議所・国際運輸労連・国連Global Compact/IMO/ILOによって、官労使が協力して、海運における炭素中立化を公正・平等に進めるために創設されたタスクフォースで、より具体的には、海運脱炭素化に関する政策決定において、船員の権利を尊重し、途上国が脱炭素船舶・燃料に関する技術開発にアクセスできることを担保することを目的とする。同タスクフォースは、COP 27において、海運の脱炭素化のために必要な船員のスキルについて報告する予定で、より具体的には、脱炭素化に必要な代替燃料を船員が安全に取り扱えるようにするためにどれだけの規模の教育訓練が船員に対して必要か数量化し、その結果を加盟国の政策に反映させ、海運業界が教育・訓練を実施するための明確な手順を示す予定。

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ICS (04/15)


Webinar情報

1.CSIS: Maritime Security Dialogue: Force Design 2030 and Marine Corps Modernization Efforts
May 4
https://www.csis.org/events/maritime-security-dialogue-force-design-2030-and-marine-corps-modernization-efforts?mc_cid=097b279224&mc_eid=9242d4112d

2.World Ocean Day: Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857