国際海洋情報(2022年4月11日号)
1.生態系の破壊に対する各国の責任割合
英国ロンドン大学LSEの研究者たちがThe Lancet誌に発表した論文の概要は以下のとおり。①地球の生態系の破壊の原因の多くは、過去半世紀の人類による天然資源の急速な使用量の増加によってもたらされたが、本研究では国別に天然資源の使用量を集計して、公平で持続可能な使用量を超えた部分を各国の責任として算定した。②世界的な資源の過剰使用のうち、高収入国によるものが74%を占め、これを国別でみると、米国が27%、EU諸国が28%、中国が15%となっており、中・低所得国であるラ米・カリブ海・アフリカ・中東・アジアの諸国は合計でも8%の責任しか負っていない。③従って、地球の生態系の破壊を抑止するためには、高収入国が、経済成長を抑制して、天然資源の使用を公正で持続可能な水準まで、直ちに減らす必要がある。
原文
The Lancet (04/11)
2.Getting to Zero Coalition:欧州は海運脱炭素化のリーダーに
Getting to Zero Coalitionに参加する企業は、EUが世界のリーダーとして数か月以内にFit for 55 packageをまとめ上げて、欧州・世界の海運脱炭素化を先導することを期待するが、2030年までのCO₂排出55%削減と2050年までの炭素中立を実現するためには、現在の欧州委員会による提案内容を直ちに改善する必要がある。第1に、IMOにおいてEU加盟国は2050年までの外航海運の脱炭素化を既に表明しており、EU議会において、2050年までの海運脱炭素化に必要な明確な目標を設定すべきである。第2に、グリーン水素から大規模に生産されるゼロエミッション燃料(SZEFs)の使用比率を2030年までに5%以上とする目標を掲げ、同燃料のコストダウンと迅速な規模の拡大を図るべきである。第3に、海運がEUの排出権取引制度(ETS)の対象となったとしても、SZEFsと化石燃料との価格差は依然大きいので、海運分野から得られるETSの収入のうち、年間50億ユーロ(約6750億円)を、SZEFsと化石燃料の価格差を埋めるための財源とし、さらに、ゼロエミ船舶とSZEFsの供給インフラのための投資に使うべきである。
原文
Euractiv (04/11)
3.NOAA:2021年の大気中のメタン・CO₂の濃度がともに史上最高に
米国海洋大気庁が4月7日発表した暫定分析結果の概要は以下のとおり。①2021年の大気中のメタン濃度の平均値は1895.7ppbで、産業革命以前と比べて162%増加し、1984年から2006年までの平均値と比べても15%増加し、2年間続けて史上最高を更新するとともに、年間上昇幅も過去最高となって、濃度上昇が加速化している。②2021年の大気中のCO₂の平均濃度は414.7ppmとなって、10年間継続して、2ppm以上濃度が上昇しており、63年前に観測を開始して以来、最も早いペースで継続して大気中のCO₂が増加している。③2021年に人類の活動によって大気中に放出されたCO₂の量は約360億トン、メタンの量は約64億トンで、メタンは約9年間で大気中からなくなるが、CO₂は大気中で何千年も存在し続ける。④大気中のCO₂濃度は約430万年前の鮮新世と同等のレベルで、鮮新世には海水面は現在より23m高く、気温は産業革命以前と比べると12.6℃も高く、北極圏のツンドラ地帯は、森林帯だった。
原文
NOAA (04/11)
4.マースクが独自の航空会社を設立し航空機も保有
マースクはデンマークのビルン空港を拠点として、現在活用している複合物流事業者のStar Airの事業を継承する形で、マースク航空貨物を創設し、2機の777Fsと3機の767-300Fsを保有し、さらに新しい3機の767-300Fsを米国=中国路線に投入する予定。マースク社は自社の航空貨物の1/3以上を自社の航空ネットワークで輸送する予定。マースクはDP World社などとともにインドのデリー郊外の空港建設の入札にも参加することを検討している。このほかにも最近、マースクは幅広い種類の物流会社に投資を行っている。
原文
The Loadstar (04/11)
Webinar情報
1.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857