国際海洋情報(2022年4月8日号)
1.英国政府:原子力を大幅に強化するエネルギー安全保障戦略を発表
標記戦略の概要は以下のとおり。①当面、英国内の石油ガスの生産を維持しつつ、風力・原子力・太陽光・水素による発電施設の整備を加速化して、2030年までに、全発電量の95%を低炭素化する。②原子力発電の整備を加速化し、2050年までに24GW、総需要の25%まで拡充する。技術発展に伴い、小型モジュール炉が重要な役割を果たす。③原子力発電推進のための政府組織として、新たにGreat Britain Nuclearを設立するとともに、1.2億ポンド(約194億円)のFuture Nuclear Enabling Fundを予算措置する。従来計画の10年に1基ではなく、合計8基、1年に1基のペースで新原子炉を建設する。④洋上風力発電については、2030年までに同国内の全家庭に供給が可能な50GWまで能力を拡大し、このうち5GWは浮体式風力発電により供給する。このため、新たな洋上風力発電施設の承認に必要な期間をこれまでの4年から1年に短縮する。
原文
英国政府 (04/08)
2.中国:内モンゴルで97年間操業が可能な大規模石炭鉱山の開発を承認
中国の内モンゴル自治区の石炭生産の中心都市であるオルドス市当局は、年間1500万トンの石炭を97年間生産できる総埋蔵量20.3億トンの大規模石炭鉱山の開発を4月2日承認した。中国政府首脳は、自国内のエネルギー生産を拡大し、世界的なエネルギー価格の高騰をしのぐため、内モンゴル自治区に本年中に石炭の生産能力を3億トン追加するように命じている。同自治区は、世界最大の石炭生産地で、本年の初めの2か月間で、1.97億トンを生産し、このペースでいけば、2022年の生産量は11.8億トンに達する見込み。
原文
Financial Post (Bloomberg) (04/08)
3.GMF:豪と東アジアを結ぶ鉄鉱石輸送のグリーン回廊を検討
世界海事フォーラム(GMF)、BHPなどの世界的な鉱業会社、Oldendorf Carriersなどの世界的なドライバルク船社が、豪と東アジア諸国の間に、鉄鉱石輸送のためのグリーン回廊を創設する事業可能性を実施することで、4月6日基本合意した。2021年にGMFは今回対象となる航路について、事前事業可能性調査を実施し、The Next Waveという報告書を発表したが、ゼロエミ燃料の生産条件や。関係国の法規制などにかんがみ、再生可能電力から生産されるグリーンアンモニアが最も適した燃料として選択されている。今回の基本合意に基づき、グリーンアンモニアの生産・船舶への供給・最初に事業に参加する事業者に対する支援措置などについて、より具体的な検討を実施する。
原文
Global Maritime Forum (04/08)
4.国連:イエメン沖の放棄されたタンカーからの油抜き取り作業
国連の人道調整官がイエメン沖に係留されている放置タンカーからの油抜き取り作業について、4月8日NYで発表したところその概要は以下のとおり。①浮体式の石油の貯蔵施設(FSO)として使用されている船齢45年のタンカーには、現在も110万バレルの原油が貯蔵されたまま、イエメン西岸のRas Issa半島の沖合4.8マイル沖に、30年以上係留されているが、石油の貯蔵施設としての機能を2015年に停止して以来、イエメン内戦の影響で、船舶に対する必要な保守管理はされていないまま放置され、いつ油濁汚染や爆発事故が発生してもおかしくない状況となっている。②こうした事故が発生した場合には、周辺の海水・サンゴ礁・マングローブ等に環境被害を与えるだけでなく、バブエルマンデブ海峡を通じてスエズ運河に至る海運活動にも大きな影響を与え、油濁除去作業費だけでも200億ドル以上の経費が発生すると考えられる。③国連安全保障理事会で、内戦の当事者間で2か月間の休戦が合意され、同船が係留されている海域を掌握している事実上の政府からも油抜き取り作業を実施することについて合意が取れたため、約8000万ドルと18か月間をかけて、同船から代替船への石油の積み替え作業を実施することを国連は提案している。
原文
国連 (04/08)
Webinar情報
1.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857